今、映像制作の世界に「AI」という波が押し寄せています。
「AIを使えば誰でも簡単に映像が作れる」という夢物語が広がる一方で、実際のところ、フリーランスの動画クリエイターにとって、AI動画制作は「本当に仕事につながるのか?」「しっかり稼げるのか?」という疑問は尽きません。
本記事は、数々の商業映像作品を手掛け、AI制作にいち早く踏み込み、独学開始からわずか1ヶ月でコンテスト優勝、現在では海外からもオファーが殺到するという異色の経歴を持つプロデューサー・宮城明弘氏と、株式会社Mintoのショートドラマプロデューサー・駒場舜による対談を再構成したものです。
クリエイターの情熱と執念が成功の鍵だと語る宮城氏が、AI映像制作で「稼ぐ」ためのリアルな戦略と、その実践者を育てるAIドラマ講座の核心を語ります。
【告知】
宮城明弘氏と株式会社Mintoで、3月25日(水)に『AIドラマ制作を「仕事」にするプロ向け実践講義』映像経験者向けのイベントを開催します
詳細は以下のイベントページからご確認ください。
今回の対談は、読者の皆様にAI映像制作の最先端に触れていただき、「AIを活用することで、新しい仕事を生み出し、確かな収益へと繋げられるかもしれない」という可能性を感じていただくことを目的に行いました。
Part.1:AIに踏み込んだ理由―「少ない予算でも面白い作品を作る」ための選択
駒場: 宮城さんがAIに触れ始めたきっかけは何だったのでしょうか?当時、普通に映像のお仕事があった中で、なぜ新しい分野に踏み込まれたのか、その動機を教えていただけますか。
宮城: きっかけは、大阪出張中に20代のAI開発チームと出会ったことです。私の周りにいる若い映画監督や役者が、作品を作るためのお金集めに苦労している状況をずっと見ていたんです。
宮城: その時、「少ない予算でも、大それた映画のような面白い作品を作れる手段として、AIに可能性があるんじゃないか」と感じました。当時はまだ実用レベルではないと思っていましたが、そこから独学で触り続け、わずか1ヶ月でAOIプロのコンテストで優勝し、そこから海外からも次々と仕事のオファーが来るようになりました。
駒場: まさに雪だるま式ですね。しかし、当時から映像制作の仕事があった中で、宮城さんが他のクリエイターと違って、すぐにAIに「踏み込めた」理由は何だと思いますか?多くの人は「AIが来ている」と分かっても、なかなか本格的に始められないと思うのですが。
宮城: やはり、私がプロデューサーという立場にいたことが大きいと思います。ずっと映像業界全体を見て、作品管理やクライアントとの折衝を通じて「見せ方」を理解していました。
宮城: 自分が撮影したり、技術的なサポートをするというよりも、映像全体を俯瞰し、作品の管理をする立場です。クライアントが求めるもの、人が見て興味深く感じてもらえるものが何かということを、プロデューサーという立場だからこそ理解できていた。「予算がない中でも、AIを活用すれば魅力的な作品に仕上げられるか?」という視点からAIに取り組み始めたのが、他のクリエイターとの違いかもしれません。
駒場: 今のお話を聞いていると、プロデューサー目線ではコスト削減のインパクトが大きい一方で、フリーランスの立場から見ても、自分ひとりで担える仕事の幅が広がるという点が、AI制作に踏み出す大きなきっかけになりそうだと感じました。
Part.2:AI動画は本当に「稼げる」のか?仕事の頻度とリアルな単価
駒場: 実際にAI制作を始めてから、お仕事の状況はどのように変わりましたか?
宮城: 現在、テレビ局やCM関連の映像コンテンツの仕事がほぼ毎日来ていますし、配信系ドラマの打ち合わせも頻繁にあります。
宮城: ただ、仕事の単価については、正直に言うと、適性であることもあれば、驚くほど安いときもあります。
宮城: ここで重要なのは、私のクリエイティブが「AIに見られないようにするにはどうするか」を常に考えて、徹底的にリアルな表現を追求していることです。このこだわりがあるため、「ポン出し」するだけのクリエイターでは対応できない仕事が私のところに集中している状況です。安く足元を見られないためにも、良いものだけを作り続けることが、結果的にコストパフォーマンスを高め、商業的な成功につながります。
駒場: なるほど。プロとして質の高いアウトプットを追求することが、単価のアップにつながるんですね。
宮城: その通りです。今AI技術は「幻想」にすぎず、いずれコモディティ化する時期が来ます。その時に、単なるツール利用の枠を超え、真のクリエイティブに対する「情熱と執念」を持つ人だけが、真のドラマやCM制作の現場で生き残れると私は警鐘を鳴らしています。
Part.3:なぜ「縦型ショート動画」がクリエイターの「稼ぎ方」を変えるのか
駒場: AIで収益化を考える上で、「縦型ショート動画」に大きな可能性を感じられていると伺いました。
宮城: 縦型動画は、そもそも横型に比べて背景がない分、見せ方や表現を工夫しやすいという利点があります。さらに、制作の尺に対する収益性(マネタイズのしやすさ)が高くなる可能性に魅力を感じています。
AIの技術発展と組み合わせることで、個人の制作時間に対するリターンが最も大きくなる可能性があります。
駒場: 中国のショートドラマのように、1話冒頭など要所に高い予算をかけ、インパクトのあるシーンを重視する思想も、AI制作と非常に相性が良いという点も注目すべきですね。
