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企業主体テックカンファレンスレポート(NTT Tech Conf #2編)

こんにちは。アイリッジでエンジニアをしています、野口です。

海外テック企業においては、自社主体のテックカンファレンスを開催してきているのは誰もが知るところで、メガテック5社のFacebook F8, Apple WWDC, Microsoft Build, Google Amazon AWS re:Inventも有名です。一方で国内企業に目を向けると、自社主体のテックカンファレンスを開催している企業はそれほど多くありません。日本発のテックカンファレンスを増やすにはどうしたらいいかと日々考えていたところ、以下のようなイベントがあったので、参加してきました。

NTTグループのエンジニア有志が主催するカンファレンスイベントNTT Tech Conference #2に参加してきましたので、その様子をお届けします。

イベントの趣旨としては、

NTT Tech ConferenceはNTTグループのソフトウェアエンジニアたちが一堂に会し、NTTグループ内外のエンジニアたちと技術交流を行うためのカンファレンスです。 NTTグループ内には各種OSSのコミッタ、メンテナ、コントリビュータをはじめとしたソフトウェアエンジニアや、各社の様々な案件でシステム開発を行うエンジニアがおり、それらのエンジニアがもつノウハウや悩みをNTTグループ内外のエンジニアと共有・議論することでもっとおもしろいエンジニアになることを目的としたイベントです。

としている通り、NTTグループのエンジニアが企画、発表する機会となっていました。参加者も社内:社外=2:1 (138人:80人) という感じで、NTTグループエンジニアの交流の場としての要素が強かったですが、外部の人間として参加してきました。

今年1月に開催されたNTT Tech Conference #1は予定が合わず参加できなかったので、待望の参加となりました。

趣旨説明

主夫 兼 クラウドのインフラエンジニアでもあり、Kamiyacho.k8s (神谷町Kubernetes) などでもご縁のある @Mahito さんからイベント概要についてお話いただきました。ボトムアップでこういう議論の場を設けたいという意識が感じられました。

NTTグループの業務ならではの開発・運用の技術はもちろん、社員が趣味でやっている技術的なこともスコープに入っているようです。

会場スポンサー、コーヒー・おやつスポンサーの紹介があり、NTTコミュニケーションズ 1部署からの提供ということでした。

真夏開催ともあってアイスコーヒーの提供があり、外が暑かったので、外から来た参加者にはありがたい心配りに感じられました。



Keynote

経営側視点での、XaaSから見たソリューションモデルのデザインについてお話でした。
若干社内のエンジニア向けの内容にも聞こえましたが、同業態のエンジニアにも響くところはあったように思います。
IDEOのHUMAN, BUSINESS, TECHNOLOGYの3つのレンズを例示し、HCDのビジネスデザインが重要であるという説明でした。
HUMAN, BUSINESS, TECHNOLOGYの重なりでのみイノベーションが達成されると強調されていました。

ここで同社の統合CP開発を率いている方にトークをスイッチします。
田町のコンピュータメーカに新卒入社し、その後、転職されてきた方だそうです。

ソフトウェアエンジニアに期待することは「徹底的に、顧客志向たれ」。
「イノベーション難民にはしない」から安心して取り組んで欲しい、とのことでした。

このセッションのグラフィックレコーディングはこちら。
ほぼリアルタイム+αで作成していますが、あとから見ても分かりやすいですね。


オープニングキーノートはここで終わり、これから3パラレルで個別セッションに入ります。

StackStormのイロハ、最新の活用事例の紹介


Workflow Engineの中でも近年注目されているStackStormについて、他のWorkflow Engineと比較した優位性、活用事例などを紹介します。
StackStormの設計思想
Jenkins Pipelineとの比較
最近の開発動向
活用事例をいくつか

NTTテクノクロスとNTT研究所と共同でStackStormを利用している事例の話でした。

まず前提としてStackStormと類似OSSプロダクトの比較です。
Airflow, Digdag, Luigi, Jenkins Pipelinesで比較しています。

ここの比較でJenkins Pipelinesを入れてくるのはNTTグループらしいな、という印象です。

我々は、私がリードしてきたこともあり、ここ数年GitLab CIでワークフローを整備してきました。GitLab CIのPipelinesはStackStormに近いかな、という印象です。

StackStormは2016年春にBrocadeに買収されたことで有名ですが、OSS版(Apache 2.0)と商用版Brocade Workflow Composerの2種類があります。

自前でCloudFoundryを構築してgooのビッグサービスをカットオーバーした話


NTTレゾナントにて運用しているクラウド基盤(OpenStack)上に、日本CloudFoundryユーザ会会長のご助力を得ながら、CloudFoundryを自前で導入し、商用サービスをカットオーバーした際の観点や試行錯誤した苦労話を語ります。具体的には以下のような内容をご説明します。
自社サービスを鑑みた提供サービスの最適化について (独自Buildpackの提供)
CloudFoundryの監視環境について (Prometheusを利用した監視環境の構築)

NTTレゾナントにおいて、自前で構築したCloudFoundryに「goo いまトピ」を載せた話でした。

タイトルにも「自前」とある通り、NTTグループでオープンに提供しているCloudFoundry (CF)ではなく、本当に自前で構築されたということでした。
会社レベルでスケールさせていく方針なのかは気になりました。

