1
/
5

人と土地への想い、超高速スケジュール、トップクリエイターとの協働…NOT A HOTEL ARCHITECTSが初めて明かす“建築秘話”

さまざまなテーマでNOT A HOTELをブレイクダウンするイベント「NOT A HOTEL TALK」。第10回は建築チームの視点で「NOT A HOTELのつくり方」に迫ります。

開催当日、静かな熱気に満ちた会場には、約30名の参加者のみなさんにお集まりいただきました(満員御礼)。司会の「設計ノウハウのように実務的な話ではなく、建築や土地へのこだわりなど、ここでしか話せない裏話をお届けします」という言葉から、総使用スライドが174枚にも及ぶ熱量のこもったイベントがスタート。

まだ世の中には出ていない、NOT A HOTEL建築チームによる「NOT A HOTELの建築秘話」を余すことなくレポートします。



イベントは「NOT A HOTEL EXCLUSIVE ASAKUSA」で開催された

NOT A HOTEL ARCHITECTが大切にする5つのこと

まずは建築チームが仕事をするうえで大切にする5つのキーワードを、建築チームの責任者である綿貫將が紹介。「NOT A HOTELらしい建築」を実現するために必要なルールに迫ります。

1.絶景と出会い、人と土地の想いを繋ぐ

「僕らはプロジェクトのごく初期の段階から、その土地の地主さんと深くお話をしたり、地域の方々と交流したりしています。出会った土地が持つ想いをどう広げていくか? 未来にどう繋いでいくかを考えるところから、NOT A HOTELは始まるんです」

2.「あたらしい暮らし」を設計する

建築とは通常、用途を限定して設計するものだ。しかしNOT A HOTELの用途は、ホテルでも自宅でも別荘でもある。「“あたらしい暮らし”に基づいて、建物や体験の前提すら、自分たちで最適な解を考えます。家具・カトラリーの設計やSmartHomeとの連携も、その考えの延長上にあるんです

3.多様なプロフェッショナルとの協業

社内外を問わず、プロジェクトメンバーと濃密に連携するのも特徴のひとつ。「建築や体験をより良くする工夫を、社内にいるITエンジニアから財務、営業、シェフに至るまで部署を横断してみんなでフラットに意見を交わし合い、深めています。著名な建築家などトップクリエイターと協業するときも同様です。プロフェッショナルの視点を紡ぎ合わせ、彼らとNOT A HOTELが組むからこそできるものづくりを追求しています

4.1/2 3/5 200

スクリーンに映し出されたこの3つの数字は、建築チームがすべてのプロジェクトを始めるときに掲げる数値だ。「スケジュールは従来の1/2に、開発コストは3/5に。それでも利用者満足度は200%を目指しています。この数値目標にコミットしてプロジェクトを推進することが、NOT A HOTELらしさに直結すると思っています」

5.すべての常識を超えていく

独立を志すメンバーも少なくないNOT A HOTEL。だからこそ、今ここでしかできないことに向き合っている。「代表の濵渦さんはよく『独立後、自分の会社でやれることをNOT A HOTELでやってもつまらない。今、うちでしかやれないこと、こだわって考えていこう』と言いますが、まさにそのとおりです。自分一人ではできないこと、まだ想像もできないようなものを、僕たちNOT A HOTEL建築チームではつくっていきたいと考えています」

綿貫 將:芝浦工業大学大学院修了。日建設計にてホテル、オフィス、美術館、図書館、スタジアム、銀行、研究所、データセンタ案件の設計に従事。21年6月NOT A HOTEL参画。

NOT A HOTEL ARCHITECTを知るためのキーワード

綿貫が共有した「NOT A HOTEL ARCHITECTが大切にする5つのこと」を踏まえ、いよいよパネルトークがスタート。事前に練り上げられた12個のテーマを元に、会場に集まった参加者の希望に応えながら、話題を深掘りしていく。

