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スタッフインタビュー vol. 21 「ズドンとやる」

1996年に体験会に参加して以来、プロジェクトアドベンチャージャパンとさまざまな形でつながりがっている非常勤ファシリテーターのにのさん(二宮孝)。近年は学校の教員研修やAP(アドベンチャープログラミング)指導者講習会などのファシリテーターをしています。20年以上PAJを見続けてきたにのさんの変化とは。

PAとの出会い

ファシリテーターになって20年くらいになります。もともとは私立の中高、そして時々小学校の教員をしていました。その当時うちの学校は第一志望で来る子ばかりの学校ではなかったんです。中には入学式当日からがっかりしている子たちもそれなりの数がいたんですよ。それが残念でもったいなくて・・。「この学校も捨てたもんじゃない」と思うようになるためにはどうしたらいいかと気にしていたときにプロジェクトアドベンチャーに出会いました。これをやると「学校も捨てたもんじゃない」になるかもと直感したんです。ユーモラスな雰囲気の中、仲間と一緒に前のめりに課題に取り組んだり、自分の思いを伝えたり。

うちみたいな学校に入ってくる笑顔が素敵で感覚の鋭い子たちにはとても合うプログラムだと思いました。PAに出会った翌年から新入生の初日のホームルームにみんなで名前を覚えることにしたんですよ。入学したときに最初は、前後左右の子たちと仲よくならざるを得ない。でも最初に名前を覚えるゲームをやると、誰のことも呼ぶことができて、席の近さに関係なく仲良くなれるわけです。そんな風に人に声をかけられるというのは双方にとってすごいと思ったんです。

自身の変化とPA

ファシリテーターをやることによって自分自身が一番変わりました。もしあのままイラショナル・ビリーフの強い人だったら、おそらく2人の倅たちからも金属バットで狙われただろうと思います(笑)。こちらの思い込みを全部押し付けて、ビリーフの雨みたいな感じだったと思います。

僕はクリティカルに変化しました。プロジェクトアドベンチャーというのはそういうものだと思います。僕のイラショナル・ビリーフを変えるきっかけをたくさん作ってくれたのは、PAで出会ったトレーナーや参加者、PAをやったときに反応を見せてくれた生徒などです。PAとは一体何なんだろうということを短く答えられる人はいないんですけど、僕にはアメーバみたいな形をしているような気がするんですね。何にでも使えるし、どうにでも変えられるもの。PAという哲学があって、その哲学をファシリテーションという手法と共にどこかに行って渡してくるというのが僕らの仕事です。それをしていくにはイラショナル・ビリーフ漬けになったまま立ち向かっていくと、必ずしっぺ返しを食うわけです。

教員研修をやっていて感じることは、それこそ思い込みが強いことです。例えばそれぞれのクラスの間で伝えることや決まり事は全体で揃えないと子どもたちに悪影響があるとか、先生は毅然とした態度で生徒に向かわなければいけないなど、ありとあらゆることです。僕自身もそういう思い込みを手放すのには時間がかかりました。

フルバリュー

フルバリューを伝えるとき、言葉としてはPAのテキストに書いてある通りに言ってみたりもしますが、「自分と相手とみんなを同時に大切にする」ということを考えてほしいということを子どもたちにも時には大人にも言います。アドラーの出典なんですが、アドラーは「自分を傷つけない、相手を傷つけない、みんなを傷つけない」と言っていて、その共同体のあり方をもじって使っています。子どもたちのキャンプのときにも「自分を大切にして、相手を大切にして、みんなを大切にする」を伝えています。この3つを同時に大事にするというのは大人でも難しいですがそうしてほしいんだと言っています。

「このアクティビティ=この変化」ではない

指導者講習会に来た人には2種類あって、全部メモをとってコツとかファシリテーションのツボを持ち帰ろうとする人と、自分をさらけだして、わーっと5日間を過ごしてズドンとそのまま持ち帰る人がいます。どちらがよくわかってるかというと、ズドンと持ち帰る人なんじゃないかなと思います。ズドンと持ち帰る人は「あのとき、私やグループがあんな感じになったのはあのアクティビティをやったからだ」とは思わないで、「私が今、目の前にいる子どもたちにあんな感じの体験を提供するのだとしたら何を選んでどうすればいいのかな」と考えると思うんです。「このアクティビティ=この変化」とは捉えないはずだと思うんですね。そしてアレンジ力も持ち帰ることにもなります。僕が最初に参加したAP講習会に一緒にいた人たちは、みんな「ヒューマンチェーン」というアクティビティでグループが動いたと受け取っているんです。でも「ヒューマンチェーン」をやっていつでもグループが動くわけではないんですよね。それはそのとき、何かが積み重なったときに丁度きっかけになって何かが動いただけなんです。それはただメモして持ち帰ろうとした人には無理なことなのではないかと思います。

今後の目標

人の心の動きとか、手に取るようにつぶさに分かる人とかなってみたいと思うけれど、あんまりそうならないと思うんです。それでも、たまにはそういうことを感じることがあるので、そういうときには間髪入れずにズドンと仕掛けられる人になりたいなと思っているんです。「場を読む、場を解析する、そして場に働きかける」の、「働きかける」までをせっかく感じたのだったら、躊躇せずにズドンとやれる人になりたいんです。場を読むのは空気を読むのとは大違いですから。そんな近未来の希望です。

(20180508)

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