AI時代をどう生きていくべきか。本当に備えておきたいスキル、マインド、ナレッジとは?今日からでも始められるキャリアの拓き方~尾原和啓さん~【外出し社内報 #5】「自分デザインノート」~

こんにちは。パーソルキャリア「外出し社内報」編集長・乾です。独自の視点で社会と自分を見つめてきた、「自分デザイン」のスペシャリスト3人に徹底インタビュー。3回目の今回はIT評論家・尾原和啓さん。社会や経済の未来について伺った前編。後編では「今日から始められるキャリアの拓き方」を伝授いただきます。

ポスト平成の“ポータブルスキル” 問題解決能力はここが重要!

――前編はテクノロジーが飛躍的に進化しグローバリゼーションが全面化した時、私たちの社会はどうなるのか、その未来図をうかがいました。後編では、その環境下で僕たちが自分らしいキャリアを歩むための、マインドとスキルについてさらに深堀していきたいと思います。尾原さんは戦略コンサルのマッキンゼーで働かれて、コンサルティング会社で身につけられるスキルはどこでも通用する「ポータブルスキル」であるとおっしゃっています。

尾原:僕が前編であげたコンサルティング会社で身につく「ポータルブルスキル」は3つです。問題解決能力、プロジェクトマネジメント力、コミュニケーション調整力。このうち、問題解決能力については注釈が必要です。今の時代では2つのポイントが重要になっています。

――まずはプロジェクトマネジメント力と、コミュニケーション調整力からお願いします。

尾原:わかりました(笑)。今まではわかり切った課題を解決し、同質性のある人間をこっちに行くぞーと推し進めることが「コミュニケーション能力」や「プロジェクトマネジメント能力」だった。

これからは、自分と世界観もスキルも遠い人とコラボレーションして、その人の能力やクリエイティビティを引き出し、それを形にすることが問われてきます。

コミュニケーションを通じていかに人を巻き込むかは、AIでは代替できない。だから、とても重要です。多様性のマネジメント、日本人は苦手科目ですよね。幼いころから、同質性を前提にしたコミュニケーションの中で育っているから、なかなか養いにくい。グローバル人材が生まれにくい背景のひとつにもなっています。

――確かに。働き方改革ひとつとっても、「働く人の背景が多様化するから管理職の負担が大きくなる」と言われています。しかし、尾原さんからするとそれが「当たり前」なんですね。では深そうな「問題解決能力」のところお願いします。

1つ目に重要なのは、「問題発見能力」もしくは「問題定義能力」です。

コンサルティング会社もひと昔前は、アメリカや世界各地から良い事例(ベストプラクティス)を持ってきて、それを日本企業に当てはめるような時代がありました。

「御社と似ている海外のXX会社は、人事や総務はこんなオペレーションでやっています。これを参考(ベンチマーク)にしながら、御社にカスタムメイドした方策を考えます」というやり方です。

このような既存の方程式に当てはめるような問題解決の場面は少なくなってきています。新しいものを生み出す能力が必要なんです。

そもそも課題をどういう切り口でまとめるのか、という「スコープマネジメント」が極めて重要な事態になっています。

――ちょっとそこでいったん止まってください。「スコープマネジメント」とは、どんな文脈で課題を提示するかということだと思いますが、もう少し深堀りしたいです。読者にわかりやすく伝えたいのですが。

尾原:現在の問題は、あらゆることが複雑にからみあって起きています。たとえば中途採用を例にとりましょうか。

仕事の依頼が来るが人が足りない→採用を増やす→現場が育成する時間がとれない→管理職に負担がかかる→職場環境が悪くなる→さらに人が辞める→また人が足りなくなる……。

打ち手を打とうと思っても、採用が弱いのは、採用ブランディングなのか、採用条件が悪いのか、会社の風土に問題があるのか……。会社の風土だとすると、何をどこまで変えなければいけないのか、そのために利益をどこまで犠牲にするのか――。

あらゆる問題はつながっていて、片方を解決すると次の課題が出てくる。さらに問題は巡り巡って、なかなか本質が見えにくいわけです。この全体の構造を俯瞰する思考法を「システムシンキング」といいます。

この全体の構造の中で、どこを切り取って「課題」とするのか。それを「スコープマネジメント」と呼び、とても大切になってきているんです。

――問題設定能力の重要さはわかりました。この力を磨くためにはどうしたらいいのでしょうか?自力でも学ぶ方法はありますか?

