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ITが底上げする性悪説のサンフランシスコ -MAMORIO CTO滞米日記-②

前回の記事:シリコンバレーに勝ちに行く -MAMORIO CTO滞米日記-①

「なぜ金沢市くらいの規模であるサンフランシスコとシリコンバレーが、これだけのイノベーションを生み出し、世界のテック業界に圧倒的な影響力を持っているのだろうか?」

そんな疑問を抱いてJETROさんのシリコンバレープログラムに応募した私は、現地の空港でさっそく自分たちの競合であるTileの流行とIOT家電の隆盛に衝撃を受け、「今回の滞在ではアメリカで流行っているサービスを使い、アメリカ人が買っているものを買い、アメリカ人ライクに過ごすことをコスパよりも優先しよう」と決意しました。

我々は空港のチェックアウトを済ませると、事前に予定していたBartではなくUberで市内のホテルへ行くことにしました。

1.Uber

Uberは時価総額5兆円を越える自動車配信サービスであり、シリコンバレーのユニコーン企業の代表格として知られています。

アプリをインストールして配車を要求すると、さっそく個人の運転手が捕まりました。土地勘がなく合流に遅れてしまった我々に対して、運転手は嫌な顔1つせず挨拶をし、展示用の重い荷物をすすんで載せてくれました。

このサービスを使っていて驚いたことは、旅行者が一切コミュニケーションをする必要がないということです。

合流地点と目的地は事前にアプリで入力しその時点で料金が決定されるので、我々が慣れない英語で目的地を伝えたり、わざと遠回りをしてメーター料金を稼いでいないかと注意する必要もありません。

また、Uberには5点満点の評価機能があり、平均点が4.5以下だと誰も乗りたがらなくなるという暗黙のルールがあるので、ドライバーが外国人である我々を乗せる前に無視したり乗車後に話しかけたりしてくることもありませんでした。

Uberは後に何度も使うことになったのですが、その魅力は人間を一切信頼しない性悪説に拠ったシステムです。

「安くて信頼できる手軽な移動手段がほしい」というユーザーの欲求に対し、東京のタクシーは規制緩和による競争と社員教育によってそれを実現したのに対し、Uberはドライバー個々人のモラルの改善に期待せず、GPSとアプリによってズルができないシステムを構築しました。その結果、Uberは東京のタクシーよりも煩わしいコミュニケーションを必要とせず、また空港から市内まで20kmで27ドル程度という遥かに低コストで外国人旅行者に優しいサービスを実現することに成功しました。

そして、この「20世紀的な方法で都市の問題を解決してしまった東京と、問題を先送りにして企業がシステムで解決するサンフランシスコ」という構図はその後の滞在で何度も見かけることになりました。

2. Ford Go Bike

たとえば、今回の滞在でUberと同じくらい移動手段で我々が用いたのがFord Go Bikeというシェアサイクルでした。

FordGoBikeは一日10ドルで一日パスを取得し、あるステーションでワンタイムパスコードを入力して自転車を借りて使います。

支払いはクレジットカードのみで、24時間以内に返せなかった場合は13万円の罰金を支払うという、ユーザーに責任を押し付けるシステムになっています。

FordGoBikeの自転車は重く、ステーションに戻してもよく機械が反応せず返却したことにならずに超過料金をとられることがあり、サービスとしての完成度は高くはありません。

しかし、それでも埠頭の先などの行って戻ってくる場所や、3ブロックほど離れた2地点を移動するには最適で、半日で5箇所の観光地に行くような強引なスケジュールも可能になります。

また、FordGoBikeのステーションは市内には至るところにあり、さらに位置情報が全てアプリの地図で視覚的に完結しているので、地下鉄のようにいちいち英語で地名を確認する必要が一切ありません。

東京には20世紀に完成した世界最大の地下鉄網があり、2020年の東京オリンピックを見据えてさまざまな訪日外国人向けのサービス改善を行っています。しかし、今回FordGoBikeに乗って思ったのですが、どんなにそれらの既存のインフラに多額の投資を行って多言語対応や通訳ボランティアを整備してもシェアサイクルの利便性には勝てません。

例えば、朝に浅草の浅草寺に行って昼にアメ横を散策し午後を秋葉原で過ごす、というような旅程を外国人旅行者が日本の地下鉄で行うのは相当にキツイものがあります。さらに、外国人旅行者に日本でしか使えないSUICAを買ってもらうのはハードルが高く、この点でもアプリのクレジットカード決済で完結するシェアサイクルのほうが優れています。

FordGoBikeは、たとえ自己責任型のドライなシステムで、完成度が低くても、最終的に何かの労力をゼロにするサービスは強いというITの勝利の見本のような存在でした

3. クレジットカード社会

また、日米のイノベーション比較としては、言わずもがなですがアメリカがクレジットカード社会でほぼ現金をもつ必要がないことも重要です。

飲食店のクレジットカード決済普及率が21%に過ぎない東京に比べ、サンフランシスコでは、どんなに小さな雑貨店や移民による個人経営の食堂でもクレジットカードでの支払いが可能です。

クレジットカードの使用率が高い利点は何よりも小銭や両替を考えなくて済むことですが、他にも、信用が大事になり皆がズルをしなくなることや、盗難に強いこと、また、店舗側が高くて内部構造が複雑な現金投入機を買う必要がないことも挙げられます

「なぜポイントなどの優待をどれだけ向上させてもクレジットカードを日本人はほとんど使わないのか?」という議論はよくなされており、我々もその話をしたのですが、日本の場合はコンビニATMが普及しすぎてどこでもATMでキャッシュカードのお金を下ろせるようになってしまったという歴史的な経緯が原因ではないか?という結論に至っています。

