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効果的なUX検証とは?コンセントリクス・カタリストのメンバーに聞く

今回は、UXデザインが得意分野のConcentrix Catalyst(以下CAT)のプロジェクトの中でも、特にUX検証に特化したプロジェクトについて社内メンバーにインタビューしました。プロジェクトの体制や実施過程だけでなく、UX検証の意義、生み出される価値についても話を聞いていきます。

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◇プロフィール

Nanako Misumi
三隅 菜々子(スミス:写真中央)
UX Designer

国内SIerでSEを経験。アパレルをはじめとする小売業界をクライアントとし、Webアプリケーションの新規サービス立ち上げや画面デザイン制作、フロントエンド実装などに携わる。ユーザーが自身にとってメリットを感じられる体験に価値を置き、具体的なデザインに落とし込むことを得意とする。「本当にユーザーのためになるものを世の中に出したい」という思いを胸に、2022年9月にConcentrix Catalystへ入社。


Yoshihiro Suzuki
鈴木 嘉洋(ガラム:写真左)
Senior Product Manager

女性向けライフツール、求人サービス、AIデバイス、ファンコミュニティなどのWebサービスの立ち上げからグロースまでをプロジェクトマネージャーやプロダクトマネージャーとして関わる。事業会社のプロダクトに関わるだけでなく、今までの経験を活かして幅広い領域のプロダクトの課題に向き合いたいと思い2022年6月にConcentrix Catalystへ入社。


Hirokazu Haraguchi
原口 紘一(はらちょ:写真右)
Senior Project Manager

ITの力で社会をより良くしたいという思いから大手SIerへ入社し、大規模公共システムのアプリケーション開発に14年間従事。要件定義〜基本設計及びテスト工程を約9年間。グループリーダーとしてアプリケーション開発のマネジメントを約5年間経験。CSS3階層のレガシーシステムをWebシステムへ移行する開発においてアーキテクチャ検討を実施したり、難易度の高いプロジェクトの支援なども経験している。社会をより良くするためにHCDやUXデザインの領域が重要になると考え、2022年4月にConcentrix Catalystへ入社。

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——みなさんは今年の9月まで一緒のプロジェクトだったと聞いています。どんなプロジェクトだったんでしょうか。

ガラム:クライアントが開発するプロダクトの実現に向けて、「ユーザーの体験」を重視し支援をしているプロジェクトです。主に荷物の受け取りと送付に関連するUXを改善することを目的としていました。半年ほどのプロジェクトでした。ユーザーフローの整理をされた状態、つまり基本的なサービスの内容が概ね決まっている状態で、その内容を検証するというところからCATが関わり始めました。

スミス:「UX検証」とは、ユーザーエクスペリエンス(User Experience)の効果を評価し、改善するためのプロセスです。これは、製品やサービスが実際のユーザーにとってどのように機能し、使用されるかを観察・分析して、製品やサービスの設計・改善に役立てるものです。顧客満足度の向上だけではなく、ひいてはビジネス成果が向上するために行われます。

はらちょ:CATの中でも大きい規模のプロジェクトですね。CAT側のチームメンバーは、最大構成だと、UXデザイナー3人、PdM2人(プロダクトマネージャー)、PjM(プロジェクトマネージャー)2人、UIデザイナー1人の合計8人ほどで構成されています。

今回のUX検証は、お客様社内でも良い事例として、紹介・活用されるような取り組みになっています。クライアント側の担当者の成果も出て、社内でも評価されていると聞いています。外側から関わる立場からしても、大変嬉しいですね。



——本プロジェクトはアジャイルで進められていたそうですね。どのような形で進めていましたか?

ガラム:すべてのプロセスでアジャイル開発工程をとっていました。ハードウェアが関わる部分もあったので、そこから優先的に着手していましたね。このプロジェクトでは、毎朝お客様との15分のミーティングを実施していました。そのほか、担当分野ごとについてのお客様の打ち合わせも適宜入ってきます。ただ、社内ミーティングはなるべく短く効率的に行っていて、週に30分だけ全員で同期を取るようにしています。

スミス:プロジェクトのスケジュールは、2週間のスプリントで構成されていて、平日10日間で進めていきます。スプリントの最初の日には、お客様と一緒に検証したいポイントを確認し、その後の日々で具体的な作業を進めていきます。

はらちょ:スプリントの長さは1週間だと少なくて、3週間だと長いなという所感です。1週間だと結果が出ないまま進んでしまいますし、3週間だと方向転換がしづらいですね。

