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YAMAPのデザイナーは言う、「世界的に見ても貴重なポジション」

職種は一言でいえばデザイナー。しかし、樋爪大輔さんの携わる仕事は多岐にわたる。ここ数年で様々な事業展開を見せるヤマップ。それに伴い、デザイナーが関与できる仕事の幅も広がっている。8月にはアップルウォッチにも対応し、既存ユーザーが320万人を超えるアプリの中でデザインに関わる醍醐味を聞きました。

目次

▶︎今、参加しないとダメだと思った

▶︎誰でも活躍できる幅広いフィールドがある

▶︎チームプレイでアップルウォッチに対応

▶︎すぐそばの登山者も、自然も地球も助けたい

▶︎デザイナーとしてのプライドはない。でもこだわりはある

今、参加しないとダメだと思った

樋爪さんの主な仕事は、一般的にはUI/UXデザイナーといわれるもの。UIでは、人とデジタルを繋ぐ部分であるアプリの表層のデザインを行う。UXでは、登山者であるユーザーがやりたいことを達成するところまでをサポートする。これらは、ヤマップの事業の要である登山地図アプリに関わる仕事。しかしヤマップの手がける事業は、アプリの他にもYAMAP STOREでの登山用品の販売やYAMAP MAGAZINEでの情報発信、自治体や企業向けのサービスなど幅広い。

樋爪さんは、UI/UXデザイン以外にも、YAMAPのプロダクトやサービス全てを通じたアートディレクションも行う。デザインがYAMAPの世界観に合っているかをチェックし、ものによってはデザインそのものを担当することも。この他、WEBデザインにも携わる。過去にはECサイトの新商品リリース紹介ページのデザイン、自治体やメーカーとコラボしている特設サイトの作成もおこなっていた。

社歴は3年。それまでは、印刷会社や出版社、デザイン事務所などで経験を積んできた。前職では会社に属してはいたものの、社内の一事業を営業からクリエイティブ関連まで全て一人で動かすという、ほぼフリーランスのような働き方をしていた。一般的にデザイナーという職種は、会社から独立してフリーランスになる人が多いイメージだが、樋爪さんはその逆。どうしてだろう? ヤマップに入社したきっかけを聞いてみた。



樋爪「山に登るようになってYAMAPを知ったことも大きかったんですけど、今この会社に行かないとダメだと思っちゃったんです。ユーザーとしてYAMAPのアプリを使っていて、周囲からもYAMAPの話題が入ってくるようになって、サイトを見ているとデザインもいい感じにどんどん変わっていて…、今僕も参加しないとまずいなと思ったんです。1ヶ月後にアプローチしてもダメだと思っちゃったんです。

いろんな記事で代表の春山さんの思想を読んで、面白い会社だとも思っていました。まさか福岡に会社があるとは思っていなくて、地元だったというところも大きかったです。趣味だった登山に関われること、デザインの過渡期だったこと、地元福岡であること、ここで自分の力を活かしてみたいと思ったんです。スタートアップの企業が、東京ではなくこの福岡で、登山という特殊な分野で面白いことをプロダクトにして事業化しているという面で、その時、ヤマップが一番きらびやかに見えたんです。そこに加わりたかった。

フリーランスって結構孤独なんですよ。同業者の友達もいるけど傷の舐め合いになっちゃう。技術的に迷った時や問題が起こった時も自分で解決しなくちゃいけない。すぐに人に相談することもできないし、仲間がいない状況だったりします。それが寂しかったのもあります。誰かと一緒にプロジェクトチームとして何かを作り上げていきたいという思いもありました」

誰でも活躍できる幅広いフィールドがある

今しかないと思い入社した直後から、自発的に動く周りの社員を見てレベルの高さに驚く。



樋爪「最初は正直、大丈夫かな、ついていけるかなと思いました。優秀なトッププレイヤーがたくさんいる状況でした。でも、みんなの流れに乗れるようになって、自分から提案できるようになると、任せてもらえるんです。場を持たせてくれるしサポートもしてくれる。YAMAPのアプリ自体が好きだったんで、仕事は大変ですけど精神的に苦じゃなかったんです。やってる事が最終的に人のためになるなら、なんかいいよねっていうところにつながっていたのかな。時間の経過とともに段々そう思えるようになっていきました」

