スピードか、品質かー。
多くの開発現場でトレードオフになりがちなこの問いに、真正面から向き合い、両立させた開発チームがあります。
2026年3月に開催された「ITトレンドEXPO 2026spring」を支えた開発チーム。
彼らが挑んだのは、これまでのtoB領域に加え、toC領域へサービスを拡張するという大規模かつ高難易度のプロジェクトでした。
短期間・高難易度・失敗が許されない状況。
それでもリリースの前倒しを自ら提案し、事業成果の最大化を目指しました。
その裏にあったのは、単なる開発力ではなく「事業を伸ばすために何をすべきか」を考え抜く姿勢でした。
なぜその判断ができたのか。
その裏にあった思考とチームの強さに迫ります。
ーー2025年度3Qのチーム賞おめでとうございます!受賞された時の気持ちを聞かせてください。
佐藤さん:
素直に「やったー!」という気持ちでした。
三浦さん:
私は「受賞できるかもしれない」と感じていました。というのも、3Q(2025年10-12月)は、難易度の高い大規模な開発に取り組むことが決まっていたので、「やり切ってチーム賞を取りにいこう」とチームで話していました。嬉しさもありつつ、受賞の可能性を感じていました。
ーー三浦さんの受賞スピーチは「事前準備があったのでは?と思うほど落ち着いているね」と、社内メンバーからも声が上がっていました。改めて受賞理由を振り返ってみて、どのように分析されていますか?
三浦さん:
受賞できるぐらい頑張ろうと思っていたので、スピーチを振られる心の準備はある程度できていました。
受賞理由は、大きく3つだと思います。
1つ目は、開発スピードと品質の両立です。単にスピードを優先して粗い開発を行うのではなく、不具合が出ないよう品質を担保しながら、スピードも追求しました。
2つ目は、メンバーが自律的に動けていたことです。私と佐藤さん、そして開発に携わっていただいた業務委託の方の3名が、それぞれ主体性を持ち、スピーディーに行動できていました。
3つ目は、事業成果を最大化するために、リリースの前倒しを自ら提案・実行したことです。自ら難易度の高い挑戦に踏み込んだ点が、受賞につながったのではないかと考えています。
ーー今回は初の取り組みも含まれ、非常に難易度の高い開発を担当されたとのことですが、具体的にはどのような内容だったのでしょうか?また、最初に聞いた時はどのように感じましたか?
佐藤さん:
一番大きな挑戦は、toCユーザーへのサービス拡張でした。
2026年3月に開催した「ITトレンドEXPO 2026 Spring」では、従来のtoB向けビジネスユーザーに加え、「資産形成」や「キャリア」といった新たなカテゴリーを追加し、ビジネスパーソンの人生そのものを豊かにする “社会インフラ” となることを目指しました。これにより、toCユーザーにも参加いただける設計となり、その分、開発の難易度も大きく上がりました。
三浦さん:
最初に話を聞いたときの率直な感想は「大変そうだな」くらいで、比較的気楽に捉えていました(笑)。というのも、toCユーザー向けの開発はこれまでとは大きく異なり、大規模な取り組みでもあったため、日頃のサービス開発よりも時間をかけて進めていくものだと思っていたんです。
ただ、実際には非常に短いスパンで開発を進めることになりました。驚きはありましたが、「これが事業会社ならではのスピード感なのだな」と感じ、むしろワクワクする部分もありました。
佐藤さん:
私は普段、bizplayの開発を担当しているのですが、今回のプロジェクトが大規模だったので、サポートとしてチームに加わることになりました。その時点ですでに実施内容は決まっていたので、話を聞いたときは「かなり大変そうだな」という印象でしたね。
三浦さん:
非常に規模の大きい開発だったため、佐藤さんの力がなければ成り立たなかったと思っています…!
ーー短いスパンでの開発にもかかわらず、そこから「リリースの前倒し」を自ら提案されたとのことですが、なぜその判断ができたのでしょうか?
三浦さん:
かなりタイトなスケジュールではありましたが、リリースの前倒しを私から提案しました。
当初の計画では、リリースからイベントの開催までの期間が約1カ月しかありませんでした。ただ、今回は初めてのtoC領域への挑戦ということもあり、集客期間が1カ月では事業として十分な成果を出すのは難しいのではないかと感じ、少しでも集客期間を確保するために、リリースを前倒しする判断をしました。
結果として、リリースを早め、集客期間を1カ月から2カ月へ延ばすことができたので、前例のない施策でもユーザーの集客目標を達成することが出来ました。
ーー今回、初のtoC領域、個人情報を扱うということもあり「失敗が許されない」状況だったと思います。「インシデントゼロ」を実現するためにどのような取り組みをされたのでしょうか?
