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国際物流スタートアップが3ヵ月かけてVision/ Mission/ Anchorsを言語化した話


こんにちは!国際物流スタートアップShippioという会社をやっている佐藤です。Shippioは2016年に私と、共同創業で取締役COOの土屋が設立した会社で、国際貿易・国際物流領域の非効率さや煩雑さをテクノロジーの力を使って解消することを目指しているスタートアップ。

スタートアップをやっていると(特に一回目の起業は)VisionやMissionについてどうやってオリジナルな言葉を見つけていくのか、それをチームにインストールするのか等で頭を悩ませることがあると思う。ここでは、僕たちがなぜVision/ Mission/ Anchorsの言語化に動いたのか、また一緒にプロジェクトを進めたGoodpatchとの出会い、創業者としてどういう想いで一つ一つの言葉を見つけて行ったのか話してみたいと思う。

そもそも起業したワケ

これだけで楽勝でストーリー1本書けてしまうので今回はショートバージョン。僕は前職(三井物産って商社)に10年在職していたんだけど、最後の2年間は北京にあった「中国総代表室」というところで仕事をしていた。中国・香港・台湾あわせて1,000人くらいの物産メンバーを率いている総大将、その名も「中国総代表」の議論や意思決定をサポートする参謀部的な部署だった。僕の前任のK先輩が帰国するにあたり、当時北京にあったCVCに所属していた僕が横滑りで異動することになった。

やりがいのある仕事と「このままだと魂が腐る」危機感
ここで一番面白かったのが「三井物産の偉い人とめちゃめちゃ近い距離で仕事が出来る」ということ。本社会長(天上人1)と同じ車で移動する、本社社長(天井人2)と少人数の会食一緒にいける、本部長(凄く偉い人)やそのまわりの人(普通に偉い人)とプロジェクトをやる・・etc.. 当時30歳の商社マンとしては素晴らしく役得な場所だったように思う。逆に言えばとても緊張感のある場所で、人の巻き込み方から大企業幹部を説得する為に必要な資料作り、それから何よりも時価総額3兆円企業の経営陣の経営観を身近に聞けること...本当に色々なことを学ばせてもらった。

とてもやりがいのある仕事だったんだけど、中国で勢いがあって志の高い会社経営陣(大抵40-50代)や、そこで働いているメンバーの熱量に接していうちに、30代の自分ももっともっと難しいチャレンジをしたくなる気持ちが疼いてしまったのが一つ。それから何よりも、能力と成果に見合っているとは言えない高額な給与と素晴らしい福利厚生、これ一見良さそうに見えるんだけど、長い時間をかけて徐々に自分の魂を蝕んでいくような、サバイバル能力を奪っていくような感覚に居心地の悪さを感じるようになってしまったのが一つ。

本当はもっともっと色々な理由や事件、動機があったんだけど、それはいつか書きます。

土屋隆司(共同創業者)を巻き込むことが決まった夜と、日本への帰国

そんなこんなで、そろそろ起業を本格的に考えようと思った2015年の春前後だった、たまたま若手会かなんかの帰りにタクシーが一緒になった土屋隆司(取締役COO)と好運街・・通称ラッキーストリート、日本食店が並ぶ北京の一角にある焼鳥屋に二次会がてら入って「最近どうよ?」みたいな話をした。彼は当時北京エネルギー部隊の若手エースで、火力発電用石炭について中国国営企業とのパートナーシップや交渉を任されていた。年齢は同じ、アメリカの大学を出ていたので入社は僕の二つ下だった。

薄暗い店内でハイボールを飲みながら、確かMBAも視野にいれつつ転職も考えているような話をしていた。「佐藤さんは?」と言われて、「日本に帰って起業しようと思っている」的な話をした。その場で「おー起業は考えたことなかったすねー、めっちゃ面白いじゃないですか」と返事が返ってきたのが、今となっては随分昔のことのようにも思えるし、凄く最近のことにようにも思える。この時二つ返事で「面白いじゃないですかやりましょうよ。明日、会社辞めるって言えばいいですか?」って聞いてきた土屋をなだめつつ、「これは本当に強力な仲間が出来たな・・」と内心本当に嬉しくて、心強い気持ちになったのを覚えている。

そのあと、トントン拍子で二人で起業することが決まり、会社に退社意思を伝え、日本に帰国したのが2016年3月。日本帰国まで、毎週土曜日に土屋の家(三全公寓)で起業プランの作戦会議をしていたけど、そこで出たアイディはその後何一つ使われることはなかった。笑  会社員中に考えたアイディアなんかほとんど意味がない、と僕がよく言うのはこの実体験に基づくw

ここまでの話を詳細に書こうと思うと、この10倍の分量になってしまうので今日はこれくらいで、本題に突入しようと思う。


(2016年5月頃、初代オフィス)