ヤマップでは、アプリだけの会社ではできないことができるという。WEBデザインや商品のデザインなど、これまでの自分の経験を活かせる働き方ができている。しかし、会社の業務が多岐にわたるほどデザイナーの仕事は増えていく。

樋爪「永遠のテーマですね。デザイナーがどこまでやるかというのは。本人次第だと思うんですけど、例えば、何に幸せを感じるかって人によるじゃないですか。職人のようにずっとデザインの表層を作ることに幸せを感じる人もいるし、全部やりたい人もいる。ヤマップではどちらも選べると思います」

これまで登山業界では、ウェアや道具にはデザインが介入しているけれど、登山者の行動部分においてデザインの要素が入ることはあまりなかった。その分、今YAMAPが求められていることは多いし、今後も増えていくのでは?

樋爪「それだけ、自分の経験が活かせたり、活躍できたりする幅広いフィールドがあると思っています。僕は気になってしまうんです。これは違うんじゃないか、こうした方がもっと良くなるんじゃないかと常に思っていて、首を突っ込んでしまいます。そしたらどうしてもやる事が広がっちゃうんです。大変なんですけどそれが経験となって、次のプロジェクトにも活かせています」


樋爪さんが気になる部分とは?



樋爪「これじゃYAMAPとしてどうなんだろう?とか、自分ごととして考えてしまうんです。リリースした後、どうなるかまでを考えないといけないと思っています。ユーザーさんがどういう反応をするか予測を立てないといけない。一部分だけ綺麗にして手放しても、綺麗になっただけで使い勝手悪いよねってなることもあるじゃないですか。

アプリのデザインをするだけだったら、色を変えるとか形を変えるだけなんですけど、実装した時、動きは良くなるけどバッテリーの持ちが悪くなるかもしれないというところまで考えないといけない。

我々の成功というよりは、ユーザーさんにとっていいと思うものを考えて議論しています。マネタイズがどうだという話もあるけれど、それを出したとして世の中が良くなるのかとか、ユーザーさんが幸せになるのかとか、そっちの方が大切です。デザイナーがそこまで見るのかとも思うんですが、見ようと思えばそこまで見れます。自由なフィールドがあるから、やろうと思えばどんどん成長できます」

チームプレイでアップルウォッチに対応

樋爪さんは、YAMAPのデザインシステムはまだ成熟しきれていないという。だからこそ、自分の知見を生かしながらアップデートしていける。そして、自分がデザインしたものを、ユーザーが実際に使っている場面に立ち会えるというのも他ではあまりないこと。



樋爪「モニターリサーチなどではなくて、自分が登山をしている最中の会話の中で直接意見をいただくことができ、それをすぐ活かすことができます。

山頂で出会った人とは大抵話すじゃないですか。アプリの使い方を聞かれて教えてあげることもあるし、ヤマップだと名乗って意見を聞くこともあります。みなさんやさしくて、たくさん意見をくれます。リアルな生の熱量を感じられるところは面白いです」

この夏、YAMAPはアップルウォッチでも使えるようになった。YAMAPユーザーの中には、待ちわびていた人も少なくない。要望はたくさんあった。しかし、ユーザーの中でアップルウォッチを使っている人がどれだけいるかとなると、どうしても優先度は低くなりすぐには実施できなかった。

しかし、アップルウォッチ対応をおこないたいと考えていたエンジニアそれぞれが水面下で動いていた。iOSのエンジニアは、テスト版でYAMAPアプリがウォッチとリンクできるかをテストし、樋爪さんはUIの流れを模索していた。プロダクトマネージャーはユーザーアンケートを実施して(ユーザーの要望の高さを測り)、社内での開発優先度を上げるための理由を整理してくれた。今年の5月に正式にプロジェクトが走り出し、8月にはリリースするというタイトなスケジュールで実施に至った。