スミス:検証のプロセスでは、被験者を5人用意し、1人あたり1時間ずつかけて詳細な検証を行います。この時、私たちは集合住宅でのユーザーの動きを想定して、模擬的な宅配ボックスを使った検証を行っています。これまでの6ヶ月間で、3回のサイクルを完了できました。その過程でUIがガラリと変わりましたね。


——このUX検証のプロジェクトでの、今回同席する3人はどのような役割だったんでしょうか。

スミス:はらちょは、UX検証の細部に注意を払い、実行する人のことですね。具体的にはスケジュールの管理なども含まれます。例えば、現象発生当日に様々なPCやポスト、画面などを接続する作業があったのですが、彼なしではできませんでしたね。。

ガラム:スミスは顧客からのフィードバックに基づいた仮説を立て、それを検証する役割を担っています。UX観点で分析を実施し、次の改善の方針を立ててくれます。

はらちょ:ガラムについては、プロダクトの中心的な役割を担っており、ガラムなしでは動かせないシーンが多くあります。POが決定できるように検証の結果を踏まえ、状況の整理や仕様の選択肢をPdM(ガラム)が積極的に行いました。このガラムの動きによってクライアントのPO(プロダクトオーナー)はプロダクトの仕様をスムーズに決定することができました。



——例えると何でしょうか。

はらちょ:サッカーに例えると、ガラムをはじめとするPdMはチームの監督やヘッドコーチのような存在かもしれませんね。ずっとフィールドにいるというか。

ガラム:はらちょのようなPjMは、試合にはでない組織側のスタッフ、GM(ゼネラルマネージャー)になるかなと思います。スタジアムの準備や運営、観客を集めるなど、試合以外の場をどのように整えるのかというところが焦点です。今回の試合はUX検証となります。そのほか、お客様とのビジネス交渉も含まれます。

スミス:そうなると私のようなUXデザイナーはPdMと同じく試合に出る人になりますね。

はらちょ:私のようなPjMからすると、試合中、つまり検証している間が一番楽な部分かもしれません。検証中は、チームがうまく機能していれば大丈夫です。それよりも次の試合であるスプリントで何をしていくかを考えることが、PjMの重要な役割だと思います。

——今回テーマとなっている「UX検証」は、誰でもできるようなものなのでしょうか。実施するためには、何が必要でしょうか?

スミス:UX検証は本質的には、正解や不正解がない、ユーザーインタビューと軸としては同じものだと私は考えています。

たとえば、UX検証の初週に私たちが用意したUIに対して、私たちが用意した使用方法ではないものの、ユーザーにとってはそれがOK、自然だったということがありました。ユーザーの自然な行動としては筋が通っていることもあります。そこで、なぜ想定と差が生じたのか、その背景は何なのかを考えます。

重要なのは、背景の深掘りの仕方ですね。UX検証においてタスクを実施してもらった内容と、その後のインタビューを含め、なぜそのように感じたのか、どのような考えからそう思ったのか、その人の日常生活はどうなっているのかしっかり聞いていくことが必要です。

型や初期のスタート地点については、UX検証のユーザビリティテストの方法などを書籍などで学ぶことは可能です。さらに質を高めるためには、経験豊富な人の方法を見て学んだり、自分で場数を踏んで失敗を経験することが大事だと思っています。



——良い検証をするために何が必要でしょうか?

スミス:準備が非常に重要だということがわかりました。実際のシチュエーションに近づけるための準備が大切です。例えば、今回の検証で宅配ボックスの種類を検証する際には、玄関先の靴の履き替えを想定してスリッパを取り入れていました。これは、会社でもなく街中でもなく自宅のすぐ近くという利用場面だからこそやったことです。

ガラム:仮説から何を得たいのかは関係者皆で認識しておくとよいですよね。ユーザー要求が出てきたとしても、どのようなシーンでどのようなUIで使われるのかを細かく想定して、機能実装における意思決定のための要素を検証段階から揃えておくことが大事です。

スミス:本プロジェクトではペルソナをきちんと決めているのですが、そのペルソナが利用する状況をしっかりと被験者に伝えて検証することも、結果的によい検証になると思います。


——どうやって仮説を立てて検証するものを決めていますか?

スミス:仮説を立てて何を検証するかを決める際には、プロジェクト全体の進捗はもちろんですが、サービスのメインとなる価値を構成しているものから先にやっていますね。アジャイル開発においては、サービスの主要な機能が先に完成しているはずなので、そこが検証の焦点になります。

はらちょ:ユーザーからの要求をそのまま受け取らないということも大事ですよね。出てきた検証結果をどのようにプロダクトに反映させるかも大事なポイントですよね。


——UX 検証のフェーズがなかったとしても、商品・サービスを市場に出すことができます。あえてUX検証をやるべき理由とは何でしょうか?

