「最初はヨガ事業の立ち上げを断ったんです。セラピストの仕事が、本当に楽しかったので」
入社して間もない頃、未経験だったヨガ事業の立ち上げを打診された古田。一度は断ったものの、数時間後には自ら社長(現・会長)のもとを訪れ、「やります」と伝えていました。
「自分が断っても、きっと誰かがやる。こんな機会は、もう来ないかもしれない」。そう考えた古田は、「背中の扉を閉めて」前に進むことを決意したといいます。
セラピストとしてアルバイト入社して、今年で22年目。ヨガ事業の立ち上げや店舗運営、育成、事業撤退、新規事業「WECLE(ピラティス専門店)」立ち上げを経験し、現在は統括マネージャーとして全国23店舗を支えています。
最初から管理職を目指していたわけではない彼女が、なぜ事業全体を動かす立場へと歩みを進めてきたのか。その背景には、現状維持より挑戦を選択した人に次の機会を任せる、そんなnobitelの文化がありました。
プロフィール/キャリアステップ
- 2005年 セラピストとしてアルバイト入社
- 2006年 正社員となり、ヨガ事業の立ち上げに参画
- 2006年〜 ヨガ1号店の店長、統括店長、育成トレーナー、マネージャーを経験
- 2020年 ヨガ事業の撤退後、ピラティス事業「WECLE」の立ち上げに参画
- 2026年〜 WECLE事業部 統括マネージャー
- 現在 全国23店舗の運営支援、採用・研修、物販の企画・開発などを担当
「好きな仕事がしたい」が、きっかけ。
nobitelに入社する前は、冬になると雪山へ行き、リゾートバイトをしながらスノーボード中心の生活を送っていました。充実した日々ではありましたが、20代半ばになった頃、「そろそろ地に足をつけて働こう」と思うようになったんです。
大学では体育学部に所属し、バスケットボールを10年間続けていました。身体を動かすことや健康にはもともと興味があったので、仕事を探す中でセラピストという職種を知り、アルバイトとして入社しました。
実際に始めてみると、ボディケアの仕事が本当に楽しくて。自分が学んだ技術で、お客様の身体が楽になる。「ありがとう」と言っていただける。その反応を目の前で感じられることが、すごくうれしかったんです。
もっと技術を身につけたいと思い、練習にも夢中になりました。当時は、長く働くことや管理職になることなんて考えていませんでした。ただ、セラピストとして、お客様に喜んでいただくことに一生懸命でした。
今は直接対応する機会こそ減りましたが、お客様により良い時間を届けたいという気持ちは、あの頃から変わっていません。
背中の扉を閉めた日
入社して間もない頃、会社が新しくヨガ事業を始めることになり、その立ち上げを任せたいと声をかけてもらいました。でも、最初は断ったんです。
ヨガの経験はなかったし、何よりセラピストの仕事が楽しかった。もっと技術を学びたいという気持ちが強くて、新しい事業へ移ることをすぐには受け入れられませんでした。
ただ、一度持ち帰って考えるうちに、気持ちが変わっていきました。私が断っても、きっと誰かが担当する。新規事業をゼロから立ち上げる機会は、これから先、何度も巡ってくるものではないかもしれない。そう思ったら、やってみたい気持ちが湧いてきたんです。数時間後には社長(現・会長)のところへ行き、「やります」と伝えていました。
私は何かを決めるとき、「背中の扉を閉める」と考えることがあります。逃げ道を残したままだと、苦しくなったときに戻りたくなる。自分でやると決めたなら、後ろの扉を閉めて、前へ進むしかない状態をつくる。目の前にあるチャンスを逃したくなかったんです。
店長の先に見えた景色
ヨガ事業の立ち上げが決まってから、まずは自分自身がヨガを学ぶところから始めました。いろいろなスタジオへ足を運び、レッスンを受け、サービスの違いを調べました。
どんなプログラムならお客様に選んでいただけるのか。どう店舗を運営し、集客していくのか。正解が分からない中で、一つずつ形にしていきました。