NOT A HOTEL ARCHITECTが語り尽くしたいテーマとして、12のパネルを用意

土地に根付くことで拓かれる、NOT A HOTELの可能性

まずリクエストが挙がったのは、「土地」にまつわるパネル。「僕らは地元の方々との交流を深め、歴史や魅力を理解して設計に落とし込むことを大事にしている」と、プロジェクトマネージャーの齊藤有一が話し始める。

(中央)齊藤 有一:明治大学大学院修了。竹中工務店にてホテル、劇場、映画館、商業施設、空港、大規模再開発、オフィスビル、研究所などの建築設計やインテリアデザインに従事。23年1月NOT A HOTEL参画。一級建築士

齊藤:たとえばいま、瀬戸内海にある離島で、ビャルケ・インゲルス氏率いるBIGとの協業プロジェクトを進めています。この島は人口600名ほどの、コンビニもない静かな島。そんな土地に宿泊施設が建設されるとなると、身構えてしまう島民の方は当然少なくありません。でも、僕らは単に施設をつくるだけでなく、NOT A HOTELの存在によってその島や土地が魅力を増す未来まで考えていきたいと思っています。そんなことを、島に住む方々と交流しながら丁寧にお伝えしていく。そのうちに島の方々も自分たちの想いを語り、僕らのような新しい観光産業がやってくることに希望を持ってくれました。

島民の方がスイカを振る舞ってくださった際の一枚。「自分たちを知っていただく前に、自分たちが島の歴史や文化を知る必要があると思うんです」と齊藤は話す

齊藤:もうひとつの例は、8月に販売を開始した群馬県みなかみ町の「NOT A HOTEL MINAKAMI TOJI」です。設計の前段階から現地に何度も足を運び、地元の町内会でクマやイノシシをごちそうになったりしながら、たくさんのお話を伺いました。

齋藤がイノシシのお肉をご馳走になった時の一枚

みなかみ温泉はかつてとても栄えた温泉街でしたが、いまは当時の活気が少しずつ薄れてしまっています。そこで僕らが掲げたのは「新しい現代の温泉集落」というコンセプト。それが、“NOT A HOTELができることで変えられる未来”だと考えました。

歴史と風情がある水上温泉

綿貫:「TOJI」の土地にはバブル崩壊前、高層のリゾートマンションが建てられる予定があったんです。でもその計画がなくなってからは、長年土地が活用されていない状態でした。見晴らしやアクセス面などの魅力が溢れているにもかかわらず眠り続けるこの土地を、どうすればまた使ってもらえるようになるだろうか……そんな考えが構想の出発点でした。そもそも従来の別荘というものも、年間20日くらいしか使われないのに管理費や維持費に加えて、建物の修繕費などがかかってくる。それを打破するためにシェアの仕組みを設けたのがNOT A HOTELで、那須や青島のように高い年間稼働率を維持すれば、常に人が滞在している「生きた」場所であり続けることができるんです。「TOJI」の土地も同様に、僕たちがうまく活かすことができれば、「新しい現代の集落モデル」をつくれるのではないかと考えています。

群馬県みなかみ町の「NOT A HOTEL MINAKAMI TOJI」のパース

爆速スケジュールの裏側ーー意思決定スピードとAI活用

次に会場が注目したテーマは「スケジュール」。通常の1/2のスピード感が実現している理由は「意思決定の速さ」と「建築テックの活用」だと、建築デザイナーの杉山竜は語る。

杉山 竜:県立大宮工業高校卒。池下設計にて現場管理従事後、CTSにてホテル、オフィスビル、大規模再開発案件の意匠設計に従事。23年1月NOT A HOTEL参画。一級建築士。パーマカルチャーデザイナー。

