今回サイトリニューアルに至った経緯と、いま mount が皆さまとどのような気持ちでものづくりをしていきたいと思っているかについて、代表取締役のイムに聞いてみた。
イムがインタビューの場に入った瞬間、不思議と独特な緊張感が漂った。威圧的とはまたちがう、こちらの背筋が自然と伸び、襟が正されるような感覚だ。それはきっと、イムが社員に向ける眼差しゆえだろう。誰よりも厳しく、そして誰よりも優しい。
「誠実さ」とは、きっとこういうことを指すのだと思う。言葉にすることから逃げない姿勢や、ものづくりへの実直な向き合い方そのものを見てもわかることだ。
この記事と今回のリニューアル後のウェブサイトを通じて、彼自身そして mount inc. の「誠実さ」の片鱗を感じていただけたら嬉しいと思う。
目次
次の世代へ、彼らが戦う「フィールド」を広げるために。
自分たちが何者であるかを伝える、スタート地点。
仕事に対する“あり方”、進めていく上での“やり方”。
芯を変えないために、“自分が”変化する。
基準を超える「環境」、限界を超える「機会」。
「示唆」を信じ、「視座」を託す。
デザインプラクティス(Design Practice)という言葉の意味
粘り強く、ものづくりに励む集団であれ。
最後に
次の世代へ、彼らが戦う「フィールド」を広げるために。
楠本:リニューアルのきっかけについて、改めて教えていただきたいです。
イム:大きく言うと「機会」をつくるためですね。
まず現実的な話をすると、「新しい仕事を獲得する、新しい人材を獲得する」ためのツールであることは変わりないと思っています。でもそれは、どの会社・どの組織においても必要なことだと思っているので、「何のためにそれをやるんだ」と考えた時に、機会をつくるためにリニューアルを決意したと言えます。
今弊社は、私を含めて16名が在籍をしています。5〜6年前から規模を20人にしたいと思いつつ、未だに達成してはいないのですが...
その中でも若い子たちが成長をして、結果も残しています。ポートフォリオを振り返った時に、その子たちが成長する姿を見ていると、やっぱり彼ら彼女らに新しい機会や新しい領域だったりを与えたいですし、本人たちからも「新しい領域にチャレンジしたい」っていう声をちらほら聞いています。
そういった意味で、自分たちのことを自分たちの言葉で“伝える努力”をしなければならない、と思ったんですよね。これが自分の中では一番、意味を持つ言葉です。
あとは単純に、時間が経ちすぎているという話もあります。ここまで大きくリニューアルすることは、9年ぶりぐらいなんじゃないかな?
楠本:そうですね。以前が9周年のときに大きなリニューアルをしているので、今回は丸18周年(19周年目)というタイミングですね。
自分たちが何者であるかを伝える、スタート地点。
イム:今まではあまり自社のウェブサイトでは自分たちのことを語っていませんでした。いまその必要を感じている理由が、実際「Webプロダクション」という風に思われてしまうと、私たちとしては幅が狭くなるなぁと思ったからです。
そもそも弊社は、「Web制作会社」という風に自分たちで語ったことは一度もなく、課題を解決する手段としてウェブサイトに限らずという考え方は常に持っていました。とはいえ、じゃあ世の中にある大きなデザイン会社、あるいはブランディングを主導する人たちのような、そこまでの力量だったり経験が自分たちにあるかというと、そうでもないと。 その間ぐらいに自分たちが存在していたとして、それを言語化して伝えなければならないと思いました。
振り返ると今までも、企業やブランドの根幹にある伝えるべきことだったり、言語化されてないものをちゃんと言語化しビジュアライゼーションすることだったりをしてきました。平易な言葉で表現すると「ブランディング」のようなことですね。
ただ、「ブランディング」という曖昧な言葉をあまり使いたくはなかったので、いままで語ってこなかったことを明言するタイミングだと思いました。そして、自分たちが明言することでより意識をすると思います。新しいフィールドや成長のスタート地点になれたらいいですね。