樋爪「ユーザーさんには期待されて当然だなと思っていました。それは、開発を担当したチームの僕たちが作ったものだからというわけではなくて、YAMAPはこれまで様々な機能をつくって信用を得てきました。そのYAMAPをアップルウォッチでも使いたいという要望は当然あるだろうと。

今までの積み重ねがあったからチームプレイでここまで出せたんだと思っています。たまたま我々がそれを担当しただけです。つくりたいという自分たちの思いもあったので開発者たちの熱量も高かったです。とにかくシンプルで簡単に使い始める事ができるアプリにしようというコンセプトを掲げ、チームとして一丸となって取り組んだプロジェクトでした。」

すぐそばの登山者も、自然も地球も助けたい

ここ数年のヤマップの事業拡大の速度は目まぐるしい。そこに最初に突入するのがデザイナーだと樋爪さんは言う。面白いと思えばそこにいけばいいと。大変ではあるけれど、現状維持で留まっているより、みんなで一斉にチャレンジするのは楽しいし、可能性はさらに膨らむとも。樋爪さんが目指すデザイナーとはどんな人材だろう。



樋爪「個人的には、デザイナーはいろんな人に声を掛けてもらわない限りは自分の力を活かせないと思っています。デザイナーとアーティストの話になってくるんですが、アーティストは、自分が発信したいものを共感してくれる人に向けて作品をつくることが多いと思うんですが、デザイナーは、その人が達成したいことをサポートするものだと思っています。僕が目指すのは、いろんな人に声を掛けられる、誰にでも頼られる存在です。

そのためにも、みんなのやりたいことをサポートするんでバンバン言ってくださいとは伝えています。なんでも自分事として考えて、これは確かにいいと思ったことには、自分ができる技術があればサポートします。

春山さんと初めて面談したとき、僕が「利他」の話をしたらすごく共感してくれたんです。僕は動機としてまず、自分が幸せになりたいというのがあって、自分が楽しくやっていたら、それが人のためにもなっていたというような、一つのことで二つを成すようなことが好きなんです。

春山さんの思想は10年先をいっていると思っています。すごく利他なんですよ。常に自分のことではなく、他の人のことを考えている。本質はそこだと思っています。デザイナーとしては、アプリなどのデジタルの表層をデザインする仕事に関わらせてもらっているんですけど、やっていることはそれだけじゃないと思っています。すぐ近くの登山者も助けられるし、自然や地球のことも考えている。そこに向かっている船にメンバーとして一緒に乗れていることに誇りを持っています。貴重なポジションをいただいてるなと感じています」

そんな代表の春山さんのメンバーへの接し方も含め、ヤマップの人たちは口を揃えて社内はフラットだという。どんなところでそう感じるのだろう?

樋爪「まず役職で呼ばれることはないし、みんなが主役という感じなんです。役職っていうのは、たまたまその人に与えられたロールであって、その人の能力というわけではないんですよね。お互いをリスペクトしています。ステージはたくさん用意されているので、私はこういう経験をしてきたので、ここを活かせないでしょうか?というように、提案して入ってきてもらってもいいと思います。こちらの受け入れるハードルはものすごく低いです。困っている人はみんなでサポートします。これからどんどん事業が増えていきますし、新しい機能やアプリも実装されてきます。そこにデザイナーとして携わることができる。成長して楽しくなっていくこの過渡期に、仲間として参加して欲しいなと思います」

デザイナーの中には、WEBデザインのパターンを身に付けるために、受託会社で経験を積みたいという人も多い。しかし樋爪さんは、YAMAPは今後もどんどん新しいことをやっていくので、自社開発の会社であれ様々な経験ができるという。受け身ではなく、能動的にアプトプットできるところもやりがいの一つだと。

