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「ペット先進国」といわれるイギリスの動物福祉について、渡英したインターン生が考えてみた

皆さんこんにちは!

先日から何度かにわたり、ストーリーの記事作成を担当させて貰っている長期インターン生のホワイトヘッド ニコラです。

7月初旬に、父の実家があるイギリス・ロンドンに語学留学に行きまして、約1ヵ月半が経過しました!

幼い頃から定期的に父の実家には帰省しているのですが、その実家でのペットと家族の在り方や、ペット関連サービスにおける日本との相違点を以前から感じており、渡英前に現在のイギリスにおいてペット福祉やペットサービスはどのように運用されているのかを調べてみました!

ということで今回は、「ペット先進国」とも称されるイギリスのペットを取り巻く情勢や、法律などについて紹介していきます。

▲電車内にて撮影。イギリスではリードのみで電車に乗ることが出来ます…!

日本とイギリスではペットの呼び方が違う?

皆さんは自宅で飼育しているペットを誰かに紹介するとなった時、なんと言って紹介するでしょうか?

これは私の体感ですが、「うちの子は~、この子は~」といった表現を用いる方が多いでしょう。また、ペットを褒める時も、「いい子だね」というように、日本においてはペットに対し「」という語句が使われることが多いです。ペットたちが「子」のくくりに入ることによって、ペットに話しかけたり、他者へ紹介する時その子の性別が重要視されることは少ないですが、イギリスでは違います。

祖父母の家や親せきの家で飼われている犬や猫は皆性別を重視されていて、紹介する時は「He/She is ~」、褒める時は「Good boy/girl」というように性別が分かる代名詞か、固有名詞の場合がほとんどです。日本ではペットに対し、「彼/彼女」といった表現が用いられることは少なく、日本は自宅のペットを我が子のように、イギリスでは我が子というよりも仲間やパートナーのように扱うという認識の違いがペットの呼び方に表れているのではないかなと個人的に感じています。

どちらが良いとか悪いとかではないですが、私自身は日本的な呼び方に慣れているため、自宅で飼育しているウサギのことは「いい子だね~」と褒めてしまいます🐰

こんな閑話は程々にして、ここからは真面目な動物福祉の話に移ります、、、!


日本の動物関連の法律の現状

日本では、令和2. 3. 4年と3年連続で動物愛護管理法の改正と施行がなされました。

令和2年の改正では、動物殺傷罪等の厳罰化(2年以下の懲役又は200万円以下の罰金から、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金へ改正)や、動物取扱責任者要件の充実、令和3年の改正では、動物取扱業者の遵守基準の具体化と、幼齢の犬及び猫の販売における基準として生後56日の経過が絶対条件とされ、今年令和4年の改正では販売時におけるマイクロチップの装着が義務化されました。また、今年の11月には国家資格となった「愛玩動物看護師」の予備試験が実施される予定です。

訴訟はおろか、言語を用いた主張すら出来ない動物たちだからこそ、保護するための法律の積極的な拡充が必要不可欠であり、その歩みが続いていることは本当に素晴らしいことだと思います。

とは言っても日本においてはまだまだ課題は多く、例えば飼育している犬が交通事故にあった場合、車の運転手に主張できるのは動物愛護法違反ではなく、所有物を損壊されたという親告罪(警察が自発的に捜査することはほとんど無く、所有者の告訴が必要)の器物損壊罪になってしまうそうです。ペットと暮らしている人からすれば、ペットは家族であるにもかかわらず、法律上「モノ」として扱われてしまうことは道徳的に嫌悪感を持ってしまうでしょう。

法整備が進められている昨今、今後はこのような実務での法律の運用のされ方にも視点を当てていくべきだと強く思います。

イギリスにおけるペットを取り巻く法整備

「ペット先進国」と言われるイギリスでは動物に関してどのような法律が存在するのでしょうか。その幾つかを紹介していきます!

イギリスには、動物の飼育や利用、販売に関する法令がなんと70以上存在します。

現在イギリスでは、ペットショップにおける生体販売は禁止されていて、子犬の売買は「犬の生活環境や状態について確認するために購入者がブリーダーの元へ足を運び、対面式で行い」、「ブリーダーは購入者に母犬と子犬を一緒に見せる必要があり」、「8週間未満の子犬、子猫は販売/購入してはいけない」と定められているのです。

これは、2020年4月には通称「ルーシー法」の施行によるもので、イングランドとウェールズにおいては生後6カ月未満の子犬、子猫はブリーダー以外の第三者が販売することはできず、ブリーダー販売においても上記の規制が必要となりました。