仕事に対する“あり方”、進めていく上での“やり方”。
楠本:サイト内で、一番見てほしい箇所・ページなど、こだわったなと思う部分があれば教えてほしいです。
イム:以前は「About」というページで自分たちの言葉として簡潔に語っていたものを、今回は「私たちについて」「サービス領域」「アプローチ」という3つに分けて、私たちの仕事に対する“あり方”、仕事を進めていく上での“やり方”を言葉にしています。
左から:私たちについて、サービス領域、アプローチ
中でも「私たちについて」というページがあるので、まずそこから見ていただき、クライアントになりうる方、就職しようと思う方に、どんな思いで、どんな態度で私たちが仕事しているかということを分かっていただけたら嬉しいですね。
そしてあえて、「サービス領域」という言葉を使って説明するページの中で、「クリエイティブプロデュース」「ブランド戦略」「プロダクション」つまりつくる部分と、「アドバイザリー業務」という継続的なコンサルやアドバイスができる関係性を持つというような、仕事のやり方を言語化しています。
実際にお会いする方々には同じ説明をしていましたが、今回からは会う前から表明をすることで、より私たちのことを理解してもらえるのではないかと思います。
ポートフォリオも、ケーススタディという形で今まで以上にちょっと厚みのある形でまとめているので、よりプロジェクトを知りたいと思う方にとってもより理解が深まるかもしれません。あと、メンバーの顔もしっかり見えるようにもしています。
左:ポートフォリオページ(ケーススタディ)
右:メンバーページ
楠本:ゆくゆくはマガジンページも作成し運用していきたいと思っていますよね。
イム:そうですね、マガジンも積極的に発信できたらいいなと思ってます。
mount は現在、SNSでの発信を積極的に行なっている。その内容は、日常的な投稿やツールの発信、案件の提案資料など多岐にわたっており、社内ですべて企画、実行、アップデートを繰り返し日々変化している。
▶︎ X (@mount_inc )
▶︎ Instagram (@mount_jp)
芯を変えないために、“自分が”変化する。
楠本:自社サイトをリニューアルすることで向き合った先に、改めて何か思ったことや気づきはありましたか。今回言葉の開発を行う際に、イムさんとマネージャー5名にもヒアリングを行っていると思います。そこから見えてきたものがあるのでしょうか。
イム:私は、mount はもはや自分の会社だとは思っていなくて、ここにいるみんなのものだと思っています。そうなれるように意識的に動いているところです。そして、烏滸がましいですが日本でも私たちみたいなやり方をするつくり手は、貴重な存在なんじゃないかとも思うので、文化みたいなものは「守りたい」と改めて思います。
今までずっと、良いものをつくるということを強く思い続け、良いものをつくるための環境をつくることも、自分の中では非常に強く意識してきました。その環境を「維持する」という意味で、一番必要なのはつくり手としての矜持。
「ものづくりって、デザインって、仕事って、こうあるべきだよね」というものが、mountメンバーそれぞれ近いところにあるんじゃないかと思います。 みんなスーパーマンではないし、何かを考えてパッと思いついてつくるようなタイプでもない、泥臭いというか洗練されたつくり方を私たちはしてないですね。
そう考えると、能力はそこまで高くないけれど、これだけ自信を持って世の中にプロダクトを出していける今の状態というのは、前述した通りそれぞれが矜持や意地みたいなもの、自分の中でこれだけは譲れないという意識がある。そういうものを体現してるのがこの場(mount)なんじゃないかと思っています。
改めて気づきというよりは、そもそも気付いていてやってきたことではあるけれど、一番難しいなと思うことが、「そういう真ん中の芯を外さずに維持する」ということです。維持するというのはつまり、変化するということですよね。芯を変えないために、自分たちが変化する必要がある。
まもなく弊社は、19年目を迎えます。