なぜいまVision/ Mission/ Valuesに向き合ったのか

さて、話はいきなり随分さきへとすっ飛ぶ(笑) シリーズAがクロージングに向かっていた2019年夏、無事に10.6億円の調達が纏まりそうなことに胸を撫でおろしつつ僕と土屋は次の課題にぶち当たっていた。組織の課題。

社員数は内定をいれると15名前後が見えてきたタイミング。新しく人が入る一方で、創業初期の頃から一緒にやってきていたCTOが起業を決めたり、同じく初期のメンバーが海外に渡ることやフリーランスになることを決意したり組織の雰囲気が不安定になっていた時期でもあった。調達のクロージング?営業と売上?プロダクト?組織?採用?...資金調達の交渉で正直疲弊していた僕は、どこから手をつけるか判断がつかず体力的にも精神的にもやや参っていたような気がする。

その頃、当社COO土屋隆司はプロダクトまわりの相談を何度かGoodpatchの土屋尚史さんにしていた。彼は同級生かつ地元長野で同じ高校・同じ部活に所属していた仲で、起業当初よりたまにランチにいったりしていたのだ。

そんな尚史さんからのアドバイスは「組織が大きくなってきて、初期メンバーも入れ替わっていくいま、最優先すべきは会社のカルチャーを言語化すること」だった。株主になっているわけでもないのに親身になんども相談に乗ってくれる、地元の結束はかくも強い。そんなアドバイスを受けて、僕と土屋はよくよく話し合ったうえで、改めて会社のカルチャーの言語にチャレンジをすることを決めた。


(W土屋・・雰囲気似てるな・・)

Vision/ Mission/ Valuesに関する2度の失敗

今回のプロジェクトに到るにあたって過去2度の失敗についてもふれておきたい。僕たちの会社は過去2度、Vision/ Mission/ Values(以下V/M/V)の言語化と浸透に失敗をしている。

最初のトライは会社を作って1年半が経った2017年11月。当時シードラウンドを終えて、メンバーが創業メンバー数名だったチームが7名程度に増えていたタイミングで鎌倉の素敵なスペースを借りてやってきたことの棚卸しをしようとオフサイトを企画した。


写真だけみるといい雰囲気で話し合ってるように見えるけど、この時に話し合ったV/M/Vは全く浸透せず大失敗をした。これを機会に、オフサイトの議事録を探してみたら深夜のオフィスでコーヒーを吹き出しそうになった。


VisionとValuesが1時間の打ち合わせで決まっている!なんならディスカッション時間よりもランチほうが長い・・何それ怖い(笑

良いことは言っているんだがかなり薄い。あと当時は日英ハイブリッドの組織に拘っていたので最初からカッコつけて英語で書いてしまったのも失敗だった。(ちなみにTrustedやDynamic, Never Nostalgicといったカルチャーはこの時から変わっておらず今も形を変えて言葉になっている)

2度目の失敗は2018年6月に実施された一泊二日の合宿。ここでも同じような失敗を繰り返した。それだけで2時間くらい話せてしまいそうなので一旦割愛するけど、端的に言えば「準備不足& 思いつきと勢い」。

Goodpatchの力を借りて3度目の正直へ

10月初旬、過去の失敗も踏まえ「3度目の正直はGoodpatch社の力を借りてV/M/Vの言語化と浸透を軸にShippioのコーポレートブランディングをする」という意思決定をした。


個人的に徹底的にこだわったのは、「創業の時の想いを言語化する」「自分たちがプレゼンをしていてテンションが上がる内容にする」「いまこの会社で働いている人たちがこの会社のどこに共感をしているのかをあぶり出す」ということ。

プロセスは省略しますが、12月末の完成を目標に今回はGoodpatchの力を借りながら一つ一つ丁寧に時間をかけて準備をして議論を進められらたと思う。

例えば、一泊二日の合宿でそれぞれの人生観や仕事観、この会社における役割や期待を話すことがあったんだけど、お互いに相手のことに興味をもって質問したり議論したりするのを見て、改めて当社には誠実で気持ちのいいメンバーが集まっていることに誇りに思ったり。



社員だけではなく、投資家や顧客といったステークホルダーが僕らのことをどう見ているかといったインタビューをして、改めて当社に対する期待や信頼を頂いていることに感謝したり、考えるきっかけにもなった。特に「王道」「ど真ん中」といった言葉は僕も土屋も三井物産時代から大切にしている価値観で、自然と伝わっていることが嬉しかった。自社のMissionやValuesを議論するときにメンバーだけではなくステークホルダーとも会話して多角的に自分たちを見直すやりかたはオススメ。


