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VR事業のスタートから「安全体感VRトレーニング」誕生ストーリー(後編)

積木製作のマーケティング担当、(元はCGクリエイター)赤崎です。
後編はVR案件初受注からオリジナルサービス「安全体感VRトレーニング」誕生までをお伝えします。

意外なところからVR初受注

VR案件がなかなか無い中、方々に営業活動を展開していた2013年から2014年当時、VRについて当時いろいろ情報交換をさせて頂いていたテレビ朝日メディアプレックスからテレビ朝日の夏祭りで展示するVRコンテンツの制作依頼を受けました。今思えば短納期でコストも厳しい案件でしたが当然喜んで受託し、開発しました。紹介サイトが残っているのでリンクを貼ります。
2014年の夏ですね。これが弊社のHMDを使用したVR、最初の案件となりました。不動産VR獲得を目指していたのですが、恐竜をモチーフとしたエンターテインメントコンテンツの業務が第一号となったので、わからないものです。

VRアドベンチャー「恐竜戯画」の誕生

この恐竜コンテンツが非常に面白く、好評でした。ただ当然自分たちのコンテンツではないので、イベント終了後にデモをしたり、2次利用する事ができなかったのです。周囲の後押しもあり、(VRの業務も無かったので)恐竜をモチーフとしたオリジナルVRコンテンツを制作する事を決意しました。2014年末の事です。ある方から恐竜VRを展開したいという打診もあり、やってみようという事になりました。フル3DCGで5分間の恐竜VRを3カ月で完成させました。それが「恐竜戯画」です。
恐竜戯画は一部のアニメーションやモデリングを除き、全て小田桐貴司が制作を担当し、私がシナリオを担当しました。(実は私はCG映画監督志望でしたので、VRショートムービーを作った事で小さな夢が叶いました!)
恐竜戯画はVR黎明期のコンテンツ不足の時期に方々からお声をかけて頂き、「VR Cruise」の初期タイトルに選んで頂いたり、小規模のイベントで利用頂いたりしていました。現在ではププルインターナショナルのVRレンタルコンテンツPBシステムの4DOH等でご利用頂いており、累計で当初目標としていた額をはるかに超える収益を上げています。

オリジナルコンテンツの価値

オリジナルで自分の作品を持つという事は大きな価値があります。何のしがらみもなく展開する事ができるので、思いもよらないオファーを頂いた際にも即断即決で前に進める事ができます。このそれほど大きくもないですが、小さくもない成功体験が後の「安全体感VRトレーニング」を開発するきっかけにもなるのです。

転換期 企業研修VRの開発を開始

2015年には東京モーターショーで展示するVRコンテンツを2件開発しました。2014年から2015年にかけて、その新規性から広告代理店がこぞってVRを顧客に提案した時期がありました。VRをマネタイズするにあたって最初の波がこういったVRプロモーション開発です。ただVRプロモーションには大きな欠点もあります。多くの人の目に触れるようにする事がプロモーションの目的ですが、VRはHMDを被っている人しか体験できないので、限られた人数に対してしか訴求できないのです。新しいからといってプロモーションに採用したものの、大きな成果を上げられないプロモーション企画が当時多く見受けられました。現在はVRを使用したプロモーション開発はかなり減ったのではないでしょうか。開発の住み分けが済んだのかもしれませんが、弊社に対してのプロモーションの打診、問い合わせは殆ど無くなりました。
プロモーションVRの次に取り組んだのが企業研修VRです。これが現在弊社が手掛けるVRで一番大きな領域を占めています。転換期となったのは2016年でした。2016年はVR元年と呼ばれているのですがご存じでしたでしょうか?実はVR元年がいつなのかは諸説あるのですが私は2016年を推しております!OculusRiftCV1、HTCVIVE、PlaystationVRという3つのデバイスが一般発売され、大きく盛り上がりを見せた一年です。我々のコンテンツ開発は2016年から数年間、Viveが主流となりました。外部センサー(ベースステーション)によるルームスケールVRが実装され、自分の足で歩く、物を持つ、触るといった動作ができる様になったのです。企業研修の中で効果が高いと言われるOJTがVR内で実施できるようになりました。ただこの考えは結果論で、2016年の最初に私がその様に見通せていた訳ではありません。