杉山:NOT A HOTELではSlack(メッセージングアプリ)が常に動いているし、いつでも誰でもCEOの濵渦さんと直接やりとりができます。「こんな計画で進めたいです」と濵渦さんに相談すると、ほぼ数十秒で何かしらのリアクションがあるということも珍しくありません。すごいスピードで意思決定がなされていくんです。その判断を支えているのは、ビジュアルの素早い共有。普通に設計してデザインして3Dをつくって……とやっていると、絵をつくるだけでも時間がかかってしまいます。でもAIを活用すれば、初期段階の壁打ちが爆速で進む。いまでは、プロジェクトが始まった翌日や翌々日にはデザインの方針が決まり、一週間後には事業計画ができ上がるくらいのスピード感でスケジュールが組まれていきますね。

誰もがわかりやすい3DやCGをつくることで、社内のセールスやビジネスチームに共有し、意見をもらうのもスムーズです。プログラミングによるパラメトリックモデリングで塀の高さや範囲を検証したり、BIM+リアルタイムレンダリングを活用し窓からの景色を考えたりもします。さまざまなテックによってビジュアル化する時間をできるだけ減らし、社内外と迅速に意思疎通するのが肝ですね。

プログラミングによるパラメトリックモデリング+リアルタイムレンダリングで塀のデザイン検証

綿貫:一般的なリゾート開発では、設計事務所に依頼する前段階の事業構想だけでも、一年くらいはかかるものあると思います。でもNOT A HOTELでは、土地を見つけてから販売開始までわずか一年ほど。そのスピードを実現するためには、チーム内で具体的なキャッチボールができる状態をとにかく早く整えることが大切なんです。だからこそ僕らは、初期段階のCGパースを自分たちでつくります。どんな体験を生み出そうとしているのか、僕らの解像度で一番早く伝えられる手段だと思いますね。

須磨:設計がピークのときには、週に数回のペースで打ち合わせもしますね。いま進めている「NOT A HOTEL ISHIGAKI(石垣島)」では、建築家の藤本壮介さんとご一緒しているのですが、ミーティングには藤本さんも濵渦さんも出席します。トップ同士が集まり、お互いの熱い想いを共有しながらその場で決めていくので、このスピード感が成立するのだと思います。

松井:ただ、設計者の目線で見ると、スケジュールを縮めるのっていいことばかりじゃないですよね(笑)。検討時間が削られそうだし、バッファがないのも怖い……。でも、建築やインテリアはモノが出来上がるのに時間がかかるから、携われるプロジェクトの数が、他の業界のデザイナーに比べて圧倒的に少ないと思うんです。だから、限られた人生(時間)のなかで多くのデザインに関わろうと考えるなら、NOT A HOTELはクリエイターにとって意味のあるスピード感だと解釈しています

齊藤:それはありますね。最短でどこまで思考を深められるか、クオリティを最大化するために何がやれるかって考え抜く癖もついてきたと思う。まだ入社して8ヶ月くらいしか経ってないけれど、密度が濃すぎて、もう2年くらい働いている感じがします。その分だけ成長している実感も持てますね。

宿泊体験の質を落とさない、コスト調整の裏側

次のパネルは「コスト調整」について。物価上昇のあおりを受け、いまやどうしても高くなってしまうコストをどう下げているのか? TOJIでは大きなデザイン変更はせず、難易度の高いコスト調整を実現したという。費用を下げつつバリューアップを実現するコツとは?

「NOT A HOTEL MINAKAMI TOJI」販売時のCGパース

齊藤:宿泊体験を最大化しようと考えると、品質を落としてコスト削減するわけにはいきません。工事費については見えない部分の設備や構造の合理化を徹底的に進めつつも、デザインを大きく変更することは決してしたくない。「TOJI」のコンセプトの軸からはブレない変更範囲をキープしました。

