【図ットモ #23】正解のない災害現場で、どう判断するか【防災DXシミュレーション】
防災DXとは何か?リアルな震災シナリオをもとにした意思決定シミュレーションを実施。避難所マップ・物資管理・高齢者施設の被災状況--3つの要請が同時に届く中、あなたなら何を優先する?防災×デジタルの本質を考える図解系ラジオ、図ットモ第23回。
https://yamamoto.worklog-inc.com/blog/radio-23/
防災DXという言葉がある。
こういう言葉、だいたい便利そうで、賢そうで、ちょっと胡散臭い。
AIとか。 ドローンとか。 ダッシュボードとか。 いかにもDXっぽい横文字が並ぶ。
でも、現場で本当に必要なのは、もっと泥くさい。
誰が困っているのか。 どこにいるのか。 何が足りないのか。 その情報を、ちゃんとつなぐことだ。
紙に書く。 壁に貼る。 あとでシステムに転記する。
いや、昭和かよ。 と思うかもしれない。
でも実際、そういう現場はまだある。一面にホワイトボードシートを貼って運用し、あとから入力するような光景を語っているし、災害医療の現場では被害状況や支援ニーズを共有するためにEMISのような仕組みが使われている。つまり問題は「デジタルがゼロ」なことではなく、「情報がつながり切っていない」ことの方だ。
とはいえ、紙でもその場は回る。これが厄介だ。
回るから、変わらない。 回るから、後回しになる。 回るから、「まぁ今回もこれで」となる。
でも、その“回ってる感”のしわ寄せは、だいたい被災者にいく。
県は情報を持っていない。 市町村も全部は把握できていない。 支援団体ごとに持っている情報もバラバラ。
すると何が起きるか。
どこに避難していますか。 何が足りないですか。 薬はありますか。 水はありますか。 暖房は使えますか。
全部大事な質問だ。 でも、被災した直後の人に何回も聞くのは、普通にしんどい。
だから、防災DXは 「現場をかっこよくIT化する話」 ではない。
被災者の負担を減らして、支援を速くするための話だ。
ここを履き違えると、防災DXは一気に薄っぺらくなる。
防災に必要なのは、最先端の何かではない。 まずは、情報連携だ。 まずは、初動だ。 まずは、二重入力と重複ヒアリングを減らすことだ。
地味すぎる?
そう。 防災DXは、めちゃくちゃ地味だ。
でも、こういう地味な仕組みの差が、現場の強さを分ける。
さらに厄介なのは、災害が毎回ちがうことだ。
地震か、豪雨か。 冬か、夏か。 感染症か、停電か。 都市部か、過疎地か。
条件が変われば、必要な情報も変わる。
実際、動画では能登半島地震の話として、冬場の災害では暖房機器の有無が命に関わるケースがある一方で、既存システムにその項目が最初から入っているとは限らない、という話が出ていた。つまり、防災の仕組みは「最初に全部決めて完成」では弱い。
だから僕は、
あとから変えられること。 すぐ直せること。 必要なら、その場で仮説ベースで作れること。
災害対応で悠長に要件定義してる暇なんてない。
レビューして、承認をもらって、設計書を整えて、ようやく着手。
そんなことやってたら、状況の方が先に変わる。
下手したら、人が死ぬ。
これは大げさでも比喩でもない。 防災の開発は、時々そういう世界だ。
EMISのリプレースの話も象徴的だ。
10年以上前からある災害医療の情報共有システムを、フルスクラッチからローコード寄りの柔軟な仕組みに置き換えた。災害は想定外の連続だから、後から項目を足したり、運用に合わせて修正したりできる柔軟さが重要になる。これは単なる開発手法の好みではなく、防災という領域の性質そのものだ。
最近は、民間のデジタル人材を災害時に派遣するD-CERTのような動きも出てきた。
これはかなり大事な一歩だと思う。
デジタル庁の公開情報でも、大規模災害時に被災都道府県へ入り、必要なデジタル支援メニューを提案・具体化し、災害対応を円滑に進めるためのチームだと説明されている。僕自身も、能登半島地震や奥能登豪雨での防災DX支援の経験を踏まえ、デジタルコーディネーションセンターの理事として関わっている。
ただ、ここで終わるとまだ足りない。
防災って、放っておくとすぐに 「いいことだから、善意でやろう」 に回収される。
もちろん善意は尊い。 プロボノも尊い。 ボランティアも必要だ。
無理なものを美談で包むな、と思う。
防災が大事だと言うなら、平時から予算をつけるべきだ。 企業が入れる市場にするべきだ。 人材が育つ構造を作るべきだ。
災害のたびに 「今回はみんなで頑張りました」 で終わっていたら、毎回リセットされる。
本当にもったいないのはそこだ。
コロナで作った仕組みも、災害時に作った仕組みも、平時に閉じてしまえば、次にまたゼロからやり直しになる。
それ、あまりにも非効率だ。
日本は災害大国なんだから、 災害が起きてから考えるんじゃ遅い。
平時に考えて、平時に試して、平時に直しておく。
本来、防災DXってそういう投資のはずだ。
にもかかわらず、平時には後回しになる。 これが一番まずい。
現場の根性を前提にした仕組みは、仕組みとは呼ばない。
属人的な頑張りでなんとかなるうちは、社会が本気を出していないだけだ。
だから、防災DXをもっと当たり前の話にしたい。
それは、IT業界のためでも、DXという言葉を流行らせるためでもない。
次の災害が来たときに、 前回より少しでも被災者の負担を減らすためだ。 前回より少しでも支援を速くするためだ。 前回より少しでも現場を混乱させないためだ。
派手じゃない。 映えない。 でも、めちゃくちゃ重要だ。
防災DXは“便利なIT化”ではない。
社会の応急処置を、少しでもマシにするための基盤整備だ。
そして本当は、こういう地味な基盤こそ、国が本気で整えるべきものだと思う。
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