私が50代になり、スタッフたちも順に歳を重ね、また新しい世代が入ってくる。そうやって世代が入れ替わっても、私たちが大切にしてきたことが途切れず継承されて欲しいですね。このウェブサイトが、そのための確かな足掛かりになればいいと思っています。
基準を超える「環境」、限界を超える「機会」。
楠本:過渡期の今、具体的にどう進化・変化させようとしていますか。
イム:実はあんまりやり方が変わってなくて。
僕は自分に対しても言い聞かせているし、マネージャー陣にも、もちろん経営陣にも言い聞かせていますが、一番大事なのは「人」であると。
結局、自分含め成長をすることで、より良いものがつくれて、維持ができると思います。それで、人はどうしたら成長するのかを考えた時に、勝手に成長できるタイプがいますよね。それはまあ放っておけばいいんですけど、仮に勝手に成長することに対して緩やかではなくもう少し急激さを求めた時に何が必要かというと、その自分の基準を遥かに超えるような基準を持つ「環境」があるということと、自分が出来ると思うこと以上の「機会」だと思うんですよね。
私が常日頃意識しているのは、40代の米道や岡部、そして特に若手たちが持っている能力の「最大限のさらにちょっと先」までを引き出すことです。
そのためには、本人たちの「やってやろう」という気持ちがベースになければなりません。それは大きなハードルですが、そこに立ち向かわせる状況をつくることがすごく大事なんです。仮にコケそうになっても、バックアップし、奮い立たせ、なんとかゴールさせて「成功体験」を積ませる。
だからこそ、彼らに経験させるべき仕事を選ぶ必要があると思っています。
断続的であれ連続的であれ、挑戦し続けられる環境を作れるかは私の役目です。若手を何としても成長させるという使命感を持って取り組むことは、私のこれまでも、これからも変わらない信念です。
楠本:だからこそ機会をより増やすためにも、「語る」Webサイトにしたということですね。
「示唆」を信じ、「視座」を託す。
楠本:mountに限らずものづくりをしているみなさんは、自分自身で壁を乗り越えようともがき苦しみながら、日々追い込まれていると思います。
そのなかで、乗り越えることが難しい場面もきっとありますよね。社員が挫折をしたり乗り越えられそうにない時は、どうすればいいんでしょうか。
イム:それはもう、あの手この手ですよね。一つとは言えない。励ますことももちろんあるだろうし、一旦休ませることも、私に限って言うとめちゃくちゃ怒る時もあるかもしれない。
特に若い子たちは、答えが見えないから辛いんですよね。でも、マネージャーにしても私にしてもゴールは見えていません。だから非常にこの仕事はしんどい、逆に言うとそれが面白い。正解がわからないし、見えないですから。それに挫折してもいいんですよ、次またやればいい。
みんなにはたまに言うけど、例えばこうトレーナーとトレーニングを行っている人との関係で言ったら、限界値というのは必ずありますよね。その限界値を誰が決めるんだって時に、やっぱり自分は自分に甘いから歩みを止めちゃうんだけど、「もうちょっといけるいける」って示唆してくれる人が隣にいる/いないでは全然違います。
そのとき、まず「示唆」だったりあるいは「視座」を与えてくれる人のことを与えられてる側は、信頼すべきです。「この人がこう言うんだから間違いないはず、ちょっと納得できないしよく分からないけど、まあやってみる」みたいに。
あとは、教えるあるいは導く方もそのスタッフたちに対して、「信じる心」を持つことは大事です。人に頼むことは、そんなに簡単じゃないですよね。特に自分がバリバリできてるっていう時期なら尚更そうでしょう。でもね、それを信じて託して自分がどんなフィードバックをしても、それに対して応えてくれるはずであるということを信じていないと関係性は成立しないですね。お互いに信頼するということは大事です。
デザインプラクティス(Design Practice)という言葉の意味
楠本:mount って、改めてどういう会社なのでしょうか。