そして出来たぜVision/ Mission/ Anchors

年末年始に最終化を進め、年明けについに当社Vision/ Mission/ Anchors(=Values)が完成!それがこちらです。


我々が目指すVision「貿易を超える」。物流・商流・金流が複雑に絡み合う貿易に、これからは情報技術の要素が入ってくる。これまで何百年と続いてきた近代貿易の先にたどり着くという夢を目指す。

夢の達成の為に我々が成すべきMissionは「理想の物流体験を社会に実装する」とした。ここもなんども言葉の議論があったけど、それぞれの言葉には以下のような意味がある。
理想: 部分最適や個社最適を超えた、究極的にあるべき状態を追求する
物流体験: Customer Experienceという概念があまりない物流領域に「物流体験」という概念を持ち込む
社会に実装する: 世の中の人が意識せずスムーズに使える状態にする

次に個人的に今回プロジェクトでもエモみ(笑)が高いAnchors。Valuesと呼ばずにAnchorsと呼ぶのは、僕たちがこれから長い航海を続けていくにあたって、時に挫けそうになったり不安になったりしても、これが我々にとってのブレない錨だから。ちなみに最初にAnchorという呼び方を提案してきたのはGoodpatch社で「なにそれ超いい・・」ってぶっ刺さりました。




ど真ん中を攻める:
「社会性の高い事業をやる」というのは北京にいたころから土屋とのテーマだった。また我々二人が「友情・努力・勝利」的な話が好きだというのもある。どんな場面でも、やるべきことから逃げずに真ん中を選んでやる、王道をいくという我々のカルチャーを言葉に換えた。

光を目指し続ける:
荒波を航海していくうえで、頼りになるのは北極星や灯台の光。事業をやっていれば良い時も辛い時もあるけど、自分たちの目指す光を見失わずに続けていこうよ、という想いをこめた。余談だが、「光のスピード」は当社社員の中で頻出単語になっていて「それ、光のスピードで!」っていうとお互い端的に伝わるので決めてよかった。笑

仲間を信じぬく:
スタートアップは時に不安な気持ちや不満が伝播しやすい状態になることがあります。誰も正解をもっていなくて、それでも勇気をもって何かを言い出して、周りを巻き込んでチャレンジをしにいかないといけないことがある。そのときに最も支えとなるのは同じ夢を信じる「仲間」だという想いから3つめのAnchorに持ってきた。仲間を信じる、困っていたら助けにいくというニュアンスの他に、僕と土屋が前職時代に共感をしていた「謙虚・フェアを常とする」という言葉を三井物産から(勝手に)お借りしました。議論の中で土屋が、「僕たちたぶん成功すると思うんで、こういう言葉は先にいれておいたほうがいいと思うんすよね・・」と言ったときに彼の自信の底深さをのぞいた気がして思わず笑ってしまった瞬間もあった。

ロゴも刷新!

そして今回のプロジェクトを通じて、副産物として新しいロゴも誕生した。従来のロゴにもとても思い入れがあるけど、当初想定していたよりもB to Bの固めのお客様からのお問い合わせ、ご依頼が増えていることを背景に、よりプロフェッショナルな雰囲気をもつロゴを使っていくことになりました。これが噂の地軸カット。



これからの浸透に向けて

作ったあとは、どれだけ会社にインストールしていけるかだと思っている。年明けに社内お披露目会をして、その後は個別面談で少人数の小さなグループで改めて説明することや、V/M/Aに関する社内ワークショップを続けている(こちらもGoodpatchさんに協力をして貰いました)。また新メンバーが加入する際に、このV/M/Aがどういう経緯で出来上がったのか・・というセッションも1時間程度とって僕から説明をしている。


さいごに

最後まで読んで頂き、有難う御座いました。

Steve Jobsのスピーチの中で"Connecting the Dots"という話があります。「将来の点と点を、先を見越して繋ぐことは出来ない。あなたが出来ることは過去の点と点を振り返って繋ぐことだ。だからあなたは将来、何かしらの形で点が繋がることを信じることだ。信じ続けることだ」的な話です。

今回のプロジェクトは、まさに僕と土屋隆司のこれまでの価値観や経験・思考、それからこの会社を選んでくれたステークホルダー(社員、顧客、投資家etc..)、更には土屋土屋コンビの高校時代の出会いや、担当してくれたGoodpatch毛利さん、岩田さん、米永さんがこれまでUX/BXデザイナーとして積み上げてきたノウハウやスキル・・といった色々な点が、一つの形になった結果だと思います。やり遂げるにあたって協力頂いた全ての人たちに感謝してます、絶対に良い形でお返ししたいと思っています。

それにしてもこうしてプロジェクトを振り返ってみると、どれだけの人に支えられて事業というものが立ち上がっていくのか想像を絶する。。まだまだやりたいことの0.01%くらいなので、これから先も点が繋がっていくことを信じて、我々独自のカルチャーを作りながら「理想の物流体験を社会に実装する」に近づいていきたいと思います。

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