最初に、隠さずに書いておきます。
フルアウトはフル出社です。リモートワークを主軸にするつもりはありませんし、楽に働ける環境を売りにするつもりもありません。求めるコミット量は、はっきり言って多いです。
それでも、この形を選んでいるのには理由があります。人が一番速く伸びるのは、良い判断を間近で見て、その場で目線を合わせて直される環境だからです。
この記事では、フルアウトがなぜ出社とコミット量にこだわるのかを、実際に社内で起きている具体例とセットでお伝えします。
1. 成長は、改善回数の総量で決まる
マーケティングの実力は、センスや才能ではなく「改善を何回繰り返したか」で決まると考えています。仮説を立てる → 市場に当てる → 数字を見る → 直す。この1周をどれだけ積み上げたかが、そのまま実力の差になります。
数字を見て、その日のうちに次の一手まで決める
広告運用チームでは、前日の数字(粗利・CV・CPA・costなど)を確認するところから1日が始まります。案件ごとのレビューで「次にどの訴求を、どういう切り口で検証するか」をその場で決め、クリエイティブの差し替えや入稿まで当日中に進めます。週明けにまとめて振り返るやり方とは、改善の回数が根本から違ってきます。
Amazon、Booking.comなど世界的な企業も、「回数」で勝っている
Amazon創業者のジェフ・ベゾスは「Amazonの成功は、1年・1ヶ月・1週間・1日あたりに何回実験したかの関数だ」と語っています。宿泊予約のBooking.comは、常時1,000件を超えるA/Bテストを同時に走らせていることで知られています。勝ち筋を最初から当てるのではなく、試行回数で当てにいく。これは会社の規模に関係なく、個人の成長にもそのまま当てはまります。
1ヶ月に1回改善する人と、毎日改善する人では、1年後に差がつくのは当然です。学びの量を短期間に圧縮したいから、行動量を重視しています。
2. フル出社にするのは、文字では伝わらないものがあるから
リモートを否定しているわけではありません。ただ、今のフェーズでは、集まっている方が圧倒的に速いと判断しています。
一番大きいのは、コミュニケーションの量です。同じ場所にいれば、何気ない雑談からアイデアが生まれますし、詰まったときに隣の人へその場で聞けます。リモートだと「今、手が離せないかもしれない」と気を使って、聞けないまま半日が過ぎることがある。この差が毎日積み重なるので、成長速度ははっきり言って全然違います。
社内では、よくこう話しています。「数字を見て止めるという定量の判断は3ヶ月でできる。でも、なぜこの訴求が刺さらないのかを言語化する定性の判断には1年かかる」と。この1年を短くするのが、隣の席です。
「疑う順番」は、隣で見て覚える
CPAが合わないとき、いきなり配信面を絞りにいくのは、たいてい遠回りです。私たちは「フォーム → 記事LP→配信面→クリエイティブ」と順に疑って原因を特定します。また、「配信している広告を、早すぎるタイミングで止めてしまう」といったクセは、自分ではなかなか気づけません。隣の席で管理画面を一緒に見て、その日のうちに直す。これが一番速いと考えています。
Yahoo!とピクサーが「同じ場所」にこだわった理由
Yahoo!はリモート勤務を廃止しました。社内文書にはこう書かれています。「最高の意思決定や気づきのいくつかは、廊下やカフェテリアでの会話、新しい人との出会い、突発的なミーティングから生まれる。在宅では、スピードと質が犠牲になることが多い」。ピクサー本社を設計したスティーブ・ジョブズも、社員が必ず中央のアトリウムを通るように動線を設計しました。「建物がそれを促さなければ、偶然が生む魔法とイノベーションの多くを失う」からです。私たちがフル出社を選ぶ理由も、これとまったく同じです。
これらはマニュアルになりません。質問をするのに予定を押さえる必要がない。たったこれだけのことが、累積では大きな差になります。
3. コミット量を求めるのは、中途半端にやると何も残らないから