イム:「デザインプラクティス(Design Practice)」という言葉をサイト内で使っています。日本国内だとあまり馴染みがない言葉ですよね。最初は「クリエイティブエージェンシー」と名乗るべきかなとも思いましたが、少し違和感があるなと思い、いろいろ探してた時に「デザインプラクティス」という言葉に出会いました。
いわゆる私たちがよく知る単語の意味だと「修練・練習」などだと思いますが、デザインスタジオという言葉の代わりにデザインプラクティスという言葉があるみたいです。どちらかというと、何かを与えられたまま作業する感覚というよりかは、自分たちが追い求めるデザインに向き合う、あるいはものづくりに向き合う「態度」や「主義」みたいなものが含まれています。
それらを持った上で、しっかり実現するためにデザインというものを行う集団という意味で、私は使いたいと思っています。
一つ何かをつくるにしても、ちゃんと共感、コミット、自分事化しお客さまからの言葉を先に組み立てるやり方は、意味のないものをつくりたくないから、というのもあります。お金をいただいてつくるものですから、社会的な責任があります。しっかり論理的に成立してるものをベースとしてつくりたい、という思いが強いです。
いずれにしても、理屈っぽく聞こえるかもしれません。理屈と言われたとしても私たちはそれを大事に思いたい。世の中に作ったものを送り出す時に、届く形であるものという事に対しての確信を持つためにもその論理は私たちにとって大事です。
粘り強く、ものづくりに励む集団であれ。
楠本:そんなmount としての今後の展望、目標や夢のようなものがあるのか気になります。
イム:繰り返しになりますけど、やはり一番大事なのは人です。あと、人との出会い。
「人」というのは、私からするとスタッフです。スタッフの成長が何よりもマウントにとって重要なものだと思っています。その成長をするためにはどうしても機会が必要ですから、ただのウェブ制作会社というイメージをまずは払拭し、所謂ブランディング的なことも含めフィールドを拡張しつつ結果を出して、より軽やかな集団でありたいと思います。
領域を拡張しても粘り強くものづくりに励んでいく、そういった集団であり続けたいなと。
楠本:すごく極端な話ですが、例えば10年後、今の根本的な思いだったりは変わらず、ウェブサイトを作っていない集団になっていたとしても良いと思っていますか?
イム:僕は、領域はなんだっていいと思っています。私たちの強みである「ウェブサイトをつくる」という仕事は非常に、リアルなプロダクトや建築的な仕事など、あらゆるプロジェクトの縮図のような側面がある。このプロダクション業務をやり切れる力は、他のどんな領域でも十分に通用しますし、圧倒的なアドバンテージになるはずです。
だから、他に面白い機会があれば、その時々で挑めばいい。一番大事なのは、僕らが「ものづくり」をし続けていることですから。
楠本: では今後も、新しい機会が何かしら増えるといいですね。
イム: ぜひ作っていきたいですね。それがいつでもできる状態にはしておきたいと思っています。
楠本:これは余談ですが、
今後どういう会社さんなんですかって聞かれた時、デザインプラクティス会社ですってスタッフは言うようになるんでしょうか (笑)
イム:それはデザイン会社でいいんじゃない(笑)
楠本:でも、コミュニケーションとしては良い引っ掛かりになりますよね。
イム:そうだね、「どういう意味なんですか」って聞かれた時に答えられるといいね。自分たちのことを知ってもらって、いずれはそうやって質問されなくなるまでになるといいけどなあ。
最後に
イム:ぜひサイトをくまなく見ていただいて、仕事をください!あと、就職の検討もお願いします。
リニューアルしたmount サイト
▶︎ mount.jp
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▶︎ https://mount.jp/inquiry
Credit
スピーカー: イム ジョンホ(mount inc.)
文・インタビュー: 楠本 莉沙(mount inc.)
写真: 渡辺 俊(mount inc.)