2026年9月18日、大阪・グラングリーン大阪のBlooming Campで「奈良ビジネスサミット~奈良で描く、次のビジネスの可能性~」が開かれました。主催は奈良市、共催はさくらインターネットさんとBlooming Campさん。私は最後のセッション「奈良で育つ、次世代のエンジニアコミュニティ」の進行役として登壇し、ことならテックプロジェクトの運営側として参加してきました。
奈良の話をしに大阪へ出ていく。人が行き来する距離だからこそ、奈良で積み上げてきたものを外に伝える意味があるのだと思います。
奈良という土地の、少し意外な強み
私たちのセッションの前に、奈良で事業をされている3名のお話がありました。ここがとてもおもしろかったので、先に紹介させてください。
一般社団法人TOMOSUの中島さんは、東京で10年働いたのち奈良にUターンされた方です。創業支援施設BONCHIを立ち上げ、移住支援やまちづくりに取り組まれています。BONCHIには首都圏から移住を考える人が数多く訪れていて、参加者の約3分の1が実際に奈良へ移住しているそうです。人口約35万人、田舎すぎず都会すぎないバランスの良さが、選ばれる理由なのだといいます。
株式会社プロクモの川村さんは、コロナ禍の前からフルリモートでのマネジメントを実践してきた方です。印象に残ったのは、奈良の人材の話でした。20代の県外転出率は高い。けれど、大阪や京都で経験を積んだあと、結婚などをきっかけに奈良に戻ってくるミドル層がいる。そこに大きなポテンシャルがある、と。さらに、奈良に良い企業があれば、優秀な新卒学生が地元に留まる機会も増えるはずだ、というお話もありました。
日本プラネットの大西さんは、BCP対策やセキュリティの観点から奈良にサテライト拠点を設けた経緯を話されていました。最低賃金の地域差にも触れられ、大阪の水準を基準に奈良で募集をかけることで、優秀な人材を確保しやすいという実務的な視点も共有されました。
移住、拠点展開、採用。角度は違うのに、3人とも「奈良だからできること」を具体的な数字と経験で語られていて、聞いていて背筋が伸びる思いでした。
学生が、自分の言葉で話していた
そして最後のセッションです。登壇したのは、奈良工業高等専門学校の増井崇さん、カラビナテクノロジーの田道竜大(カラビナネームash)、そして奈良市の企業立地コンシェルジュの方。学生、社会人、行政という三者が並びました。テーマは、人材と知見が地域のなかで循環する仕組みをどうつくるか。
増井さんは、ことならテックを「自分のひらめきを形にする場所」と表現していました。ハッカソンやアイデアソンを通じて地域企業と交わり、そこで自己成長していく。彼自身、昨年度は学生だけでイベントの運営と統括をやりきり、今年度は後輩やインターン生を指導し、レビューする側に回っています。企業と一緒に取り組むなかで、役割を持つことの責任感と、人を動かすことの難しさを学んだ、と話していました。
進行役として横で聞きながら、正直に言うと、少し胸が熱くなりました。運営を担う側になった学生が、経営者や自治体の方が並ぶ場で、自分たちの活動を自分の言葉で語っている。この一場面のために、コミュニティを続けてきたようなものです。
続けてきたから、たどり着いた場所
田道からは、ここまでの経緯を話しました。2021年から2022年にかけて奈良市内で開いた最初のハッカソンとビジネスコンテストが出発点で、そこから関西圏の学生が集まるイベントへと育っていきました。
途中には、J3に昇格した奈良クラブさんが抱える電光掲示板の課題をスマホアプリで解決するハッカソンがありました。宿泊を伴う開発合宿もやりました。奈良市の学生補助金事業を活用した、半年がかりの開発プロジェクトにも取り組みました。そして現在は、AI駆動開発と、奈良市が推進するオープンソースCMS「Drupal」を組み合わせた開発イベントを毎月開催しています。
奈良市の企業立地コンシェルジュの方からは、行政側の関わり方についてお話がありました。Drupalの国際会議「DrupalCon」への学生招待やブース出展など、産学連携を実際に形にしてこられています。印象的だったのは、行政が一方的に見守るのではなく、会場提供やテーマ設定、市内企業とのマッチングにフラットに参加し、懇親会にもしっかり加わってくださっているという点でした。この距離の近さは、そう簡単にできることではありません。
なぜ、会社としてここに関わるのか
カラビナテクノロジーは福岡に本社があり、北九州、東京、大阪、宮崎や奈良に拠点を持つ開発・DXコンサルティングの会社です。奈良のことならテックのほか、佐賀のガバイソン、下関、長崎、川越など、各地でハッカソンやカンファレンスの運営に関わっています。
短期的に売上になる活動ではありません。それでも続けているのは、地方にもおもしろい開発の機会はちゃんとあるということを、言葉ではなく場で示したいからです。都市に出なくても、技術を仕事にして腰を据えて働ける。そう思える若い人が増えれば、地域のこれからは変わっていくはずです。
セッションの最後に、私はこんな話をしました。卒業して奈良を離れたとしても、奈良を思いながら関わり続ける人が増えてほしい。そして、月に1回は奈良で何かおもしろいことが起きている、そういう場所にしていきたい、と。
これからのお知らせと、お願い
直近では、創業支援施設BONCHIで「フィジカルAI × Drupal ミニハッカソン」を開催します。さらに12月19日の午後には、テックカンファレンスを予定しています。ブース出展やスポンサーを広く募集していますので、ご関心のある企業の方はぜひお声がけください。
学生のみなさんへ。ことならテックにも、各地のハッカソンにも、参加者として気軽に来てください。技術に自信がなくても大丈夫です。最初は右も左もわからなかった学生が、次の回には教える側に回っている。そんな光景を何度も見てきました。運営に関わってみたい方も歓迎です。
企業や自治体のみなさんへ。地域でエンジニアコミュニティを育てたい、学生との接点をつくりたい、けれど何から始めればいいかわからない。そんなご相談をよくいただきます。各地で場をつくってきた経験を、うまくいかなかった話も含めてお貸しできます。奈良市への拠点進出のご相談も、窓口としてお受けしています。
カラビナテクノロジーでは、インターンシップ、会社見学、カジュアル面談をいつでも受け付けています。採用のご相談も、連携のご相談も、まずは話を聞いてみたいという段階でかまいません。奈良でも、九州でも、お待ちしています。