株式会社情報戦略テクノロジー(IST)において、今、劇的な変化が起きている。これまでのシステム開発の常識を覆す「AI駆動開発」だ。その可能性を自ら証明すべく、代表取締役社長の高井淳さんが、エンジニア未経験に近い立場から「1時間でAIエージェントを構築する」という挑戦に臨んだ。
この挑戦の舞台裏と、その成功が示唆する「これからのシステム開発のあり方」について、企画・支援を担当したAI Officerの藤本雅俊さん、そして共に挑戦を間近で見守った新卒3年目のエンジニアH.Mさんへのインタビューを交え、詳細なレポートをお届けする。
1. 開発目標は「自律型営業支援AIエージェント」:1時間のドキュメント
挑戦の座組と参加者の役割
- 挑戦者・意思決定者(高井淳): エンジニア未経験に近い経営者の視点から、AIへの指示と最終的なアウトプットの判断を下す。
- 技術サポート・プロセス設計(藤本雅俊): AI Officerとして、AI駆動開発のプロセス設計と技術的なサポートを行う。
- オブザーバー・次世代エンジニア視点(H.M): 若手エンジニアとして、AI時代の役割変化を洞察する。
(左から、H.Mさん、高井さん、藤本さん)
開発目標:わずか1時間で「営業支援AIエージェント」を構築
開発目標として設定されたのは、企業名を入力するだけで以下のタスクを自律的に実行する「自律型営業支援AIエージェント」の構築である。
- 最新情報の収集(Web検索): 指定された企業の最新ニュースやプレスリリースをAIが検索する。
- 要約レポートと課題仮説: 収集した情報を要約し、その企業の現状の課題をAIが仮説として提示する。
- 営業トークスクリプト生成: 課題に基づき、具体的な商談で使える営業スクリプトを生成する。
通常、これだけの機能を備えたシステムを構築するには、要件定義から設計、実装、テストまで数週間、あるいは数ヶ月の工数を要するのが一般的だ。しかし、今回の制限時間はわずか1時間。高井さんはキーボードでコードを打つのではなく、AIに対して「ビジネス上の要望」を言語化して伝える役割を担った。
2. 驚異のスピードと精度:AI駆動開発の現場
開発が始まると、AIは驚くべき能力を発揮した。高井さんが「アイスブレイクのやり方を入れてほしい」といったビジネス視点の要望を出すと、AIは即座にそれを理解し、超高速で仕様書を生成。そのまま実装まで一気に進んでいく。
藤本さんは、その様子を次のように振り返る。
「2〜3年前であれば、AIに指示を出しても意図しないものができたり、人間が何度もレビューして修正したりする必要がありました。しかし今は、AIにドライブさせる『AIドライブ』が可能です。高井さんのように開発のプロではない方でも、ビジネスのストーリーを伝えるだけで、99%と言ってもいい水準のコードが、一人で完結する形で出来上がっていくのです」。
開発中、高井さんはAIの出力に対して「ここはもっとこういう要素を強調してほしい」といった判断を下していく。まさに「意思決定者」としての役割だ。AIはそれを受け、リアルタイムに機能を調整していく。
その結果、わずか1時間という極めて短い時間で、実際に動作する「営業支援AIエージェント」が完成した。
H.Mさんは、この光景を目の当たりにして大きな衝撃を受けたという。
「AIの驚異的なスピードを間近で見て、正直、震えるような感覚がありました。これまで私たちが時間をかけて行ってきた『実装』というプロセスが、これほどまでに短縮され、かつ高精度に行われる。エンジニアの役割が根本から変わることを、肌で感じた瞬間でした」。
(実際に構築されたAIエージェント)
3. 社長が得た直観と確信:開発の「民主化」
無事に1時間でエージェントを完成させた高井さんは、この体験を通じて一つの確信を得た。それは、システム開発が「一部の専門家のもの」から「ビジネスを理解するすべての人のもの」へと、文字通り民主化されるという予感だ。
高井さんは語る。
「未経験の私でも、ビジネスの要望を正しく伝え、判断を下すことができれば、1時間でここまでのものが作れる。これは、これまでの3次請け、4次請けといった、設計書を渡されてプログラムを書くだけの働き方が、完全にAIに置き換わることを意味しています。これからのシステム開発において重要なのは、コードを書く技術そのものではなく、『何を作るべきか』を構想し、意思決定する力なのです」。