人間を信頼しない冷淡なシステムのITインフラに覆われたサンフランシスコのほうが過剰なほどのサービスと成熟したインフラを兼ね備えた日本よりも旅行者フレンドリーである、というのは皮肉なことです。

ただ、ひとしきりサンフランシスコを上げて東京を下げるようなことを言って来ましたが、とはいえ総合的な住みやすさという点ではサンフランシスコは東京より優れているわけではありませんでした。

タクシーがUberに駆逐され、あらゆる場所にシェアサイクルのステーションがあり、どんな店でもクレジットカードが使える、そういった性悪説に基づいたシステムによって底上げされたサンフランシスコでも、思わぬ穴にはまることがあります。

4.AirBnB

たとえば、上の写真は私達AirBNBで予約したホテルの近くにあるストリートです。

ここはユニオンスクエアまで徒歩十分という好立地なエリアだったのですが、銀座のようなきれいな大通りから一歩入ったそこはあちこちで排泄物と大麻の匂いがするスラム街でした。

あたりにはホームレスや1人でぶつぶつと呟いている失業者風の人々が大量におり、ちょっと飲み物を買いに20メートルほど離れた雑貨屋に行くだけでも彼らから何度も「タバコをくれ」と声をかけられます。

また、当のホテルも、入ると建物中に近くのインド料理屋の臭いが充満しており、シャワーとトイレは共用でたまに汚物が、、、という酷い有様でした。

しかし、このストリートのど真ん中にあった我々の宿はAirBnbでは5点満点中4点という高評価だったのです

この宿を予約した私はかなり怒られ、のちにレビューをもう一度見てみたのですが、よく読んでみると「バックパッカー以外にはおすすめできないが、ルームサービスは頑張ってくれた。」「共同シャワーは汚いがworkableではあった。」といったポジ出しな内容のものが多かったのです。

もちろん事前にレビューの内容を調べなかった私が悪いのですが、ここらへんも非常に性悪説的というか、サービスや他人に対する期待が低く、ちょっとしたことでもありがたいことに思えてしまう性悪説的な社会では、人々はついポジだしばかりするようになりレビューの効果が限定的になるということです

5.Eatsa

日米のイノベーションの土壌の比較、という店で最も興味深かったのが、サンフランシスコの中心街にある全自動レストランのEatsa(イーツァ)でした。

そこは仕事とは別に必ず見たいと思っていた場所の1つで、行ってみるとそこには人だかりができていました。

Eatsaは2015年からすでに存在しているお店ですが、それでもこれだけ人気なのは驚くべきことです。


まず、注文はアプリか外のディスプレイで行います。いずれも支払いはクレジットカード一択です。


注文を行うと、クレジットカードから読み取られた私の名前が順番待ち一覧に追加されます。


そして、私の名前が合成音声で呼ばれたので向かってみると、ボックスに注文票の番号だけでなく名前も書いてあります。

一目でどれが自分の注文した料理なのかが視覚的にわかりやすくなっています。


私が注文したのはClifornia Poke Bowlという一番人気そうなメニューです。

アボガドや人参やフライを冷たく炊いた雑穀とぐちゃまぜにして上からタレをかけるプルコギのような料理です。温度はひんやりしていて、ヘルシーな味でした。とても美味しいというわけではないのですが、やりたいことがはっきりしていて、「こういうコンセプトなんだな」と納得はする味です。

また、全自動の販売機は日本の道の駅のフライドポテト販売機のように熱したジャンクフードを売っているイメージがあったのですが、この全自動とヘルシーの組み合わせは予想外でした。

しかし、この全自動のレストランは実は完璧ではありませんでした。

外にはこのように監視員が1人、使いかたが分からなくて戸惑っているユーザーを助けるために立っています。

不特定多数の人間に開かれていて、かつそのうちごくわずかな人でも困って詰まってしまうと成り立たない外食産業の場合、自動化のネックになるのは製造工程よりもユーザーインターフェイスであるといえます。

このように、Eatsaというサービスの要点としては

1.支払いがクレジットカード一択
2.インターネットを介したアプリとの繋ぎこみやユーザーインターフェースが練られている
3.ジャンクフード感を出さないために、ヘルシーなメニューにこだわっている
4.監視員がまだ必要で、完璧ではない

といった点があげられます。

そして、日本でこういった試みを行おうとするとどうなるでしょうか?

まず、クレジットカードでの支払いが普及していない東京では1の段階で困難に直面します。

頑張ったとしても、クレカと現金の両方が使える高価な機械(?)を用意し、その両方の整合性をとるために支払いを行ったユーザーに6桁の注文番号が記されたレシートを渡すような中途半端な仕組みになるでしょう。もちろん、現金を回収してまわる労力も必要です。

また、日本では自販機が20世紀中に諸外国よりも普及しきってしまっていてそのイメージが固定しており、インターネットを用いて遠隔から決算端末のソフトウェアを管理しバグを発見したり良いデザインのアイディアが思いついたら即反映するという開発も行いづらいのではないかと思います。

さらに、その結果出来たものに4のような瑕疵があることが明らかになるとサービスは完成してからリリースされるものだと考えている性善説的なユーザーから「こんなの全自動じゃない、嘘つき!」と批判されるのを恐れ方向性としての「全自動」というコンセプトすら打ち出すのをためらってしまうのではないでしょうか?

空港でUberを捕まえることから始まったアメリカ滞在は、見るもの全てが新鮮で、様々な着想を得ることができました。

我々は到着してからの二日間、市内を端から端までFordGoBikeで見て回り、観光を楽しみ、そして夜には自分たちが見たものについて夜中まで議論しました。

そして、週が開けた18日の月曜日、肉体的にも精神的に疲れた状態でDisruptSFを迎えることになりました。

ー③に続くー

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