2020年の創業から5年9ヶ月。NOT A HOTELは、全国9拠点の開業、オーナー数1,000名突破、そして現在進行中のプロジェクトが29拠点にのぼるなど、ホテル開発という時間軸の長い事業において、着実に歩みを進めてきました。
そして2026年1月7日、今後の事業成長に向けた体制強化として、創業者の濵渦 伸次と、CFO兼CSOである江藤 大宗による共同代表体制(Co-CEO)への移行を発表しました。
なぜ今、このタイミングで体制変更を決断したのか。「Chief Visionary」としてビジョンやブランドの進化を担う濵渦と、「Chief Strategy」として経営戦略を担う江藤。二人の代表に、新たな経営体制に込めた考えや、創業から5年9ヶ月の歩みについて話を聞きました。
目次
- 成長を加速させる「二機のエンジン」
- 「自分たちがやられて嫌なこと」を自らやる
- ブランドづくりは「リレー」そのもの
- 採用情報
成長を加速させる「二機のエンジン」
━━━ まず最初に、共同代表体制の意図を濵渦さんから伺えますか。
濵渦:創業から約5年9ヶ月、僕たちは全国9拠点を順次開業してきました。まだ道半ばではありますが、多くの方々に支えていただきながら、一定のスピード感を持って取り組んできた実感があります。
一方で、現在進行中のプロジェクトは、未公表のものも含めて29拠点にのぼります。これからの数年でこれだけの拠点をかたちにしていくことは、これまで以上に難易度が高く、会社にとって大きな挑戦だと受け止めています。
濵渦 伸次:国立都城高専電気工学科卒業。2007年株式会社アラタナを創業。2015年M&Aにより株式会社ZOZOグループ入り。株式会社ZOZOテクノロジーズ取締役を兼任。2020年4月1日NOT A HOTEL株式会社を設立。2026年1月、代表取締役(Co-CEO) / Chief Visionaryに就任。
濵渦:土地の仕込みから建築、ソフトウェア開発、そして実際の拠点運営に至るまで、通常であれば複数の企業が担う領域を、僕たちはできる限り自社で一貫して取り組んできました。建築チームだけを見ても内定者を含め86名体制で、関わる人やプロセスは年々複雑さを増しています。
こうした状況のなかで、一人のCEOがすべてを抱え続けることは、効率面だけでなく、経営上のリスクという観点でも改善の余地があると考えるようになりました。ここからさらに成長を加速させるために、エンジンを一機から二機にする。
その決断に至ったのは、昨年の初め頃のことでした。
━━━ 最初に江藤さんに相談されたのは2025年の夏頃だったとか。率直にどんな感想を抱きましたか?
江藤:最初の印象は「事業のステージがここまで来たんだな」でした。濵渦さんはもともと一人で見れるキャパシティが非常に広い方ですが、それでも今のNOT A HOTELは、当初の事業計画以上に密度が濃く、複雑になっています。描いた理想を落とし込んでいくペースを考えると、納得感がありました。
江藤 大宗:慶應義塾大学卒業。JPモルガン証券株式会社にて投資銀行業務に従事。2020年8月、NOT A HOTELに参画。執行役員CFOを経て、2024年1月、NOT A HOTEL2nd 代表取締役CEOに就任。2025年4月、NOT A HOTEL上級執行役員 CFO兼CSOに就任。2026年1月、代表取締役(Co-CEO) / Chief Strategyに就任。
━━━ 役割として、濵渦さんは「Chief Visionary」、江藤さんは「Chief Strategy」とそれぞれ定義していますよね。
濵渦:僕はクリエイターではありませんが、ビジョンを実現するためにクリエイティブ全般にコミットし、一つのプロダクトにまとめ上げていく。なので「ビジョナリー」としました。ムネ(江藤)は「ストラテジー」、主に経営戦略を担う役割ですね。
ただ、役割を“分ける”というよりも同じ会社を「別の視点」で見ているのが僕らの特徴かなと思っています。創業者という意味では僕ですが、実際はほぼ二人で動いてきた感覚があって、最初からすごく近い距離で試行錯誤してきました。
━━━ よくある体制で言うとCEOとCOOのように「意思決定」と「オペレーション」を分けていくやり方もあったと思います。
濵渦:僕らの場合は、そこをきれいに線引きすると、かえって良くないんじゃないかと感じていて。見ている領域はかなり重なっているんですよね。意思決定も、どちらか一方が担うというより、2人とも当事者として同じテーブルでしっかり向き合って決めていく。そのうえで、違う角度から会社やプロダクトを見ていきたい。
江藤:僕もまさにその感覚です。僕が意識しているのは、同じ対象を「別の角度」から見て、意思決定の精度を上げること。一つの判断に対して、構造面・実行面・リスクの出方まで含めて問い直し、必要なら前提から組み替えていくイメージです。
そのうえで「ストラテジー」は、各チームや事業の仕組みを紙とペンだけで書ける状態まで「可視化」する。そして、NOT A HOTELとしてのビジョンを実現するために、可視化したものを短期・中期・長期の波長に合わせながら、繋ぎ合わせていく。その役割だと捉えています。
濵渦:戦略を立てるだけでなく、それを泥くさく実行し、実現まで担える人は多くありません。ムネはそれができる人なので、信頼して任せられています。今だから言えるけど、ムネに「CFO」という肩書きは、正直あんまり似合わなかったよね(笑)。
「自分たちがやられて嫌なこと」を自らやる
━━━ 創業から伴走してきた江藤さんから見て、濵渦さんはどんな経営者ですか。