中途半端に試した施策は、当たらないだけでなく、なぜ当たらなかったのかすら分かりません。量を出し切って初めて、データに意味が生まれます。
「量」を目標値として置いている
クリエイティブと記事LPには、全社で月単位の本数ラインを引いています(例:バナー・動画の制作本数、新規記事LPの本数、入稿数)。そして見るのは本数ではなくHIT本数。当たったクリエイティブは、その日のうちに他案件・他媒体に横展開し、勝ちフックの派生を量産する。量のノルマと横展開がセットになっているのがポイントです。
歴史に残るコピーも、量の中から生まれている
広告の巨匠デイヴィッド・オグルヴィは、ロールス・ロイスの広告を手がけるにあたり、3週間かけて資料を読み込み、その中の一文から「時速60マイルで走行中、この新型ロールス・ロイスの車内で最も大きな音は電子時計の音です」という名コピーを見つけました。名作はセンスの一発ではなく、大量のインプットと検証の副産物です。
「質は量から生まれる」を、精神論ではなく実務の前提として持っています。楽に稼ぎたい方には向きませんが、一定期間本気で食らいついて実力を付けたい人には、これ以上ない環境だと思っています。
4. 経営陣が一番走る
メンバーにコミットを求めるなら、まずリーダーが一番走らなければ筋が通らないと考えています。
経営陣も広告の管理画面や記事LP、クリエイティブに目を通していますが、日々の運用に細かく口を出すことはしません。案件をどう伸ばすかは、事業部単位で考えて決め切ってもらっています。
そのうえで、新しい事業の立ち上げにも動きながら、数字やクリエイティブを見て気づいたことは、遠慮なくその場で指摘し、フィードバックします。そして、相談してから答えが返ってくるまでが非常に短い。任される範囲が広いのに、返ってくるフィードバックは速い。この2つがあるから、成長は速くなると思っています。
任せる。ただし、気づいたことは遠慮なく言う
会社の規模が大きくなると、やることを1つ変えるだけでも、上司に相談し、資料を作り、承認を待つという工程が入ります。フルアウトでは、「この切り口に変えて試してみよう」「伸びているこちらに予算を寄せよう」といった判断は事業部の中で決め、その日から翌日には実際の広告として世に出ていきます。若手が出した提案でも同じです。
一方で、経営陣が見て気づいたことはバンバン飛んできます。判断に迷ったときも、相談すればすぐに答えが返ってくる。丸投げでも、過干渉でもない距離感です。
Amazonの「やり直せる決定は、速く決める」
Amazonには、意思決定を2種類に分けて考える考え方があります。後戻りできない重い決定は、時間をかけてじっくり決める。一方で、やってみてダメなら戻せる決定は、現場がスピード優先で決める。この2つを混同してすべてを慎重に決めようとすると、組織はどんどん遅くなる。広告の検証は、まさに後者の「やり直せる決定」の連続です。だから私たちも、ここを徒に慎重にしないと決めています。
自分の頭で決め切る経験を積みながら、リーダーがどの数字を見て、何をやめ、どこに予算と人を集めるのかを、完成した資料でなく生で見られる。これはキャリアの早い段階では、かなり大きなアドバンテージだと思います。
5. やるからこそ、任される範囲が広い
広告運用だけ、ライティングだけ、という分け方をしていません。市場調査→訴求設計→記事LP・クリエイティブ→配信→改善→型化までを一気通貫で担います。
広告運用希望でも、最初の3ヶ月は「作る側」に入る
私たちの育成設計では、広告運用者として入社したメンバーも、最初の数ヶ月はライター・クリエイター業務を通ります。テキストを何百本と書き、バナーを作り、記事LPの改善提案を出す。その上で運用デビューし、早い人は3ヶ月目から1案件を半自走で回します。「なぜ売れたのか」を作る側で知っている人の方が、数字を見たときの判断が速いからです。
トヨタの「現地現物」
トヨタには、机上の報告だけで判断せず、自分で現場に行って目で見て確かめる「現地現物」という原則があります。数字だけを見て指示を出す人と、自分で作った経験がある人とでは、同じ管理画面を見ても読み取れる情報量が違います。最初に「作る側」を通すのは、そのためです。