また、建築家の谷尻誠さん・吉田愛さんとコラボした「TOJI」は、リビングやダイニングの周りに温泉を巡らせているプランが、ファーストプレゼンの最大のポイントでした。見たことのない圧倒的な風景だからこそ、ぜひ実現したい。そうは思ったものの、現実的には温泉湯量の観点や維持管理コストも高くなりオーナーさんのコスト負担も重くなってしまう。そこで視点を切り替えて、今までの提案以上に価値ある体験へアップデートできないかと考え出したのが、3つの温度帯の浴槽でした。すべて温泉だったものを温泉露天風呂・温水プール・水風呂に変え、使う温泉湯量や維持管理コストを適正化したのです。でも、サウナのあとに水風呂へ入ったり、雪景色を見ながら温水プールで泳いだりと、楽しみ方の幅はより広がっています。


綿貫:NOT A HOTELは「今までにない宿泊体験」を追求し続けていますので、建築空間やSmartHomeなどのこだわりが多いです。クライアントワークでは「いかにコストを抑えるか」が先行し、体験価値を下げざるを得ないこともしばしばあると思いますが、NOT A HOTELでは「販売価格に見合った宿泊体験を生み出そう」「どのような宿泊体験を提供すれば、新たな市場をつくれるか?」のような考え方をベースに取り組んでいます。

NOT A HOTELだからできること

「何をするかという構想の段階から自ら提案できる環境は最高に楽しい」と、クリエイティブディレクターの松井一哲。ファッションデザイナーの相澤陽介氏と協業した「NOT A HOTEL KITAKARUIZAWA BASE」は、松井が企画構想から携わったプロジェクトだ。当時のプロセスを振り返りながら、その面白さを伝えていく。

松井 一哲:東北大学工学部卒、東京大学大学院建築学専攻修了。日建設計にて建築設計に従事後、WeWork Japanにて内装デザインを担当。21年6月NOT A HOTEL参画。一級建築士/管理建築士。

松井:もともとは濵渦さんの「相澤さんとなにか面白いことがやりたいね」という何気ない一言がきっかけでした。僕も相澤さんの「White Mountaineering」は個人的に大好きなブランドだったので、勝手に企画書をつくり、社内定例でプレゼンしたのが今の「BASE」というプロジェクトに繋がっています。コンセプトは「1L(O)DK」。White Mountaineeringの「服を着るフィールドは全てアウトドア」というコンセプトを、建築的に解釈してみたものです。“living”とは「生きる」という意味でもあり、住む人の生き方が表れる場所がリビングなのだとしたら、室内だけに閉じている必要はなく、地上をリビングにできるような間取りはどうか?という。

松井はWhite Mountaineeringのコンセプトを建築的に再解釈。実際にデザインしプレゼンを行った

松井:そうしたら「2週間後に相澤さんとミーティングするからこれをお見せしよう」となり、相澤さんも興味を持ってくださって、実際にプロジェクトがはじまりました。NOT A HOTELは事業主であり設計者でもある。だからこそ企画構想から設計までを自ら全て手がけることができる。何をするか自分たちで決められるのは、学生時代の設計に近い面白さやワクワクがあると感じています。

他業界のトップクリエイターとの協働

さまざまなジャンルの専門家とタッグを組み、固定観念にとらわれない建築を考えられるのもNOT A HOTELの大きな魅力だ。そこには、どんな学びが生まれるのだろうか?

松井:先ほども触れた、北軽井沢の「BASE」は収容人数やカラーの異なる3サイズを、「S/M/L」で展開しています。そうしたサイズやカラーのバリエーションは、ファッションデザイナーだからこそ思いつくアイディアです。異なる専門のトップクリエイターとご一緒するのは、新たなインプットも多く刺激的で面白かったですね。業界は違えど、物事への取り組み方や意思決定のアプローチなどは普遍的なもので、学ぶことが多くありました。