積木製作の運命を変える出会い 大切な考え方

その当時、とあるお客様からVRを「安全にまつわる教育で使用したい」との要望を頂きました。お話しを頂いたのは2015年の事でしたが、そこから開発をスタートし、2016年のVive発売後に完成しました。2016年当時、上述の様なVRデバイスが発売され、海外でもビジネス利用事例を目にする様になり、ビジネス系のメディアが日本の企業でどの様にVRを利用しているのか、調査を開始していました。実際にはまだまだビジネスで利用されている事例が圧倒的に少なかったので、弊社の取組みが際立っていました。メディアに多数取り上げられる事となり、安全教育にVRを活用するという考えが一気に広がりました。当然弊社に寄せられる問合せも以前の何倍にもなり、安全教育VRをそこからどんどん手がける事になります。安全教育VRを開発するにあたって、ルームスケールVRは不可欠です。自ら危険な場所に行って歩いたり、作業したりといった行動を現実と同じ様に再現するにはそれまでのデバイスでは不可能でした。この安全教育VR開発を通じて改めてその事を認識することができたのです。最初に安全教育VRを作りたいというお客様の声がなければ我々の現在の主力事業が全く別のものになっていたかもしれません。そのお客様には本当に感謝しています。
世の中の課題を解決するという事はビジネスの基本ですが、本当にその事に気付かされた気がします。そのお客様は常日頃、これまでの安全教育に課題を感じておられたと思います。どうにか労働災害をゼロにできないか、事故を減らす事ができないか、どうやったら良い教育ができるのかと。真剣に考え抜いた中で、VRというものが世の中に登場し、課題解決の糸口を見つけられたのだと思います。この様な思考は我々も持っていなくてはいけないものです。常に顧客視点で考え、何が課題なのか、何を求められているのか、どうすれば解決できるのか徹底した顧客視点を持つ事が重要です。更に言えば、顧客が気付いていない課題、不便さを解決する手法を提案できれば、もっと大きなビジネスになるのではないか、その様に思います。
例えばこのコロナ渦におけるハンコを押すという事。今までなら当たり前の様に行っており、不便とは全く思っていませんでしたが、リモートワークによって非常に不便である、非効率であるという事が顕在化しました。徹底した顧客視点でこのような潜在的な不便を解決するような仕組みを開発できないか、常に考えています。
コロナによる影響で一気に世の中が変わりました。働き方も大きく変わりました。これからのスタンダードになり得る様なサービスをスピード感をもって提供できるようになりたいと思っています。

ついに完成!安全体感VRトレーニング

話しがそれてしまってすいません。元に戻します。
安全教育VRの需要がかなり大きいのだと気付いた2016年末に我々でオリジナルのコンテンツを持ち、展開できないかと考える様になりました。オリジナルコンテンツを持つという事、その利点については恐竜戯画を制作した事で気付いていましたし、その経験が非常に大きかったと思います。最初に安全教育VRを開発させて頂いた会社のコンテンツを販売するという構想もあったのですが、こちらは実現しませんでした。その事により、自分たちのサービスとして展開していくという決心がつきました。世の中の労働災害を防止するという課題解決にも大いに役立てると思ったのです。
2016年末にとある会社様と安全教育VRの新規開発について打合せを重ねていました。その会社がJR西日本グループの建設会社である大鉄工業株式会社です。担当者に私の想いをお伝えし、共同で開発したものを我々のコンテンツとして販売させて頂けないかと交渉をしました。当然先方にもメリットのある形での交渉を行い、快諾して頂けました。ここで誤解の無いようにしたいのですが、大鉄工業には販売した金額のレベニューシェアは一切実施していません。大鉄工業が持っている安全教育のノウハウを広く世の中に広める、世の中の労働災害を無くすという思想で協力頂いています。この取組みの中で産まれたのが  「安全体感VRトレーニング」であり、第一弾のコンテンツとなる「建設現場における仮設足場からの墜落」です。最初に開発したコンテンツ内容が建設現場の足場という多くの企業に使用頂ける内容となった事は我々にとって幸運でした。現状コンテンツは10本程度ありますが、一番利用して頂いているコンテンツになっています。高所作業、高所墜落というのはVRで臨場感を表現するのに非常に向いていますし、世の中でも求められた内容になった事で、広く活用頂いていると理解しています。
現在「安全体感VRトレーニング」は160社以上の導入実績を持つ弊社の主力サービスに成長しました。2020年後半にはレンタルとサブスクリプションのサービスをスタートし、コンテンツのラインナップも充実させています。顧客の選択肢を増やし、利便性を高めてサービスの質を向上させています。
今後はクラウドを使用した履歴管理システムを実装し、VRに特化したe-ラーニングのプラットフォームに成長させていきたいと考えています。世の中はどんどん変化し、面白い技術がどんどん出てきています。5GやAI、IoTといった技術を駆使して皆様の課題解決になる様なサービスを産み出していきたいと思います。今後にぜひご期待下さい!

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