尾原:これが難しいんですよ。たとえば問題設定能力が重要視されている思考法の1つに、「デザインシンキング」があります。スタンフォード大学の「デザインスクール(d.school:ディースクール)」や世界的なデザインコンサルティング会社「IDEO」などが中心となっている流派です。けれども、徒弟制を超えていない。方法論としてはまだ、職人芸の世界です。

――確かに「問題解決能力」に比べて、デザインシンキングについては、まだまだ方法論を一般化した書籍が少ないですね。

尾原:だから僕は最近「スキルの手前が重要」と思っています。一言でいうと、「面白がり力」です。大きな構造の中で点と点をつなげて、クリエイティブに課題を解決したり、新しいソリューションを考える。そのためには、つながりを発見する能力が重要です。

自分に遠いものとか理解できないものがあったら、「わからない」「怖い」じゃなくて、「何これ、新しい!面白い!」と、新しいものを見て、思えるか。そう面白がるマインドの方が、スキルより大事なのではないか、と。

――それは尾原さんの本を読んでいて感じたんですよ!コンサル出身でありながら“編集”という観点が強いお人だなと感じました。

尾原:そうなんです、名編集者である松岡正剛(「編集工学」提唱者で編集工学者、「編集工学研究所」所長、「イシス編集学校」校長)さんの思考法に近いと、自分でも思っています。


第3の思考法:アブダクション~小さな帰納と小さな演繹を繰り返す~

――現代の問題解決能力のなかでは、問題を設定するフェーズが重要で、その力を鍛えるためには点と点のつながりをみつける面白がり力≒編集力が必要である、と。もう1点についても教えてください。

尾原:もう1つは、アブダクションです。

人間の思考法は帰納法と演繹法の2つがあると言われています。帰納法はボトムアップ。事実を並べていく。たとえば「牛」。

牛は事実を集めていくと、爪が偶数だというのが、馬との違いらしい。すると、牛と馬を判別できるようになる。これが帰納法。これに対して演繹法は、確定的な1本の論理を見つけ、そこから全部を復元していくという数学的なやりかたです。

アブダクションというのは中間で、帰納法をやるにしても、全部が判別できるか本当にすべてのデータを集める時間がない。だから3つとか4つの事実から、たぶんこれを重ね合わせると、こういう判別のルールがあるんじゃないの?を考えてみて、事実に基づいて、ちょっとだけ演繹してみて、ズレていたらその論理を修正して……というのを繰り返す。

ちっちゃな帰納法から演繹法に行って、ちっちゃな演繹法から帰納法に行ってというのをひたすらループするのが、アブダクションです。このアブダクションが大事だと言われています。

――アブダクションとデザインシンキングでは、両方とも小さい仮説を立てながら、観察をし、また仮説をたてなおして、観察をして…と進めていくところが似ていますよね。この技を体得するのも難しそうです。

尾原:さっきも話した「面白がり力」が重要です。

一見遠く離れて感じることに共通点を見つけていく作業がアブダクションの始まりで、「街で見つけたものすべてが自分にとってのアイデアのヒントになる」といった状態をどうやって作っていくかが大切になります。

具体的にどうするのがいいのか?僕がよく言うのは、抽象度の上げ下げがどうできるか、です。

普通、阪神ファンと巨人ファンは相容れない、と思うかもしれない。でも抽象度を上げてみる。例えば野球人口は減っている。野球を盛り上げることには、阪神ファンも巨人ファンも協力可能でしょう。あるいは、「投手戦よりも打撃戦が好き」という切り口もありかもしれない。好きな球団を超えて盛り上がれる、“監督談義”もありですよね。

こんな風に、一見、お互い相容れないものでも、抽象度を上げてみると、共通点がつくれる。ミクロに下げて個別で見ていくと、またまた共通点を探すことができる。共通点が見えると、今まで仲間じゃなかった人たちが仲間になっていき、新しいムーブメントが起こすことも可能になります。

ライフワークかライスワークかを見極め 内なる編集力、応援力を発動させよ

――おっしゃっていることはやっぱり“編集”の技術に近い。いろんな点をつなげられるプロデュース力ともいえます。この技術はおっしゃるように教えるのが難しく、「面白がる」マインドセットが重要な気がします。日々の仕事の中で、どう身につけていったらいいですかね?

尾原:やっぱり夢中になれる仕事が一番でしょうね。人が劇的に成長して成果を出す特徴を、MITメディアラボが「4P」と呼んでいます。Project(プロジェクト)、Passion(情熱)、Peers(仲間)、Play(遊び)。

ある一定期間で結果の成否が分かるコトに対して、みんなで向かおうぜという「Project」があると燃える。かつ、そこに「Passion」があると、人間は否応なく力を使いたくなる。「Peers」と共に切磋琢磨して、健全な嫉妬心でたきつけあう。そして「Play」があることで、新しいクリエイティブを呼び込む。

――4Pのキーワード。これを日常の仕事に取り入れようとするとしたら?