1号店の店長を任せてもらいましたが、オープンすれば自然にお客様が集まるわけではありません。チラシを配り、新しいレッスンプログラムを考え、前後で身体の変化を実感していただける仕組みをつくる。本当にいろいろなことを試しました。
店舗が増えるにつれて、自分の役割も変わっていきました。最初は、自分がお客様にサービスを提供する仕事。その次は店舗全体を見る仕事。さらに、メンバーに技術や接客を伝え、複数の店舗を支える仕事へと広がっていきました。
自分一人ができるだけでは、事業は大きくなりません。同じ考え方や技術をメンバーへ伝え、それぞれの店舗でお客様に届けてもらう。関わったメンバーが活躍する姿を見ることに、現場とはまた違う喜びを感じるようになりました。
厳しいときこそ、前を向く。
最初から順調だったわけではありません。オープンから1年半ほどは赤字続き。集客のために施策を重ねても、なかなか結果につながらない時期がありました。
それでも、昨日と同じことを続けるのではなく、「次は何を変えるか」を考え続けました。プログラムやサービスの伝え方を見直し、回数券中心の仕組みから月額制へ移行する。試行錯誤を重ねた結果、少しずつ事業が安定し、黒字化することができました。
nobitelでは、挑戦した結果の失敗を責められることは、あまりありません。同じ失敗を繰り返すのは違いますが、考えて行動した結果であれば、そこから何を学び、次にどう活かすかを見てもらえる。反対に、結果が出ていないのに、何も変えずに止まっていることのほうが厳しく問われます。
DNA検査の結果を活かしたフィットネスサービスなど、うまくいかなかった企画もありました。当時としては画期的な取り組みでしたが、お客様へ価値を伝えきれず、大きく育てることはできませんでした。
それでも、挑戦した経験は残ります。何がお客様に届かなかったのか。時代に対して早すぎたのか。サービスの設計や伝え方に課題があったのか。失敗も含めて、今の判断につながっていると思います。
15年育てた場所を閉じる
ヨガ事業は、約15年間続きました。長く通ってくださったお客様の中には、1号店のオープン当初から利用してくださっていた方もいます。私自身が入会をご案内し、それから何年も生活の一部として通い続けてくださった方もいました。
だからこそ、事業からの撤退が決まったときは、本当に苦しかったです。経営上の判断として必要なことは理解していました。続けることだけが、必ずしも正しいわけではありません。
それでも、お客様にとって習慣になっていた場所をなくしてしまうことや、一緒に働いてきたメンバーを考えると、申し訳なさが残りました。
この経験を通して、新しいサービスは、始めるだけではいけないと思うようになりました。お客様が生活の中に取り入れ、通うことを習慣にしてくださる。その場所を守るには、良いサービスを届けるだけでなく、売上や利益をつくり、持続可能なビジネスモデルを構築する必要があります。
事業が続かなければ、お客様へサービスを届け続けることも、メンバーが働き続けることもできない。そのことを、自分の中に深く刻んだ経験でした。
ゼロから、もう一度
ヨガ事業の撤退前から、新たな事業として準備を進めていたのが、ピラティス専門店のWECLEです。ヨガ事業で得た経験を活かし、今度こそ長くお客様に通っていただけるサービスをつくりたい。そんな気持ちで立ち上げに関わりました。
ところが、1号店の内装が完成し、いよいよオープンという時期に、新型コロナウイルスの感染が拡大しました。緊急事態宣言が出され、店舗は完成しているのに開けられない。オープンは3〜4カ月ほど延期になりました。
先が見えない状況でしたが、準備を止めるわけにはいきません。メンバーとはリモートで勉強会を行い、サービスや身体について学んだ内容を何度も確認しました。お客様をお迎えできる日が来たとき、きちんとサービスを届けられる状態でいようと準備を続けました。
三軒茶屋に1号店をオープンすると、30分で通えることや、予約なしで利用できる仕組みが当時の生活様式にも合い、比較的早い段階で手応えを感じることができました。