宮城: その通りです。アイデア力、企画力、演出力といったクリエイター自身の能力が最も重要になりますが、AIを活用することで、縦型動画にハリウッド級の面白さ、あるいはこれまで誰も見たことがないような壮大なスケールを加えられる。これは非常に夢のあるコンテンツ制作が可能になったということです。
Part.4:AIクリエイターへの警鐘——「ポン出し」をやめて「ワンカットの執念」を持て
駒場: AI制作を始める人へのアドバイスをお願いします。手軽さに流されず、プロとして「稼ぐ」ために、まず何に取り組むべきでしょうか。
宮城: 一言で言えば、「ポン出し(プロンプトを入れて一発で出力されたものをそのまま使うこと)」をやめることです。単に面白いものが作れた、という発想ではダメです。
宮城: クリエイティブであるためには、自分で構想したシナリオを基にワンカットずつ作り、オリジナリティを追求することが重要です。AIを単なる生成ツールではなく、人間による演技の感情表現などの要素を軽視せず、それを引き立てるためのツールとして活用する姿勢が必要です。
駒場: ツールは今後も進化していきますが、発想力や創造性、そしてストーリーを描く能力が最も難しい要素であり、重要だという結論に達しましたね。
宮城: まさにその通りです。発想は、日常の中から「これとこれを組み合わせたら面白そう」というアイデアを広げ、思いついたことはすべて手書きでノートに書き留める。
駒場: 宮城さんの制作プロセスを伺うと、AIを使ってものを作る人も間違いなく「クリエイター」であり、ツールが違うだけで「物づくり」なのだというメッセージが強く伝わってきます。
Part.5:AIドラマが創出する新しいジャンルと、実写との融合における「リアル」の追求
駒場: AIで映像制作を考えるとき、実写とAIを融合させるアプローチと、フルAIで制作するアプローチがあると思います。特にフルAIドラマの可能性についてはどうお考えですか?
宮城: フルAIでドラマを制作する場合、現在の技術ではリップシンク(口の動きとセリフの一致)が最大の難点であり、これが視聴者の感情移入を難しくしています。しかし、ここで完璧なリップシンクを追求するのではなく、思い切って「AIドラマ」という新しいジャンルとして捉え、面白いコンテンツを提供すべきだと考えています。
駒場: リップシンクの制約を逆手に取り、新しい表現として受け入れてもらうということですね。海外配信を考慮すれば、吹き替えによって口の動きは問題ではなくなるという点も、グローバルな展開を考える上で非常に興味深いです。
宮城: AI制作の目的は、単に既存のスタイルを模倣することではなく、新しいジャンルを創出することにあるべきです。
駒場: 実写とAIを組み合わせる場合、具体的にどのような技術的課題があるのでしょうか?
宮城: 最も大きな課題は、実写で撮影した素材(ログ撮影など)とAIの出力の「質感」がずれることです。そのため、グレーディングによる調整が非常に重要になります。また、AIの出力解像度の限界(最大1080p)から、大画面に耐えうる質感にするためには、アップスケールとグレーディングが必須です。AIクリエイターも、CGチームと連携するためのCG業界の知識を持っておく必要があります。
Part.6:AIドラマ講座の核心——なぜ「課題提出」をなくしたのか?
駒場: 最後に、今回のAIドラマ講座の募集要項から、当初予定していた「課題提出」をなくすことにしましたがその意図を改めてお聞かせください。
駒場: 応募の「敷居高すぎ問題」を避けたいという意図はありましたが、それだけではないですよね。
宮城: はい。応募者数を増やす目的も当然ありますが、それ以上に、「熱意」さえあれば今からでも遅くないというメッセージを明確にしたいという意図があります。課題提出の代わりに、既存のXやInstagramなどのAI関連アカウントを提出してもらい、そこでの「制作実績」を審査する形に変更しました。
宮城: 商業映像の世界は努力と忍耐力が必要ですが、最も重要なのは「やる気」です。私たちは、AIの可能性といった「夢の話」だけでなく、映像業界の厳しい現実とプロのレベルを伝える、親切でリアリティのある講座を提供します。
駒場: この講座は、乗り遅れたと感じている人にも市場はまだ開いていると伝えたい一方で、宮城さんからは、既存の映像経験者は固定概念により乗りづらい側面もあるため、むしろまっさらな状態で来てもらう方が良い可能性があるという示唆もありました。
宮城: そうですね。変な固定概念を持つことなく、純粋に「映像制作を仕事にしたい」という情熱を持つ、素直な若い人や現場を全く知らない人を教える方が、新しいAIの分野では大きな成果を出せる可能性があると考えています。情熱と執念を持つ人々と、共に未来のAIドラマを創り出したい。この講座は、その「やる気」のある人と出会うためのものです。
駒場: 宮城さんからの実践的な話を聞ける機会はなかなかないので、僕も楽しみにしています!本日はありがとうございました!
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宮城明弘氏と株式会社Mintoで、3月25日(水)に『AIドラマ制作を「仕事」にするプロ向け実践講義』映像経験者向けのイベントを開催します
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