スミス:非常に多くのユーザーフローが作成され、その上で今回検証を行っています。

CATもそれを元に整理を行い、具体的な形に落とし込んでいます。ユーザーフローは非常に頭のいい人たちによって作成されたものであるにも関わらず、実際に検証を行うと途中で「ここはユーザーが面倒くさがるんだ」「ここってこうなんだ」と感じる箇所などが明らかになります。

どんなに頭脳明晰な人たちが集まっても、想定しきれないことがあるのです。人間はロジックだけでなく直感にも基づいて行動するもの。だからこそ、実際にユーザーに協力してもらい、使用してもらうことで見えてくることがあるという意味があります。期間に余裕があれば、時間が許す限り検証を行ったほうが良いと思います。

検証が3回目ぐらいになると、プロジェクトに関わっていない人々でもその効果を理解できるほどプロダクトが改善されることを、今回のプロジェクトでも実感しました。

今回、検証プロセスで集まったユーザーのコメントを保存しておくことが非常に有意義だと感じました。特定の行動に対するユーザーの反応やコメントを記録でき、検証後のプロダクトに関する議論の際に強い根拠となりました。「この事象に関しては、UX検証時に5人中3人が答えていました」など参照できるのは非常に強力です。ただし、「そのバージョンでは」など限定的なデータなので、使いどころには注意したいところですね。


はらちょ:現在、東京都がユーザーテストを行わないままに世に出すのではなく、ユーザーテストを経てサービスを都民に提供するという方針を出しています。公共セクターでも同様の認識に至っています。現代においては、ユーザーテストが不要だという考え方はもはや受け入れられないと思いますよ。

ガラム:アジャイル開発は本来、検証を根底に置いています。2週間で制作し、ユーザーに提供し、その検証結果をもとに改善し、価値ある製品を生み出すものです。その一連のフローが重要で、これをやらなければ1年後に自分たちが作ったものが価値あるかどうか判断できず、「出してみたらダメだった」みたいなことになりかねません。

もうひとつ、企業内での意思決定に必要だという観点があります。

意思決定の際には、スティーブ・ジョブズのような人物がいれば「これが俺の思うプロダクトだ」と一気に決断できるでしょう。しかし、ユーザーは全員がジョブズではないですし、大企業のプロダクトは「私が思うものを作りたい」という発想でスタートすることは少ないでしょう。通常は企業の目指す目標に向けてプロダクトを制作していきます。

このようなプロダクト制作のなかで、全ての決定を一人で導き出せるような人はあまり多くありません。ディレクションは複数人で、かつ、企業のミッションを基に進んでいきます。そんなプロダクト制作の現場で複数の選択肢から一つを決める際には、検証の結果を使うのがフェアになると思います。そうでなければ、自分的にはこうだと思うことをいう人が多く出てきてしまい、それぞれの主観が飛び交い議論が尽きません。そんなときにUX検証の結果をもとに「では、こうしましょう」と具体的な行動指針を出すことができると、客観的な根拠があり、決定しやすくなります。

チームで制作を進める場合や複数人が関わる場合などでは、与えられた課題に対してどのように考え、進めていくべきかの指針として、UX検証はとても有益だと思います。



——UX検証をやったことのない企業はまだまだ多くあると思います。その企業内部の方々に何と声をかけますか

スミス:社内のプロダクト制作でいうと、「すでにこれは決まってることだから」「これはもう変えられない」というリミットがある場合が多いですよね。そこにUX検証として完全に外部の視点でもあり、限りなく公平なユーザー視点が入るだけで、開発の方向性が良い方向に進めるのであれば、UX検証はやった方が良いと思います。

はらちょ:検証結果がちゃんとフィードバックされてプロダクトになるの?っていうところはすごく慎重に見極めた方が良いですね。出てきたユーザー要求をプロダクトにまで落とし込めるような信頼できるPdMが社内にいることが大事です。もしいない場合は、CATのような外部が関わる形式とはなりますが、その場合はUX検証だけではなく、開発までの一貫した体制を組んだ方がよいと思います。重要なのは、検証することではなく、しっかりとプロダクトに落とし込めるかどうかです。

CATの UX デザイナーは上流からプロダクトになるところまで全部を見ています。その案件とかフェーズとかによって体制をカスタマイズした動きができるところが強みなのではと思います。

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コンセントリクス・カタリスト(CAT)は、カスタマー・エクスペリエンス(CX)ソリューションとテクノロジーのリーディング・グローバル・プロバイダであるConcentrixのエクスペリエンス・デザイン&エンジニアリング・チームです。

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