歌舞伎町の地下「麦ノ音」では、静かに心を潤す時間が流れている
「誰かの水源」新宿駅東口を閉店してしまったアルタの方角へ進み、今は無きドリアンを全面的に推していたフルーツ屋を過ぎて、靖國通りに突き当たる。信号を越えて、ゴジラロードと新たな名称が付いた道は様々な香りで溢れ返る。同じ景色を見続けている巨大ゴジラ像に向かって歩き、私がホスト新人の時代からあるカラオケ館を右に曲がって、他店の看板が煩い建物の地下にダイニングバー麦ノ音がある。その一角に暖簾を垂らし私は適度に寿司を握っている。本日、予約して来てくれたホストは酷い二日酔いのようで、常温の水を飲みながら、ひたすらガリを噛んでいる。「なんか軽い感じの魚ありますかね?」私は青森からやってきた分厚い平目の...