自身がYAMAPユーザーだった頃は、改善点の要望をフィードバックするほど熱心なユーザーだった。20代の頃からデザイナーとしてバリバリ働いていたという樋爪さん。一見すると、山に登りそうには見えない都会的な風貌。登山を始めたきっかけを聞いてみた。



樋爪「趣味で写真や動画を撮っていて、ドローンをどこで飛ばそうかとなったときに山に行き着いたんです。GPSアプリがあるから、登山用のアプリもあるだろうと思って探したらYAMAPがあって、YAMAPを使って山に登るようになりました。誰かに教えてもらうでもなく、最初から自分でいろいろ調べて、一人で登っていました。

でも最初は寂しかったんですよ。地元の山に登ったんですけど、丸一日誰とすれ違うこともなくて、事前に調べた山での挨拶の仕方を一回も使えなかったな…と思いながら下りました(笑)。帰ってから福岡で一番人気の山を検索したら宝満山が出てきて、行ってみたらめちゃ人いるじゃん!ってなりました」

デザイナーとしてのプライドはない。でもこだわりはある

ユーザーとしてYAMAPを楽しみながら使い、それをより良いものにしたいという思いで今に至る樋爪さん。モットーは初心を忘れず利他的な思考で業務を行うこと。樋爪さんにとっての初心とは?

樋爪「謙虚であることですよね。学ぶことを諦めないこと。変化を恐れる人間になってはいけないと思っています。自分の技術も時代に合わせてアウトプットしていくことが重要かなと思っています。でも難しいですよね」

インタビューの話が来た時も、自分じゃない方がいいのではと思い、他の人を推薦したという。しかし、ヤマップのカルチャーに沿った人が来て欲しいという思いと、自分の勉強のためにと引き受けてくれた。

何度も”利他”や”サポート”という言葉を使っていた樋爪さん。様々なプロジェクトに携わり、いろんな場面で選択や決断を迫られることが多い中で、どこまで与えられた要望に沿い、かつどこまでデザイナーとして自分をブレずに保っていられるのかが気になった。



樋爪「最近、タイムリーにそういったことをどうにか言語化できないかなと思ってたんです。僕はデザイナーとしてのプライドはないんですよ。でも、デザインへのこだわりはあります。

自分ではかっこいいデザインができたと思っていても、否定されることはよくあります。20代の頃はそれで腹を立てたりもしていました。自分が作ったものが最高だと思ってたから(笑)。でもそれって、誰を思ってつくったとか、誰のためにつくったというのがなくて、自分だけのものなんですよ。それはデザイナーのただのプライドだし、誰も幸せにならない。自分だけが幸せになっちゃう。

そうじゃなくて、オーダーに合ったものを作り上げて、それをさらに自分の力を活かして研ぎ澄ませていく。その人が思ったものと自分の持ち味を合わせて、その人が叶えたいものをつくりあげていく。それがメインだと思っています。デザイナーとしてのプライドにとらわれていたらいつまでも成長できないと思います。

YAMAPでいえば、ユーザーさんの山登りがより魅力的になるようなサポートを、デザインでいかに叶えられるか、そこはブラさないということです。YAMAPって使ってて楽しいよねとか、いいよねとか、ユーザーさんの感情を動かせるようなものをつくっていきたいですね。自分の好きなことで誰かを救えたり、サポートできたりするところが一番のモチベーションだと思っています」

デザイナーと言われることがむず痒いこともあるという樋爪さん。このスタンスが仕事の幅を広げているような気がした。デザイナーとしてヤマップで働く魅力は、登山やアウトドアという特殊な業界でデザイン領域に関われることの稀少性と醍醐味だという。世界的に見てもなかなかないポジションだと感じているそうだ。そして、これからますます面白くなっていくとも。樋爪さんに言わせると、仲間に加わるなら、今、かもしれない。

                                 (文=米村 奈穂/2022年9月)

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