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北九州市の都市ブランド「New U」に込めた想い。

福岡県北九州市の新たな都市ブランド「New U」が7月2日に発表されました。これは新しいことに挑戦しやすい街であることをアピールし、若者層の定住・移住を促すことを目的とした取り組みです。新聞やテレビなどに取り上げられるなど、大きな反響をいただきました。そこでクリエイティブディレクターを務める私から、この都市ブランド「New U」がどのような考えのもとで生まれたかをお伝えしていきます。

まずは課題やターゲットを掘り下げ、新たな都市イメージを模索していきました。

福岡県出身の私が、地元に貢献したいという想いを抱き、北九州市のクリエイティブディレクターに就任したのは去年8月のことでした。それ以来、市役所の職員の方々に広報の指導や助言を行うかたわら、市内のさまざまな場所に足を運び、市民の方々と交流しながら街を観察してきました。

そこで感じたのは、確かに北九州市は都市と自然のバランスに優れていて、グルメも素晴らしく、人が温かい、とても豊かな街だということでした。しかし、それらをアピールするだけでは、北九州市の主要課題である若者層の人口流出を食い止めるのは難しいのではと思いました。若者層を惹きつけて定住・移住につなげる、未来志向の都市イメージを新たに創造する必要があると考えたのです。

ブランディングアプローチ

ファクトを伝えることでの現状のマイナスイメージを払拭することに留まらない、政令指定都市ならではの「期待感」を持たせる力強いブランドを創る


独自のブランディングを考えるにあたって、課題やターゲットを掘り下げていきました。まず若者層の人口流出についての統計を見てみると、去年1年間の転入者数と転出者数の差は、15〜19歳では+735人ですが、20〜24歳では−817人。つまり、大学などの進学のために多くの若者が転入してきても、卒業後には流出するケースが数多くあったのです。卒業してからも定住を希望する方々と、市外からの移住者を増やす施策が重要です。

現状認識とゴールイメージ


次にターゲットである「Z世代」と呼ばれる若者層については、自分の価値観を大事にし、やりたいことを求める傾向があるといわれます。また生まれたときからインターネットが身近にあるデジタルネイティブであり、SNSなどネットでの情報発信に積極的です。そんな若者層の中でも、今回のブランディングにおいては、起業や開業をめざす個人、デザイナーやプログラマーなどのクリエイティブ系人材に対象を絞りました。その理由は、酒屋の一角で集い飲む文化「角打ち」をはじめ、北九州市には独特の文化を生み出す素地があり、「Z世代」の創造力と熱量をもつ若者たちとの相性が抜群だと思ったからです。

そしてなによりも、北九州市には若者が活躍できる余地が十分にあります。競合が激しい東京では才能があっても埋もれがちですが、北九州市なら伸び伸びと個性を発揮しながらやりたいことに集中でき、新しいことにもどんどんチャレンジできます。インターネット時代なので、個人で全国・世界へアピールすることも可能です。そんな若者たちが集まり、その活躍が全国的に注目されれば、定住・移住が増えてくるでしょう。やがて独自のカルチャーやコミュニティが生まれ、都市の魅力も高まるという好循環が生まれ、先進企業の進出意欲も高まる。そんな未来図を描いています。

ターゲットテーマ

クリエイティブの力でビジネスをしている個人(家族)。価値基準がお金のためではなく、やりたいこと。また、デジタルの活用やSNSやデジタルメディアでの情報発信に積極的な人たち。


未来に期待がもてるスローガンとロゴマークを制作しました。

ブランディングのテーマが「若い世代が活躍できるチャンスの多い街」と固まってきたので、その次は未来に期待がもてるブランドのスローガンづくりを始めました。たくさんのアイデアをもとに、市長や副市長、市役所の担当者の方々と議論を重ね、半年間かけて完成させました。それは「New U  あたらしいことを、はじめやすい都市。福岡県北九州市。」


「U」には「You(あなた)」という意味だけでなく、「Unique(唯一の)」「Unite(一体になる)」「Update(最新の)」「Utopia(理想の場所)」「Unlimited(無限の)」「Universal(全世界にわたる)」といった北九州市の潜在力を表現する多様な意味をこめました。

そして、その「U」をロゴマークにも象徴的に用いました。温かみが感じられる赤色を使いながら、「U」に目をつけてキャラクター化した、北九州市の未来志向の姿勢を表現したデザインです。行政の制度や仕組みは複雑でわかりにくいものが多いので、ロゴマークに生命感・躍動感を加え、行政と市民をダイレクトにつなぐ役割を担わせようと考えたのです。さらに、SNSで拡散されやすいビジュアルであることも意識しました。

今後、このスローガンとロゴマークは、北九州市の移住支援、複業・兼業推進、スタートアップ支援、企業誘致、女性活躍推進、子育て支援などの各事業で活用されます。これまで各事業ごとに点で発信していましたが、これからは「New U」という大きな軸に集中させることで、事業の一体感をつくりだせますし、発信力も高まります。

北九州市の新たな都市ブランド「New U」は、一過性のプロモーションではなく、北九州市が若者たちのクリエイティブなチャレンジの受け皿になる姿勢を示し、数々の仕組みでそれを応援していくというコミットメントでもあります。

様々なサポート体制

北九州市では、移住支援、就業支援、子育て支援、起業支援など、
あたらしいことをはじめる人を応援するメニューづくりに積極的に取り組んでいます。


ありがたいことに、さっそく地元企業の経営者やショップオーナーなどの方々から協力したいという声を多数いただいています。地元企業の雇用を通して定住・移住が促進されるとともに、企業にとっては若い力を得て組織を活性化できます。行政と企業と市民が一致団結し、どの自治体よりも若者たちのクリエイティビティを応援し、魅力ある都市として輝きつづけてほしい。「New U」というブランドに私はそんな想いを込めています。

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