ただ、1店舗がうまくいけば終わりではありません。どの店舗でも同じようにお客様へ価値を届けられるのか。事業として長く続けられる仕組みをつくれるのか。ヨガ事業で得た学びを、WECLEでは最初から大切にしています。
現場を知る人が、本部にいる
現在、WECLEは全国に23店舗あります。私は統括マネージャーとして、店舗運営の支援や採用、研修の仕組みづくり、物販商品の企画・開発などに関わっています。
自分が店舗でお客様を担当していた頃と比べると、仕事の届く範囲は大きく変わりました。本部で考えた施策を23店舗のメンバーが実行し、その先にいるお客様の反応が、現場からの報告を通して返ってくる。
自分が直接サービスを提供するのとは違いますが、より多くのお客様に影響を届けられることに、今の仕事のやりがいを感じています。
一方で、管理職になったからといって、現場から離れたいとは思っていません。店舗で困っていることがあれば足を運び、必要であればマシンを修理することもあります。
現場を経験してきたからこそ、メンバーがどこで困るのか、お客様が何を感じるのかを想像できる。本部で仕組みを考えることと、店舗で起きていることを知ること。その両方を大切にしたいと思っています。
私たちが目指す未来
WECLEが目指しているのは、単にピラティスを提供する店舗を増やすことではありません。身体を動かすことが日常の一部になり、お客様が健康でいられる習慣をつくる。そのきっかけとなる場所を、もっと多くの地域に届けたいと考えています。
どの店舗へ行っても、明るく、親しみやすく、お客様に寄り添ったサービスを受けられる。そのためには、店舗が増えても変わらない基準をつくらなければなりません。採用や研修に関わっているのも、そこで働くメンバーがWECLEらしいサービスを届けられるようにするためです。
目標は1000店舗。23店舗まで来ましたが、1000店舗という数字から見れば、まだスタートラインに立ったばかり。事業も私自身も、まだまだ変わっていかなければなりません。
誰かの未来になれたなら
これまで、管理職になることを目標にして働いてきたわけではありません。セラピストの仕事が楽しくて、その後は新しい事業を任せてもらい、店長や育成、マネジメントと、目の前の役割に向き合ってきました。振り返ってみたら、仕事の範囲が広がり、今の役職にたどり着いていたという感覚です。
最近は、後輩の女性社員から、キャリアの参考にしていると言ってもらうことがあります。ロールモデルになろうと思って歩んできたわけではないので、少し不思議な気持ちです。それでも、「こんなキャリアがあるんだ」と感じてもらえるのであれば、うれしいですね。
現場でお客様に向き合う仕事には、大きな魅力があります。一方で、長く働く中で、この先も同じ働き方を続けるのか、不安を感じる人もいると思います。
現場経験を活かして店舗を運営する道もあれば、人を育てる道、新しいサービスをつくる道、事業全体を支える道もあります。私自身がそうだったように、最初から将来の姿が見えていなくてもいい。目の前に現れた機会に挑戦することで、初めて見える景色もあります。
背中の扉を閉め、ともに前へ
私が入社したときは、22年後もこの会社にいて、統括マネージャーとして事業に関わっているとは想像していませんでした。
明確なキャリアプランがあったわけでも、最初から何でもできたわけでもありません。分からないことを学び、うまくいかなければやり方を変え、そのとき任された仕事に向き合ってきました。
最初から、自分の将来を決めなくてもいいと思います。「面白そう」「やってみたい」と思える機会が来たときに、一歩踏み出してみる。やると決めたら、背中の扉を閉めて、前に進んでみる。
私自身も、まだ挑戦の途中です。WECLEをより多くの地域に届け、お客様の健康習慣を支えること。そのために、これから出会う皆さんとも、新しいサービスや仕組みをつくっていけたらうれしいです。
NEXT
次回は、Dr.stretch●●店の店長として現場を率いる●●さんにお話を伺います。