この確信は、ISTが掲げる「内製化支援」のあり方にも直結する。クライアント企業の課題を最もよく知るビジネスパーソンが、AIを武器にして自らソリューションを構築する。その未来が、すでにもう目の前まで来ているのだ。
4. AI Officerが展望する「AIとシステム開発の未来」
AI OfficerとしてISTのAI戦略を牽引する藤本さんは、今回の体験会を経て、さらに踏み込んだ知見と展望を示している。
「現在、プログラミングなどの定型的な作業レイヤーは、生成AIによってコモディティ化しています。つまり、誰でも同じように高品質なものが作れるようになっている。そうなると、人間の役割はより高いレイヤー、つまり『アーキテクト(建築家)』のような仕事にシフトしていく必要があります」。
藤本さんが考える、これからの時代に求められる能力は、以下の3点に集約される。
- 非言語情報の言語化(翻訳能力)
「AIが苦手なのは、インプットされていない情報、つまり現場にある『暗黙知』を汲み取ることです。クライアントの中にあるまだ言葉にならない課題や独自の業務構造を言語化し、AIに正しく伝える『翻訳者』としての役割が不可欠になります」。 - アーキテクチャの構想力
「設計士ではなく、建築家としての視点です。何ができるかという引き出しを多く持ち、それをどう組み立てて全体のソリューションにするかという想像力・創造力が重要になります」。 - AI駆動の思考力
「AIを使って思考する力、つまり『AIを自分自身に実装する』ような感覚です。2025年後半には、非エンジニアでもAIエージェントを作れるプラットフォームがさらに普及します。ISTでは来年度から全社的に、ビジネス職も含めて『AIを使って思考する力』を身につけるマインドセットの転換を推進していきます」。
藤本さんは、AIを「拡張頭脳」と表現する。
「人間が得意な暗黙知の理解と、AIが得意な膨大な知識とスピードを掛け合わせる。この『AI×ヒューマニティ』の掛け算によって、個人の潜在能力を解き放ち、一人が一つのチーム、あるいは一つの会社のような裁量を持って活躍できる時代がやってきます。まさにワクワクするような、いい時代です」。
5. 新卒エンジニアの気づきと「自律するエンジニア」への決意
新卒3年目のエンジニアとして、最前線でAI駆動開発に触れたH.Mさんもまた、自身のキャリアを再定義しようとしている。
「以前、現場で顧客のプロジェクトに参画していた時は、決まった仕様に対してコードを書くことが仕事でした。しかし今、私の仕事は『何を作るか』を考え、AIをディレクションすることに変わっています。実装という手段がAIによって容易になったからこそ、その手前にある『理想の姿を思い描く力』の価値が相対的に上がっていると感じます」。
H.Mさんは、自身の成長に向けて「事業構想力」を磨くことに注力している。
「なぜこの機能が必要なのか、そもそもこの業務はどうあるべきか。常に『Why(なぜ)』を繰り返し、ゼロベースで理想を考えるようにしています。また、技術だけでなく、ビジネスサイドの知識やプレゼン力を磨くために、コンサルティングの手法を学んだり、自らサービスを作って売るための視点を持つように意識しています」。
H.Mさんの今の目標は、IT業界の課題を解決するようなプロダクトを世に送り出し、それをデファクトスタンダードにすることだ。さらに個人的には、教育系のゲーム開発にも挑戦したいという。
「就職活動をしている皆さんや後輩たちに伝えたいのは、『AIがあれば何でもできる』ということです。自分の能力に限界を設けず、やりたいこと、実現したい理想を重視してほしい。ISTのように、意志を持って手を挙げれば、失敗を恐れずにチャレンジさせてくれる環境があれば、AIを武器にして驚くほどのスピードで成長できます。私も、自分がやらなければ何も進まないという責任感を楽しみながら、プレイヤーとして、そして構想者として、新しい時代のエンジニア像を体現していきたいです」。
高井さんの1時間の挑戦は、単なるデモンストレーションではない。それは、ISTが描く「AIと人間が共創する未来」の確かな第一歩だ。エンジニアはコードの書き手から、価値の設計者(アーキテクト)へ。そしてビジネスパーソンは、自らソリューションを生み出す創造主へ。
情報戦略テクノロジーは、この「AI駆動開発」を自社の成長エンジンとするだけでなく、すべての企業の潜在能力を解き放つための力として、これからも進化を続けていく。