江藤:濵渦さんは「つくりたい世界(ビジョン)」が明確にある経営者。それは単に便利なサービスをつくるということではなく、自分たちや周りの大切な人たちの生活が、明らかに豊かになっていく実感が持てる未来の絵なんです。
世の中には、社会のためにはなっても、自分たちの暮らしがどう変わるかイメージしにくい事業も多い。ですが、NOT A HOTELが向き合っているのは、自分たちの人生を直接ワクワクさせてくれるプロダクトです。そのビジョンを起点に、建築、ソフトウェア、ファイナンス、食まで360度すべての領域を、ズレがないよう高い解像度で見抜いていく。この「正解のない複雑な問いを解き明かす力」は、最初から今までずっと学び続けている部分です。
濵渦:今の僕たちのフェーズで「任せる」という言葉を安易に使っちゃダメだと思ってるんです。全体で400人を超える組織になっても、ソフトウェアチームは約50人、セールスチームは約40人。一つひとつのチームはまだまだ超スタートアップなんです。だからこそ、今はトップ自らディテールを見ていく必要があると考えています。
2026年1月時点、400名を超える仲間でNOT A HOTELを手がけている
━━━ 創業から5年9ヶ月が経ちましたが、経営するうえでターニングポイントになった決断はありますか。
濵渦:やっぱり最初の物件(AOSHIMA・NASU)が建った時ですね。自分たちの想像を遥かに超えるものができ上がった。実物を見て「これはいける、自分も欲しい」と確信できたんです。そこからISHIGAKI、SETOUCHI、そしてこれからのTOKYOへと拠点を拡大するなかで、挑戦のキャップ(蓋)を外し続けてきました。やりすぎた時に自分たちのキャップが毎回外れていて、できた時にホッとする。その繰り返しです。
NOT A HOTELにとって原点と呼べる「NOT A HOTEL AOSHIMA」
江藤:ISHIGAKIのプロジェクトは象徴的でしたね。構想当初、僕は採算を考えて広大な敷地に10棟建てる提案をしましたが、濵渦さんは「一棟でチャレンジしたい」と言ったんです。結果、日本、いや世界にもないフラッグシップが生まれました。
濵渦:僕の一番強い戦術は「自分がやられたら嫌なことを自分でやる」なんです。僕らが一番脅威に感じるのは、真似をされる事より、自分たちよりワクワクするものを誰かにつくられること。だから、誰にも真似できないレベルの挑戦を自分たちで先にやる。それによってブランドの「モート(堀)」を築いてきました。
藤本壮介氏が表現する“もう一つの地球”「NOT A HOTEL ISHIGAKI EARTH」
ブランドづくりは「リレー」そのもの
━━━ 会社組織についても触れていきたいと思います。今回の体制変更によって、NOT A HOTELの組織はどう変わっていくのでしょうか。
濵渦:僕は、NOT A HOTELのブランドづくりは「リレー」だと思っています。土地探しから建築、セールス、サービス、そしてチェックアウトに至るまで、どこか一つのチームが秀でていても意味がない。誰か一人がバトンを落とした瞬間、ブランドは毀損し、最悪の場合、事業が終わってしまうリスクだってありえます。
組織が大きくなるほど、このバトンの受け渡しは難しくなる。だからこそ、隣で走る走者の目を見て、どれだけ大変そうか、どれだけ頑張っているかを肌で感じる。そうすることで初めて「丁寧にバトン(仕事)をつなごう」という気持ちが芽生えると思うんです。
土地探しからチェックアウトまで、ワンチームで一つの体験を手がけている
濵渦:僕たちがいま、オフィスで働くことを大切にし、現場の空気を重視しているのも、「バトンパスを丁寧にしよう」という姿勢を育み、プロダクトへの愛情を深めるためでもあります。
江藤:僕の言葉で言う「見える化」も、突き詰めればそこに繋がります。各チームが追う目標(KPI)を分かりやすく(単一に)し、手が触れ合う距離でしっかりとバトンを渡せているか。走者間隔が狭くなり過ぎていて、スピードに乗り切る前にバトンを渡させていないか。経営としてそこを可視化し、一人ひとりがバトンを持って走りやすいポジションを整えていく。
今回の体制変更で、僕ら二人がより細かく現場を見るというのは、「自分もバトンを握っている」という感覚を、メンバー全員が持てる組織にしたいという意思表示でもあります。
━━━ 大きく組織が変わるようで、実は大事な部分は変わらず、むしろ密度を高めていくということなんですね。
江藤:それは社内外問わず同様です。これからは、大きな企業や銀行、デベロッパーの方々と連携する機会もより増えていきます。NOT A HOTEL 2nd(セカンダリーマーケット)やNOT A GARAGE(モビリティサービス)など、事業の幅は広がっていますが、根底にあるのは「日本の価値を上げる」というミッションです。ここに共鳴してくれる方々と連携を深め、さらなる安心感とワクワクを届けていきたいですね。
濵渦:NOT A HOTELのオーナーのみなさんには、僕が「つくる側」によりフォーカスすることで、もっとワクワクするプロダクトを届け続けると約束したいです。一方で、事業としての基盤づくりや仕組みの整備はムネが担っていく。二機のエンジンで、これまで以上に「NOT A HOTELらしい」プロダクトづくりに真っ直ぐに向き合い続けていきます。
これからのNOT A HOTELにも、ぜひ期待してください。
採用情報
現在、NOT A HOTELでは建築やソフトウェアをはじめ、複数ポジションで採用強化中です。カジュアル面談も受け付けておりますので、気軽にご連絡ください。