ファッションデザイナー・相澤陽介さんの事務所で打ち合わせをしている様子

松井:「センス」って、知識と経験の集積だと思うんですよね。相澤さんご自身も軽井沢に別荘をお持ちなので、ユーザーの観点からもたくさんのフィードバックをいただいたんです。生活すること自体を相澤さんが楽しんでいらっしゃるがゆえの、さまざまな視点が新鮮でした。豊かな経験をしているからこそできる、豊かな暮らしの提案があったんです。一方で僕も含め、建築を仕事とする人たちは学問から意匠(デザイン)に入っているために、取り組み方がストイックすぎたりするので……相澤さんのようにバランスよく在りたいと思いました。

PMであり設計者でもある

円滑にプロジェクトを進めていくためには、ときとしてプロジェクトマネージャー(PM)は設計者に厳しい意見も言わなければいけない。しかし、NOT A HOTELではそんな2つの役割を兼任するメンバーもいる。須磨哲生が、PMと設計の視点から見たものを語った。

須磨 哲生:慶應義塾大学大学院修了。隈研吾建築都市設計事務所にてホテル、別荘、市庁舎、道の駅などの意匠設計に従事。22年5月NOT A HOTEL参画。一級建築士。

須磨:別の角度からプロジェクトを見なくてはならないPMと設計者は、意見がぶつかり合うことも少なくない関係性です。でも、NOT A HOTELではPMと設計者の距離がとても近く、僕のように同一人物が兼任することもある。そうすると権利の取り合いではなく、ちゃんと同じ方向を向いて、お互いが納得できる着地点をスムーズに目指すことができると感じます。

たとえば、5月に販売開始した北軽井沢の「IRORI」は、春夏は小川や緑、秋冬は雪景色が楽しめる魅力的な土地にあります。その眺望を活かすため、森に360°開いたガラス箱のような建物を提案。でも、厳冬期はマイナス15度にも及ぶので、高い建物性能を担保する必要もありました。そこで思いついたのが、ガラスのすぐ内側に木の壁を入れ、熱負荷やバードストライクの問題をクリアすること。

須磨:そのほか、当初考えていた外階段は、雪や雨の日にも使いやすいよう内階段に。土地を象徴する溶岩石を使った外風呂も、真冬に温泉の温度を保つのが難しかったため、内風呂に変更しました。ただ内風呂にするのではなく、前面のガラス開口を大きく開け放ち、半露天風呂化できるデザインとしています。デザインとコスト、スケジュールはどうしても相反するところ。でも、自分がPMと設計を兼ねていたからこそ、性能とデザインが両立できたように感じます。

土地と人の思いを、次の時代へ引き継ぐ

かなりのパネルが開いたなか、建築チーム側から「ぜひ伝えたい!」と声があがったのがこのテーマ。「土地に根付く」でもあったように、地主さんとのコミュニケーションでどのような想いを紡いでいったのか、プロジェクトマネージャーの須磨が語る。

須磨:私たちは土地を見つけたら、どんな方がどんな使い方をしていたのかを紐解いて、それまでの歴史を引き継ぐことを大切にしています。「ISHIGAKI」の敷地はもともと、地域に根差した海の家と民宿でした。海に面する広大な庭は、たった一人の管理者さんが丁寧に芝刈りをし、木を育ててきたといいます。だからこそ海と庭、このふたつに対する地主さんの想いを大切に守りながら、新たな未来につながる建物をつくりたいと考えました。

「ISHIGAKI」の土地には、地域に根差した「海の家」があった

一人の管理者さんによって愛をもって管理された「庭」も「ISHIGAKI」の魅力の一つ

須磨:敷地内にある植物に敬意を払いながら、この土地に適した新たな植物も選定していく。さらに、いまの管理者さんに引き続き愛情を持って手入れしていただくことで、この土地がこの土地らしく継承していくのではないかと考えています。「ISHIGAKI」の名称である「EARTH」にはそんな管理者さんの想いも込められています。

