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大手企業で新規事業立ち上げができるか調査してみた件。

ーベンチャー・スタートアップ企業の経営や事業立ち上げに際して、多くの企業の支援をこれまでされてきたかと思いますが、あえて大手企業で新規事業を立ち上げることのメリットは何だと思いますか?

一番のメリットは、キャッシュとリソースがある点だと感じています。資金調達をしなくても既存事業が生み出すキャッシュがあって、投資を得ることができます。

オフィスもあって、ビジネスインフラが整っており、一定以上のクオリティの人材はすでに社内にいる。だから、事業をどうやってスケールするか、事業に最適な組織をどう作っていけばいいか、その2点に集中できます。

必要な社内のコミュニケーションさえ出来れば、同じことをベンチャーでやろうと思った時より走り出しのスピードを高められると思います。

デメリットは、上記の「必要な社内のコミュニケーション」の部分です。各企業で独特の意思決定や調整の進め方、価値観などあると思います。コミュニケーションの頻度を増やして社内の理解を先に得ないまま物事を進めると、走り出した後で軋轢が生じてしまいます。

スタートアップ企業が投資してくれるVCとか金融機関にレポートするように、投資元へのコミュニケーションは大事だと思います。

とは言え、同じ社内なのでラフだしコミュニケーション取りやすいという点は仕事を進めやすいですね。


ー大手企業での新規事業は数年前からちょっとしたブームのようにも思いますが、うまくいっている会社とそうでない会社、どういう違いがあると思いますか?

あくまで私の個人的な意見ですが、新規事業という名前をいつまでも残している会社はうまくいかないと思います。新規事業の企画・立案というのは、日々の仕事ではないので。つまり「新規事業をやっている」という表現では、事業内容の説明になっていないですし、外部から資金調達を受けることはできませんし、要はお客様が実際にいる仕事になっていない。だから新規事業を成功させるためには、なるべく早く新規事業という名前を取って、何をいつまでにやるか明確にすることが大事だと思います。

僕自身も立ち上げた初月から、いつまでにこの金額を作って、何人採用して、という計画を持つだけでなく社内にも出来るだけ前倒しに共有してきました。チーム構成は、今は「海外事業チーム」「食リクチーム」という2チームです。今後、各事業が拡大するタイミングで別組織にしたいと考えていますし、新しい事業・サービスも3ヵ月に1つずつリリースしていきたいと考えています。


ーこれまでチームの採用も全て行う中で、どんな人が活躍できると思いますか?

能力としては、『自分でルールを作れる人』。それが私が考えている採用基準です。

『ルールを作る』ということは自らの都合良いように好き放題やることとではなく、社内で共通認識となるルール作りを通じたコミュニケーションです。新規事業を大企業で立ち上げる際には、過去の新規事業取り組み事例や近しいサービスを踏まえることになります。その際に『なぜやるのか』を理解・承認してもらうためには社内で信頼のベースとなるものが何かを理解して獲得する行動力、そして、会社で取り組む事業としてのメリットを説明できる展開力が重要です。

・ビジネスの市場、もっと言うなら、具体的なお客さんを見つけてくる力

・そのお客さんに「うちと付き合うことでこういうメリットがありますよ」とプレゼンする力

・組織、会社に対して事業を任せてもらえば成長性と継続性があるということを納得してもらえる力

これができて初めて、自分でルールを作るということなんだと思います。全てができなくても良いのですが、どれかに尖ったところがある人が活躍できると思っています。

もちろん、『何もないところで人と違うやり方でプラスアルファを作りたい』という意欲や動機を持っていることは大前提です。



ー最近では、自前主義だった大手企業が外部企業とのアライアンスを組むというのも一般的になりつつあると思いますが、どうお考えですか?