尾原:今の日本は、仕事の中で4Pが成り立ちにくくなっています。上が与えてくれないなら、自分でつくるしかないですよね。

「ライスワーク」と「ライフワーク」のポートフォリオをよく使います。今の仕事の中で、情熱をかけられるような「ライフワーク」と呼べるものがなければ、自分でつくっていくしかない。ライフワークなら放っておいても仕事をするわけです。僕なんて土日でもかまわず、ずっとしゃべり続けていますが、これは僕のライフワーク。ですから働き方がブラックだと言われても平気です。

残念ながら、仕事の中にライフワークの要素がないとしたら、今の仕事はライスワーク。お金を稼ぐものだ、と割り切る。ライスワークで短い時間で稼ぎ、残った時間を、現時点ではお金にならないけど、情熱を注げることをライフワークとしてやっていく。もしライフワークで稼げるようになったらハッピー。ライスワークで生計を立てながら、余った時間でお金が稼げないライフワークをし続けても、それもハッピーだと思います。

――ライフワークが見つからない時には、将来何か見つかった時のために、ライスワークを通してスキルを蓄積していこうという考え方の人もいると思います。下積みって、どれくらいしたらいいと思いますか?

尾原:うーん、繰り返しになりますが、一番大事なことは「面白がれる」こと。学ぶこと自体が面白ければ、“下積み”なんて言葉は使わないはず。僕は今でも毎日、頼まれてもいないけど、アメリカや中国のブログを読んで、毎日20通くらい自分の考えを送りつけています。

下積みなんて思ったことないし、今も中国語の勉強を始めました。しゃべることは諦めましたが、書くことならイケそうだと思ったんです。そんなのは好きでやってること。

経営学者の楠木建(一橋大学教授。専門は競争戦略)さんが『努力の娯楽化』とおっしゃっていた。本当に好きなものは、努力すること自体が楽しくてしょうがないのだ、と。自分が「下積み・苦労」と思っていることの解像度を上げ、1つでもいいから努力が娯楽化することを見つけるんです。

もう1つ大事なことは、自分が今やっていることがどこかで娯楽化につながるという経験を持てると、様々なトンネルをくぐれるようになる。幸か不幸か、リンダ・グラットン(ロンドン・ビジネススクール教授。人材論、組織論の世界的権威)が言うように、1つのスペシャリストでは逃げ切れない世の中になって来ている。ハイキャリアの道を選ぶのであれば、連続スペシャリストにならざるを得ない。


できるだけ違う人と話す そして健全な危機感を忘れずに

――尾原さんは、どんなことでも面白がれちゃう。その“尾原思考”、僕らはどうやって身につけられますか?

尾原:できるだけ遠い人としゃべることです!同じコミュニティの中にい続けると、喜んでくれる人が偏ってきます。だからたとえばパーソルキャリアのような、真面目にコツコツ仕事をすることが大事というコミュニティに、僕のような不真面目なヤツがやってくると、面白がってくれるんですよね。何が喜ばれるもので、喜ばれないものか、遠くの人としゃべらないと偏っていく。

たとえば新しいパートナ-ができると、自分の知らなかった趣味の服を見るようになる。街の見方も変わるでしょ。それと一緒です。あとは応援もいい。自分がギブしたい人を増やすと、ギブしたい人の目を持てるようになります。

――ありがとうございます。面白がるコツは身近な応援にも宿るってことですね。最後に若い人たちにひとことお願いします。

尾原:健全な危機感を持ってほしい。日本は、ある程度生きられることが幸せすぎて、一歩踏み出す必要を感じない。しかもずっと「日本は危ない」というメディア報道にも接しているから、ホラーストーリーにも極めて鈍感になっている。でも前編で言ったように、残念ながら僕たちは島国で守られてないし、日本語にも今後は守られない。30年か40年でAIとかロボットから追い立てられる、ということもほぼ確定してしまっている。その未来をどう生きていくか。それこそ面白がりながら、自分の人生を創っていってほしいですね。

――まだまだうかがいたいことがありますが、残念ながらもう紙幅が……!今日はありがとうございました!これを機にまたいろいろな機会を設けさせて下さい!

尾原:もちろん!面白そうです!楽しいギブならギブはいくらでもします(笑)。

おばらかずひろ/執筆・IT批評家。1970年生まれ。京都大学大学院で人工知能を研究。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモ「iモード」事業立ち上げ支援、リクルート、ケイ・ラボラトリー、コーポレイトディレクション、サイバード、電子金券開発、オプト、Google、楽天、Fringe81など(リクルートには3職目と8職目の2回)を経て現在14職目。著書に『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから"の仕事と転職のルール』『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』など多数。

撮影/加藤タケトシ

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