Q_0008:どうやって不整地二足歩行を実現するのですか?

まず、現在のロボット工学では、ロボットによる不整地二足歩行を、必ずしも十分な性能で実現できていないことを指摘しておきます。確かに ASIMO 等に代表されるように、多少の不整地を踏破する二足歩行ロボットは存在します。しかし、それらは

基準となる既知の水平面が存在し、そこからの多少の床面高誤差を許容する

という意味での不整地二足歩行がほとんどです。

一方、我々は、実用レベルの不整地二足歩行を標榜するためには、そもそも基準となる水平面が存在しないような未知環境下で、人と同等以上の頑健な踏破性を持つ不整地二足歩行を、ロボットにおいて実現しなければならないと考えています。そうでなければ歩行ロボットである意味が薄れます。もし、車輪や無限軌道と同等以下の不整地踏破性しか無いのであれば、ガンダムではなくガンタンクやヒルドルブを象徴としなければなりません。車輪や無限軌道では走破できない程の不整地をバシバシと踏破できてこそ、歩行というモビリティが有意義になります。そういう意味で、不整地二足歩行を、我々が求める十分な性能で実現できているロボットは今のところ存在しません。

では、なぜ不整地二足歩行は難しいのでしょうか。大きなボトルネックは「不整地歩行とは豊富な先験的知識を必要とするスキルである」ということだと筆者は考えています。平たく言えば、これから足を踏み出そうとする路面の特性と、その路面に対応する適切な動作を、ある程度は知っておかないと歩けない、ということです。

人は、路面を一瞥すればその特性を知ることができます。固いのか柔らかいのか、引っかかるのか滑るのか、浮くのか沈むのか、等々。そしてその判断は、コンクリートの路面は固く、その上に乾いた砂が浮いていれば滑る、というような先験的知識を持っているからできることです。そのような先験的知識を利用できなければ、人の不整地二足歩行も極端に性能が下がるのです。

人のような先験的知識にもとづく判断力をロボットに持たせることは難しく、したがって人間と同等以上の不整地踏破性を持たせるのも今のところは困難だと結論づけられます。

では、どうすればいいのでしょうか。

我々は、全てをロボットの自律制御に任せてしまうのではなく、人とロボットが協力して不整地二足歩行を遂行する、という解決策を提案しています。これは、筆者が提唱するマンマシンシナジーエフェクタ(人間機械相乗効果器)の概念に基づく解決策です。人のような先験的知識に基づく判断力をロボットに持たせることが難しいなら、その判断は人が行なえばよい、ということです。これなら、現在のロボット工学で実現可能ですし、操作者のスキル次第では、ロボットが支援することで人間を凌駕する不整地踏破性も十分に期待できます。詳細の解説は長くなるので省きますが、興味のある方は以下の資料を参照して下さい。

多脚歩行式移動装置のハイブリッド制御装置及び手法 @ astamuse

そして、このような解決策で不整地二足歩行を実現するならば、やはり遠隔操作型ではなく搭乗型の方が有利です(自動車の運転と同様に、操作に関する通信遅延・途絶は致命的であるため)。

さらに、不整地踏破性を高めるためには、まだ解決しなければならない問題があります。その重要な一つが、ロボットの足底形状です。現在の二足歩行ロボットの足底形状は、ほぼ二種類に集約されます。一つは、床面と一点で接触すると見做せる、棒の先端のような足底です。もう一つは、弁当箱のような平面の足底です。

足底が(ほぼ)点接触である代表的なロボットは、MIT Leg Laboratory の歩行ロボットでしょう。MIT Leg Laboratory を創設した Marc Raibert 博士は現在 Boston Dynamics 社長であり、PETMAN や、バク宙をして話題になった Atlas @ YouTube [00:54](音注意)もこの流れにあります。足底の面積が比較的小さく点接触に近ければ、いわゆる ZMP = Zero Moment Point は常に足底の接地点に拘束されるため、動的な歩行制御がシンプルになるという利点があります。一方、容易に想像されるように、佇立(ちょりつ:じっと立っていること)能力は低くなります。電源を切ると容易に転倒してしまうような足底を、巨大二足歩行ロボットとしての人型重機に採用することは困難です。さらに、足底の底面積が小さいので、

路面との摩擦力が確保できず、滑りやすい
路面が柔らかい場合、接地圧が高くなるので路面に沈み込みやすい

という問題点もあります。やはり、点接触の足底形状は、人型重機向きではないようです。

では、もう一つの、弁当箱のような平面足底ではどうでしょうか。代表選手は言わずと知れた ASIMO や産総研の HRP-2 等ですね。佇立能力には優れており前述の問題は解決されそうですが、暗黙の内に平面上の歩行しか想定していない足底形状ですから、不整地上ではグラグラして歩行が成り立たなくなる可能性があります。分かりやすい例を挙げると、ロボットが路面の突起を踏んでしまうと、足首を挫いたりするのです。人型重機が足首を挫くところは、あまり見たくないものです。

接地面積の小さい点足底も、接地面積の大きい平面足底も、巨大二足歩行ロボットには使えなさそうです。つまり、足底形状についても足りないパズルのピースがあったということです。そこで我々が考えたのが「リモートセンタ足部機構」という技術です。詳細については、以下の資料を参照して下さい。

多脚歩行式移動装置の足部機構 @ astamuse

このような我々の独自技術を使うことで、冒頭に述べたような「そもそも基準となる水平面が存在しないような未知環境下で、人と同等以上の頑健な踏破性を持つ不整地二足歩行」を、現在のロボット工学で実現できます。そして特筆すべきは、その技術は巨大二足歩行ロボットとしての人型重機のスケールまで拡張可能であるということです。

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▶︎ 2012.08.03(金)14:03:00 = uploaded
▶︎ 2012.08.14(火)10:42:00 = revised
▶︎ 2018/01/18(木)17:14:52 = last revised
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