この一気通貫を体験すると、媒体やツールが変わっても通用する「売れる構造を作る力」が残ります。また、テレアポ中心の営業ではありません。人力で消耗するのではなく、仕組みで成果を積み上げる仕事です。
6. AIを使い倒す。ただし判断するのは人
行動量を重視するからこそ、AIで速くできるところは徹底的に速くします。ただ、見ているのはAIツールを使えるかではなく、AIを使って成果まで持っていけるかです。
「拾う」と「作る」は自動化し、「選ぶ」は人がやる
競合の勝ちクリエイティブは、毎日自動で収集・蓄積する仕組みにしています。台本や字コンテ、バナーの軸違いも生成AIで初稿まで出します。
一方で、どの案を市場に出すか、なぜこれが刺さったのかの言語化は人がやります。N1インタビューや商品を自分で使った体感は、AIでは埋められない部分だからです。
Netflixのサムネイル
Netflixは1つの作品に対して複数のサムネイル画像を用意し、どれが再生につながるかをデータで選び分けています。同じ作品でも、主役の表情を見せるか、アクションシーンを見せるかで反応は変わる。作るのは大量に、選ぶのはデータで。私たちのクリエイティブの考え方も同じです。ただし、その大量の案の元になる訴求を作るのは、商品を自分で使い、ユーザーの声を聞いた人間の仕事です。
AIで速く、一次情報で深く。この両輪があるから、行動量がそのまま成果に変わります。
7. 正直に伝えておきたいこと
入社前に知っておいてほしいことを、そのまま書きます。
- フル出社です。リモート主体の働き方は想定していません
- 求められる行動量・コミット量は多いです
- 変化が速く、決まっていないことも多い環境です
- 整った研修制度に頼るより、自分で掴みにいく姿勢が必要です
- 裁量が大きい分、成果への責任も明確です
こういう要求の仕方をします
・「次にどういうルートで検証するのか」を、聞かれる前に設計できている状態を求めます(訴求の切り口、台本や企画、記事LPの構成まで事前に考えていないと答えられません)
・週単位の本数・粗利進捗が可視化され、未達なら打ち手と稼働を前倒しで見直します
・「頑張った」ではなく、数字と行動量で説明することを求めます
これを「しんどい」と感じるか、「面白い」と感じるか。ここが最大の相性だと思っています。反対に、やると決めた人には、会社側も本気で投資します。
8. 成果は、年次ではなく数字と行動で見る
「コミットを求めるなら、返すものがあるのか」——ここをあいまいにしないため、評価はMBO(目標管理)で運用しています。
目標は「週」に分解して渡される
メンバーごとに、月の粗利目標を週単位の状態目標に分解した設計図があります。例えば「1週目:伸びる勝ち筋を特定」「3週目:記事LP改善でCVRのボトルネックを解消」「4週目:組み合わせて着地を作る」。進捗は日々見えているので、評価は年次ではなく、この達成プロセスと結果で決まります。
年齢や入社年次は見ません。やった分だけ返ってくる形にしたいからです。
9. こんな人に向いています
向いている人それが活きる場面
短期間で実力を一気に上げたい人
毎日の改善サイクルを回し切れる
行動量と改善量で勝負できる人
クリエイティブ・記事の量産と検証
その場で直されることを歓迎できる人
隣の席でのフィードバック
売れる構造の全体に関わりたい人
市場調査から型化までの一気通貫
AIを武器にして成果まで持っていきたい人
AI量産×一次情報の判断
経営に近い距離で学びたい人
経営陣への直提案と即日決裁
逆に、リモート中心の働き方を優先したい方には、正直向いていません。
まとめ
フル出社も、求めるコミット量も、管理のためではありません。良い判断を間近で見て、その場で直されて、毎日改善する。その密度を最大化するための選択です。
この環境で一定期間やり切った人は、広告を回せる人ではなく、売れる構造を作って事業の数字を動かせる人になっています。
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