そうですね。大事なのはそれが「目的」にならず「手段」としてやっているという認識を持つこと。どちらかが提携することが目的・ゴールと思っているとうまくいかない。ベンチャーが大手と組むことは、それぞれが成し遂げたいことと、共通のゴールの2つがあってしかるべきだと思います。それは、双方の都合が含まれていて良いと考えています。スタートアップ側はこれで上場まで持っていきたいとか会社としての成熟度をもう2段階上げたいみたいなことでも良いですし、大手はこういう事業をやらないともう伸びないんだよとか担当者レベルではこの事業を成功させないと役職落ちちゃうみたいなこと。

何でも良いのですが、双方に『真剣さ』『必死さ』があるべきだと思ってます。小ぎれいにまとめても意味がないと思うんです。


ーパソナキャリアの場合は、今数社とアライアンスを組んでいますが、favyさんもその一社ですね。

そうですね。今外食企業向けの採用支援サービス「食リク」で、favyさんと提携しています。食領域で急成長していらっしゃいますが、favyさんは『飲食店が潰れない世界を作る』というゴールを明確に持っています。

その上で「採用」が課題になっており採用関連サービスを探されていました。一方で僕らは、飲食業界という25兆円のマーケットに入り込めてないという状況でした。

それぞれの成し遂げたいことがあって、且つ『飲食店で働くことがかっこいい世界を作る』という共通のゴールを持てたので、提携して共同で事業を進めようという話になりました。


ー他社の事例で「これいいなあ!」という話題ってありますか?

ゼネラルモーターズ(以下GM)がカーシェア事業をローンチすることですね。生産台数No.1の自動車メーカーが、車が売れなくなるのに、あえてシェアリング事業をやって、あえて破壊的なイノベーションを起こしにいっている。こういう事例は日本企業にないとても刺激的な事例だと思います。

多分こういう企画を考えている人の頭の中には、「GMのお客さんはこれまで年間1500万台売っているGMユーザーだけだった。でもシェアリングビジネスであれば、アンドロイドとかiOSで世界の半分くらいを顧客にできる。どちらがマーケット大きいんだっけ?」という視点があるんだと思います。世界を見て仕事をしている企業ならではの判断軸と意思決定ですよね。よく言う「世界を見て仕事をしている」というのは、海外市場を見るということに留まらず、どのプラットフォームに軸足を置けば社会の中で自分たちのサービスが最大化するのかという観点で可能性を探ることなんだと改めて気付かされました。


ー今後のビジョンー

四半期のひとつのサービスをローンチしていくことです。

本当の意味での人材ビジネスのプラットフォームはまだ存在しないなと思っています。各サービスでシェアが大きい会社はありますが、その人材サービスに登録していることでキャリア全体を考えることができるプラットフォームみたいなサービスは存在しない。個人目線で見て、キャリアについての情報や示唆を常にアップデートして、一元的に情報を提供してくれる仕組みが将来的に必要になると感じています。今はそこに着手している会社がないのですが、それを作れれば個人のキャリアはより豊かにできるきっかけになると思います。

もう少し詳しく言うと、就職します→評価されます→昇進昇給します→その時にあなたは何の仕事してましたというようなログが残り、その先に「あなた何ができますよ」というのが分かるイメージですね。自分は、時間軸と空間軸で見て「こんな時にこんな会社が評価している。」「この会社の採用基準が自分に合っている。」というのがひとつのプラットフォームの中で可視化され、情報提供してくれるのが理想です。これを実現する意味で、手段としてテクノロジーを使った人材会社が増えたら良いと思っています。

よく、今後人材紹介という仕事がなくなるかどうかという議論がありますが、僕はなくならないと思います。

例えば、今はAmazonでいつでもどこでも何でも買い物ができる。でも、買い物コンシェルジュとか、何を買えば良いかというライフハック系のサービスは寧ろ増えている。転職も一緒で、選択肢が増えるからこそ、個人が考えることは難しくなり、結果として考えを整理して人に相談したくなると思います。だから、単なるレジュメ情報と求人情報のマッチングをする人材ビジネスにはあまり可能性を感じませんが、時間軸・空間軸とキャリアを一元的に俯瞰できるような仕組みを作ることで、キャリアアドバイザーの仕事はより複雑になり、社会からのニーズは増えるんじゃないかと思っています。

その際は、個人の方に何かしらの方法で課金する可能性もあると思います。今のビジネスモデルだと、転職者の方はお金は人材会社が企業の意向に引っ張られてるんじゃないか・・・と不安になり、中立性を感じてもらいづらい状況です。

テクノロジーもビジネスモデルも、転換期に来ている人材ビジネスでお客様に求められているサービスを生み出し続けていく。

そういうミッションを持てる環境はなかなか無いんじゃないかなと思ってます。

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