後半ではCFの監視環境として、OpenStackを監視している既存のZabbixをそのまま使うのではなく、Prometheusを採択したということでした。

個人的にPrometheusの利用を広めていきたくPrometheus Tokyoを運営していて、次回のMeetupでは登壇してほしいなと思いました。

1サービスのためにCloudFoundryを自前で構築するのは大変かと思いますが、楽天やYahoo! Japanでの実績もしっかりありますし、中堅・中小企業向けにもPivotalやMicrosoftはサービス提供しているので、検討の余地はありそうです。

Large Scale Jirou Classification

ディープラーニングによるラーメン二郎全店舗のラーメン画像識別を例に、学習および利用時のインタフェース(Slack、Twitter)に関するノウハウや失敗事例を共有します。

業務とは関係なく、趣味でラーメン二郎の画像識別に挑戦したという話でした。3ヶ月の通勤電車の中での成果だそうです。

技術の無駄遣い感が半端ないように思えましたが、やはり特徴量抽出が難しいのかなと思いました。
ただ、発表者本人が二郎に行ったことがないことが最大の驚きでした。
にも関わらず、なぜこのテーマを選んだのか突っ込んで聞きたかったですね。

OSS開発コミュニティ参加のお誘い -NTTグループのOSS活動例-

昨今、業務でOSSを利用することは珍しくなくなり、それにつれOSSを支えるコミュニティとの関わりも重要になってきます。今後、自分達がOSS開発コミュニティに参加するとしたらどのようにすれば良いのでしょうか。本セッションではNTTグループでOSSコミュニティ活動を仕事(の一部)にしている人達から、コミュニティにどのように参加したのか、どのように貢献しているのかを紹介します。この他、初心者はどのように参加するのが良いのか、コミュニティに参加してみて楽しいことや困ったことはあるのかなどなど、ひたすら聞いてみたり参加者で語り合いましょう

Hadoop、OpenStack、OpenJDK、PostgreSQL、RubyのOSS開発者が語り合うセッションでした。
これだけロングセッションの最後しか聞けませんでしたが、多様性を尊重したCode of Conduct (CoC)を掲げている、という趣旨のディスカッションが印象的でした。

OSS開発者を業務にしていくケースは日本では少ない(が徐々に増えつつある)ので、そのポジションができ上がった経緯や自身のキャリアについての話を聞きたいと思っていましたが、それはセッション冒頭にあったのだと思います。

3枠ぶち抜きセッションだったこともあり、グラフィックレコーディングの絵も壮大になっています。


高速にコンテナを起動できるイメージフォーマット

現行のDocker・OCIイメージフォーマットでは、イメージ全体をpullし終わるまで、コンテナを起動できない。本セッションでは、実際にアクセスが発生するまでpullを遅延することで、従来よりも高速にコンテナを起動できる、新しいコンテナイメージフォーマットを提案する。
https://github.com/AkihiroSuda/filegrain

昨年よりMoby(旧Docker)コアメンテナとして活動されている方のお話です。

講演アブストラクトに書いてある手法の検証。私の身の回りでのケースでは、このアイデアが必要になる場合は少なそうだな、という事前評価で聞きました。

JVMの場合で、コンテナ起動に必要なblobは最終イメージのblobの1/5程度になる、という結果になったようです。

コンテナが次から次に立ち上がるような大規模汎用コンテナ運用基盤では有効そうで、NTTグループならでは、という印象を受けました。

イケてない開発チームがイケてる開発を始めようとする軌跡

Enterprise人材のもと、誰もやったことのないAgileによって開発が始まった。イケてるとは間違っても言えない開発から少しずつランクアップしているその軌跡を共有します。飛び交うバズワード、積み上がるExcel、それでも私は戦う。だって大企業でもイケてるWeb開発がしたいから!!

個別セッション最後は、開発フローの改善の話。

Excelでガントチャートを書いたり、優先度が最大な課題ばかりになるような現場でアジャイル開発に取り組んでいった話でした。
他案件からのプログレッシブアサイン、かつ工期数ヶ月でいきなりアジャイルの仕組みを滑らかに導入するのは難しいなと思いました。

ここでもアイリッジがMeetup Tokyo #1のスポンサーをしたり、私がコントリビューションしたり、コミュニティ運営(GitLab.JP/GitLab Tokyo)に携わっているGitLabの話題が出てきて嬉しく思いました。

このセッションのグラフィックレコーディングはこちら。


クロージングセッション

Conferenceの〆としてクロージングセッションがあり、NTTソフトウェアイノベーションセンター (SIC)について紹介がありました。
NTT SICのウェブサイトは何度か閲覧したことがあったものの、大企業そしてグループ企業が多数あるため、なかなか全容が分かりにくいなと思っていたところですが、生で話が聞けてよかったです。

また参加者数が発表され、全体で240人規模での閉幕となりました。

次回(#3)の開催は来年度(2018年4月)以降になるだろうというアナウンスもされました。


懇親会

会場を移して懇親会がありました。当日パラレルセッションで聞けなかったセッションの登壇者、前回1月のConference #1の登壇者、自分のコミュニティイベント共催者や参加者、オープンイノベーションコミュニティファウンダー&リーダーとも、技術についてじっくり議論ができるよい機会でした。




まとめ

ここ数年、日本国内テック企業が自社技術PRや技術議論の場として、技術カンファレンスを開催するケースが増えてきました。
アイリッジで今すぐにこのようなイベント開催しますとはなりませんが、内部に保有する技術を高めていき、このイベントも参考にしながら、近いうちに開催できればと思います。

画像出典

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