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My Social Issue 03 日本が本当に苦しくなっていく2040年から2050年を幸せな状態で切り抜けていくために大事なこと

My Social Issue
ウェルモ社員それぞれが強烈に意識をしている社会課題について語るインタビュー企画です。


――木村さんにとっての "My Social Issue" とはなんでしょうか。

木村:すべての人が最後まで生き甲斐をもち、感謝と幸福感の中で生ききることができる社会の実現と、その実現に対して阻害要因となる超高齢化社会における、あらゆる課題です。その課題解決の貢献が私のライフミッションのようなものになっていて「あたりまえの幸せを、すべての人へ」というウェルモのビジョンにも共通するものがあります。

――ライフミッションと言えるほどの強い想いは、ご自身の原体験に起因するのでしょうか。

木村:そうですね。大学時代、祖母が認知症で亡くなったことは私の人生に大きな影響を与えています。私の祖母は幼稚園の頃からキャッチボールもサッカーも、はじめて自転車に乗る練習にも付き添ってくれた元気いっぱいのかわいらしい人で、私とは仲の良い友達のような、祖父とは2人でひとつと言っても過言ではないおしどり夫婦でした。けれども認知症によって、彼女は人生をかけて愛情を注いできた家族を全て、きれいに忘れ去っていったのです。衝撃的でした。

人は死ぬ時誰しも自分の人生を振り返り、ともに生きた人たちに感謝して「人生幸せだった」と思うことを望むでしょう。けれども彼女はそうはならなかったのです。病気を発症して以来、夫のことを「お医者さん」、腹を痛めて産んだ娘を「校長先生」と呼び間違え、夫婦の絆は綻び、そんな彼女を前に私たち家族は疲弊していきました。あれだけ愛に溢れていた彼女の最後の瞬間、彼女にとっては、血の繋がりのない赤の他人に囲まれていたように見えていたでしょう。そのイメージは彼女が息を引き取ろうとするその瞬間から、私の頭に焼き付いて離れません。それを想って私はしばらく泣き続けました。心から、この認知症という病気はこの世で最も悲しみをもたらすものだと思ったんです。

――認知症によって家族の記憶が消えることで、介護される側も介護する側にも深い絶望に直面するのですね。

木村:現在日本にはおよそ800万人もの認知症患者がいると言われています。私たちの家族と同じように、800万人の患者に対して7〜8人の身内がいると単純計算するとだいたい日本の半分くらいの人口がこの悲しみと直面していることになります。認知症は不可逆な病気で、抜本的な解決策もいまだ見つかっていません。私たちはただ、進行を予防する手段しか残されていないのです。

――認知症患者、そしてそれを支える家族がますます増える一方で、残念ながらそれを支える介護のプロフェッショナルや現役世代の数は少なく、その負担は年々膨らんでいると聞きます。

木村:私自身「2040年問題」をはじめとする、介護負担のアンバランスさへの危機感を強くもっています。端的にこれは豊かではない現役世代4人が貧しい高齢者3人を支える時代になるということです。4年後、2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になります。75歳は、介護が必要になる確率が格段に上がる年齢。それに続いて2040〜2049年には団塊ジュニア世代が同様に75歳に達します。2つの世代の大きな違いは資産の差にあります。バブル期に沢山のものを得た団塊世代と、一方でバブル崩壊後資産形成が満足にできなかったジュニア世代。2040年を迎える頃、後者は42〜72%が生活保護水準以下の暮らしを強いられるとも言われています。

――貯蓄が十分ではない後期高齢者が増えるけれども、今後現役世代が増える見込みは期待できず今よりもさらに少ない人数で高齢者を支えていく未来が待っているのですね。

木村:それをせねばならない日本って、どれだけ大変なのだろうと。それこそ支える側は疲弊しますし、心が荒む人が出てきてしまうかもしれません。そういう社会の中で「当たり前の幸せをすべての人に」と私たちは声をあげていますが、この幸せの概念って難しいですし、当たり前の幸せってなに?という話もあります。私の解釈としては、今の当たり前の日常を保つことだと思うんです。でもそれは今のままでは到底叶いません。それをすこしでも食い止めていきたいのです。

――日本の現状からすると、「当たり前の日常を保つ」ことも決して容易なことではありません。

木村:当たり前の日常や幸せって、すごい難しい言葉で。この反対ってなにかを考えると有難いということ、いろんなことに感謝できる状態だと思うんです。結局自分の捉え方次第ではありますが、いかに当たり前のことを有り難く感じられるかが大事なのだろうかと。それが幸せにつながる、その考え方がポスト資本主義というところに自分の中ではゆくゆくつながっていくんですけれども、まさにそれが大事なのだろうと。つまり日本人の価値観をアップデートしていく。と同時に高齢者を支えるインフラを整えていく。このふたつが、日本が本当に苦しくなっていく2040年から2050年にかけての時期を幸せな状態で切り抜けていくために大事なことだなと思っています。

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