松井:「ISHIGAKI」では、地主さんと深くコミュニケーションをして、これまでにないコンセプトムービーもつくりました。これまでのムービーは建築家の視点が多く、デザインにフォーカスしすぎていた気がしていて……今回ははじめて、土地の物語や地主さんの想いにフォーカスしたんです。建築チームの仕事は“建築に関わるすべてのクリエイティブ”なので、プロジェクト自体の魅力をどう伝えるか考えていくのも、クリエイティブディレクターの役割だと考えています。

「NOT A HOTEL ISHIGAKI」、建築デザインは藤本壮介氏

参加者からNOT A HOTELに寄せられた質問

パネルトークの最後は参加者からの質問に答えていく。

Q:ラグジュアリーホテルなどでは、海外のインテリアデザイナーと協業する案件も増えてきています。NOT A HOTELでも、今後インテリアデザイナーとの協業はありえますか?

A:オーナーだけが利用できる拠点「NOT A HOTEL EVCLUSIVE」などでは、すでにWonderwall®の片山正通さんやDAIKEI MILLSの中村圭佑さんにインテリアのデザインを依頼しています。一方で、内装は宿泊体験に直結する部分が多いため、設計の一環として僕ら自身が細かな部分のデザインを手がけることも少なくありません。内装だけでなくNOT A HOTELの宿泊体験をつくるうえで、細部までこだわりをもっているからこそ、冷蔵庫やソファー、カトラリートレーなどゼロからプロダクトづくりをすることもあります(松井)


NOT A HOTELらしいカトラリートレイを検討する様子

選定したカトラリーに合わせて、一から制作されたカトラリートレー

Q:設計の内製化はどこまで実施していきますか? また、施工も同じように内製化する予定はありますか?

A:これまで述べたようにNOT A HOTELは既存の枠にとらわれないチャレンジをしてきました。建物や体験の前提すら、自分たちで最適な解を考えます。自分たちの理想を叶えるのであれば、設計プロセスの常識を一新することも必要です。自ら実践していく意味でも、北軽井沢「BASE」のような自社設計案件を多く計画しています。施工については、難易度の高い建物を設計しているため、現状その道のプロ(ゼネコン)に任せて協業するのが、クオリティとスケジュールを高めていくのにベストだと考えています。…とは言いつつも事業スピードの早い会社なので、来年くらいには「施工も内製化します」とか言い出すかもしれないですね(笑)(綿貫)

参加者からの質問に答える齊藤 有一

編集後記

時間にしておよそ2時間。予定時刻を過ぎているも、会場の熱気は増す一方な本イベントも、まもなく終了。続く懇親会では各メンバーがフロアに散らばり、参加者たちとともに、さらに踏み込んだトークを繰り広げました。

会場からは「スタートアップという環境下にもかかわらず、いきいきとイベントでお話されていて、それがとても印象的でした」「忙しいチームだと雰囲気が殺伐としているのかな?と勝手に思い込んでいましたが、逆で和気藹々とした建築チームの雰囲気がすてきでした」といった声も。

懇親会には登壇者以外のNOTA HOTEL建築メンバーの姿も

懇親会も多くの方にご参加いただき、盛況のまま幕を閉じました

NOT A HOTELは創業3年。宿泊できる拠点は那須や青島に続き、今年は福岡、来春には北軽井沢と開業を控えています。世に発表されていない水面下で進行中のプロジェクトは、どれもワクワクするものばかりです。

全ては「NOT A HOTELにしかできない建築、そして体験を実現させるため」に。これからのNOT A HOTELおよびNOT A HOTEL ARCHITECTSに是非ご期待ください。

採用情報

現在、NOT A HOTELの建築チームではデザイナーをはじめ複数ポジションで採用強化中です。カジュアル面談も受け付けておりますので、気軽にご連絡ください。

STAFF
TEXT:Sakura Sugawara
EDIT:Ryo Saimaru

NOT A HOTEL株式会社では一緒に働く仲間を募集しています
1 いいね!
1 いいね!
同じタグの記事
今週のランキング
NOT A HOTEL株式会社からお誘い
この話題に共感したら、メンバーと話してみませんか?