佐藤さん:
まずは、テストを徹底したことです。開発チーム3名で集まり、「どのようなテストが必要か」をさまざまな観点から議論し、品質とリスク管理に徹底的にこだわりました。
参画いただいていた業務委託の方が非常に経験豊富だったため、その知見を最大限に共有していただき、情報漏洩リスクを抑えた実装を進めることができました。
イベント開催日という絶対的な期日があるため、その日程に確実に間に合わせる必要があります。品質を担保しながらも、「最低限何が必要か」「優先度はどうか」を整理し、スピードも意識しながら開発を進めていきました。
ーー「スピードを意識する」というのは、具体的にどういう行動につながるのでしょうか?
三浦さん:
最も大きいのは、「あえて開発しないことを決める」ことだと思っています。ビジネスサイドからはさまざまな機能要望が上がってきますが、それらをすべて受け入れてしまうと、不具合のリスクが高まってしまいます。
そのため、「本当に今必要なのか」を事業責任者と何度も議論し、優先度の低いものについては「開発しない」という意思決定を行いました。結果として、重要な機能に集中し、スピードと品質の両立につながったと考えています。
ーーチーム賞を振り返る中で、チームの雰囲気や意識の部分についても伺いたいのですが、どのような共通認識や価値観があったのでしょうか?
佐藤さん:
はい、三浦さんが日頃から「チーム賞を目指そう」と声をかけてくれていたので、それが一つの共通目標となり、チーム全体の士気が高まっていたと感じています。
三浦さん:
取れるものはすべて取りたいですから(笑)。
また、これは受賞を狙うことに限らずですが、重要なのは「事業目線を持って開発すること」だと考えています。イノベーションは、その文化が特に強いと感じています。何を作るのか、なぜ作るのか、あるいはあえて作らないのか。そうした意思決定について、事業責任者と直接対話できる環境は、この会社の大きな特徴の一つだと思います。
佐藤さん:
同感です。職種やレイヤーに関係なく、チーム全体でサービスを作っていくという意識が強いと感じています。
また、組織全体としてもフラットに話しやすい雰囲気があり、職種の垣根を越えた提案が推奨される文化があります。必要なときに必要なことを話すというメリハリがあるため、作業にも集中しやすい環境だと思います。
三浦さん:
個人的には、開発に向き合う姿勢という点で、ロールモデルの存在も大きかったです。入社1年目の頃、先輩エンジニアがビジネスサイドに積極的に提案している姿を見て、「エンジニアでもここまで踏み込んでいいんだ」と感じましたし、むしろ「良いものを作るためには自ら積極的に関わっていくべきだ」と考えるようになりました。
ーー今回の開発で特に大変だったことや、印象的なエピソードがあれば教えてください。
三浦さん:
最も苦労したのは、開発を始める前の要件定義のフェーズです。何をどこまで実装するのか、細かな仕様をどうするのかといった点について、ビジネスサイドと綿密にすり合わせを行いました。ただ、この段階でしっかりと段取りを組むことができたため、その後の開発は比較的スムーズに進めることができたと思います。
心掛けたこととしては、コミュニケーションの面では、開発の専門用語をそのまま使うのではなく、エンジニアの言葉をかみ砕いて伝えることを意識していました。加えて、「開発としてどうか」という視点だけでなく、「事業にどのようなインパクトがあるのか」という共通認識を持って議論することを大切にしました。
佐藤さん:
今回が初のtoC領域への取り組みだったこともあり、既存のtoBユーザーへの影響範囲が想定以上に広く、さまざまな箇所で修正が必要になりました。その対応にはかなり苦労しましたね。
体感としては、影響範囲が単純に倍になったような感覚で、両方をカバーしながら進める難しさが印象に残っています。
ーーそれでは最後に、イノベーションという環境では、どのような方がエンジニアとして活躍できると感じますか?また、どのような力が鍛えられるのか、新卒で入社し第一線で活躍されているお二人にぜひ伺いたいです。
三浦さん:
高い目標に向かって努力できる人、そして限られたリソースや難しい前提条件の中でも、どう創意工夫して目標にたどり着くかを考えられる人だと思います。戦略を練ることが好きな方は、イノベーションのような環境はフィットするのではないでしょうか。
また、活躍するうえで開発以外の部分も重要だと感じています。技術を突き詰めるだけでなく、非エンジニア(ビジネスサイド)に意図を伝える力や、開発という手段を通じてどう事業を伸ばしていくかという視点が求められ、その力が磨かれる環境だと思います。
佐藤さん:
「指示を受けてから動きたい」というタイプの方だと、スピード感や変化の多さに苦戦するかもしれません。この変化を前向きに楽しめる方が向いていると思いますね。ただ言われたことをこなすのではなく、「本当にこれが必要なのか」と目的意識を持って考え、行動できる力が身につく環境だと感じています。
三浦さん:
開発に携わる人としては、日常的に触れるサービスに対して、「これは誰のどんな課題を解決しているのだろう」と事業視点で考えてみることも大切だと思います。
佐藤さん:
そうですね。今はAIによってコードを書くハードルが下がっている時代だからこそ、技術的なスキルだけでなく、三浦さんが言っていたような事業視点を持つことが、これからのエンジニアにとってより重要になっていくと感じています。