この法律は、かつて繁殖犬だったキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの「ルーシー」の名前から「ルーシー法」と呼ばれています。

繁殖犬だったルーシーは劣悪な環境の元、繁殖を繰り返し行わされ、てんかんの発作を患い5歳で引退しました。保護された当時のルーシーは見るに堪えない状態で、健康被害も多く抱えていたといいます。健康問題と無理な繁殖がたたってか、ルーシーは保護後3年で死亡したそうで、心臓病を患いやすいキャバリアは、小型犬のなかでは短命な部類に入りますが、それでも8年という寿命は平均から見てもとても短く、いかに過酷な生活を強いられていたのかが分かります。

ルーシーが辿ったような悲劇を2度と生まないよう、動物たちが尊厳が守られ幸福な生涯を送ることが出来るよう多くの人々が声を上げ、ルーシー法が制定されました。

「パピーファーム」と言われる繁殖場には、ルーシーのように劣悪な環境下での生活を強いられている犬が多く存在していて、そのような収益のための無理な繁殖、杜撰な飼育を規制し、ビジネスの道具としての搾取を禁じることがこの法律の1番の目標と言われています。

この他、動物愛護団体、獣医師会、議員連盟、環境省等が協力し「ドッグブリーディング・ステークホルダー・グループ」を立ち上げ、運営していて、「繁殖と購入は責任ある行為であるべき」として、子犬の購入、飼育にあたり必要な情報を詳細に記載した「子犬契約書」の発行を行うなど、政府も積極的に動物福祉への取り組みを進めていると言えます。

企業は動物たちと飼い主のためのサービスの普及、飼い主は自身のペットへの適切な生活環境の提供の責任を担っていますが、動物たちのための社会制度の拡充を担えるのはやはり政府しかありません。

だからこそ、国が動物、ペットの福祉に力を注ぐことは非常に重要であり、それが行われていることは非常に素晴らしいなと感じました。


世界最古の動物福祉協会「RSPCA」

イギリスには「英国王立動物虐待防止協会(RSPCA)」という動物福祉推進のための非営利団体が存在しています。

RSPCAとは、「The Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals」の略で、 1824年に発足したおそらく世界最古かつ世界最大規模の動物福祉協会です。

1840年に当時のヴィクトリア女王の許可により、名前の最初にRoyal(王立)が付き、SPCA(動物虐待防止協会)から、現在のRSPCAという名前になりました。

動物虐待の状況の調査と指導、そして保護を行っていて、ペットのみならずあらゆる生き物の福祉に関わっています。

約1500名の従業員を雇用していて、162箇所の支部、17箇所の保護センター、そして4つの動物病院の管理を担っていますが、その事業のすべてが寄付金で賄われていて、国からの補助金等は一切受け取っていないというので驚きです。

RSPCAには、約1年間の研修を受けた検査官が400名ほど所属していて、「動物が虐待されている可能性がある」という市民からの通報に対し、調査し、必要があれば救助、保護を行い、場合によっては調査によって裁判に加担する場合もあります。

通報現場においては「動物の自由5項目のチェックリスト」に沿って調査が行われます。

〈動物の自由5項目のチェックリスト〉

1.動物がお腹をすかせていたり、喉がかわいていてはいけない

2.不快な環境にいたり、暑すぎたり寒すぎたりしてはいけない

3.怪我をしていたり、病気の場合は獣医さんに連れて行かなければいけない

4.動いたり遊んだりするのに十分なスペースがなければいけない

5.動物が怖がっていたり、不幸せな状態ではいけない

この5項目は日本においても、動物福祉という観点で重要な視点なのではないかなと感じます。

検査官は訪問時、上記の5項目を遵守するよう飼い主に指導を行い、後日指導が反映されているかの確認に行きます。

その時、改善が見られない場合は、動物は保護、飼い主は裁判所への呼び出しが行われ、場合によってはその飼い主は一定期間、もしくは一生涯動物を飼育することを禁止されます。

虐待されている子を保護しても、お金で買うことが出来てしまうペットという存在だからこそ、児童相談所のような組織、制度が確立され適切に運用されていることの重要性は非常に大きく、見習うべき点であると強く感じました。

「ペットの家族化」のためには、社会における動物の権利を目に見える形で好転させ、それを守るための制度の拡充が必要不可欠だと思います。

イギリスだけでなく、様々な切り口からペット、動物福祉のための制度や組織を持つ国々(主に欧米諸国)の良い点を模倣し、今の日本が変わっていくことが出来たら理想的なのではないでしょうか。


【参考文献】

https://www.friendswithpaws.co.uk/rspca

https://reanimal.jp/article/2020/06/02/368.html

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