1
/
5

Wantedly Journal | 仕事でココロオドルってなんだろう?

Company

“食べる”お菓子の枠を超え、“コミュニケーションを生み出す”お菓子をつくる

クラシエフーズの「知育菓子®」が売り上げを伸ばし続ける理由

2016/11/08

東京都港区。レインボーブリッジをのぞむ場所にクラシエホールディングス株式会社の本社があります。グループ内で食品事業を担うクラシエフーズ株式会社は「甘栗むいちゃいました」や「フリスク」といったロングセラー商品で知られる一方、「ねるねるねるね」をはじめとする「知育菓子®」の開発にも力を入れ、着実に業績を伸ばしてきました。

「知育菓子®」とは、「作りながら、遊びながら、楽しみながら自然と豊かな想像力が身についていくおかし」として企画され、2005年に商標登録されました。前身であるカネボウフーズだったころから粉末のジュースの素があり、その粉末をお菓子に応用できないかという着想から、現在の水と粉でさまざまなお菓子を作る知育菓子が生まれたそうです。

このジャンルでは9割のシェアを誇り、30年以上の歴史で現在も26種以上の商品を発売しているクラシエフーズ。今日お話しを伺うのは、クラシエフーズで知育菓子の企画開発をする津田 未典(つだ みのり)さんです。マーケティグ室菓子グループ課長として知育菓子の企画・PR・ディレクションをおこなう津田さんに、知育菓子を手がける面白さについて伺いました。

知育菓子ができるまで

ターゲットは2、3歳から小学校高学年までと幅広い知育菓子ですが、商品開発までにはどのような道のりがあるのでしょうか。

「まずは子どもがどのような思考をするか考え、仮説を立ててから企画をしていきます。その後、研究所のチームと話し合って商品に落とし込むにはどうしたらいいかを決めていくという流れです」

−新商品を考えるときは、どのようにするのですか?

「切り口はいろいろあります。ひとつは、動作基準で考えるということ。お子さんの遊びや夢中になってくれることって、動作で分けることができるんです。たとえば、『丸める』『伸ばす』『切る』『重ねる』といったふうに。なので、これまでの商品で『重ねる』のは少なかったからやってみようとか、『混ぜる』は充実してるから今回はいいね、のように動作基準で考えていくこともあります。

ほかには、子どもたちがなりたい、なりきりたいごっこ遊びで考えたり。おすしやさん、ケーキやさんはあるから、他に何やさんがあるかな、と。

お菓子の種類を先に考えることもあります。たとえば『自分で作れるカラフルなおかし』を企画しようと。すでにキャンディやグミ、ラムネはあるから、カラフルに作りたくなるものが他にあるかなと考えるんですね」

−そのプロセスでいろいろな選択肢が生まれてくると思うのですが、これだけは外せないというポイントはあるのでしょうか?

「外せないのはなんと言っても『楽しい』と『おいしい』です。やはりあくまでお菓子ですから、いくらコンセプトが良くても、最終的においしくないとリピートしてもらえません。

それから、もう一点大切にしていることは『クライマックスをつくる』ということなんです。実は、過去に “パンダの形のみたらしだんご” を販売していたことがあるのですが、丸めて、パンダの顔をつくって、串に刺して、タレをつけて完成というもので、いまひとつ動作や遊びの部分に盛り上がりがなく…商品としては長く続きませんでした。やはり子どもたちが『できたー!』という達成感やドキドキを感じるためには、ここぞという工程が必要だと思ったんです」

−子どもの気持ちになって商品価値を検討するのは難しそうです。

「子どもの頃の気持ちを思い出しながら商品を考えても無理があるので、実際にお子さんをお呼びして試作品に挑戦してもらい研究を重ねています。お子さんはなぜそれが気に入ったのかやおもしろいと思ったのかをなかなか言葉では説明できないので、表情やリアクションから推察する必要があって…その様子はチームで観察しているのですが、『この工程が退屈そう』とか『ここは何分かかっていた』といった情報を収集するんです。そのデータを分析して、調整を繰り返すので、ひとつの商品を作るのに最低1年間はかかります。長いものは何年も温めることもあります」

知育菓子の種類は今出ているもので26種類。子どもは新しいものを喜ぶので、常に新商品を開発し入れ替え制で展開していくそうです。一方で、『ねるねるねるね』は30年、『たのしいケーキやさん』は10年近く売り続けていて、新しいものもロングセラーもどっちも大事に育てていく方針なんだそう。

「知育菓子は発売する周期にも工夫しています。たとえば、びっくり系の商品は驚きがコンセプトなので、一度出したら2、3年は店頭に出しません。お子さんとしても、びっくり系のお菓子は、初めは楽しくても何度か遊んだら新鮮味を失ってしまいますよね。でも2、3年寝かせると、今度は弟さんや妹さんが生まれている頃だったりする。そこでまた久しぶりに遊んで新鮮にびっくりしてもらえるんです」

−そうやってこれだけさまざまな種類の知育菓子が生まれたんですね。特に売れ行きの良いものなどを紹介していただけますか?

「知名度でいえば『ねるねるねるね』。次に売れているのがこちらの『おえかきグミランド』です」

「グミというお菓子は本来そのままパクっと気軽に食べられるものなのに、知育菓子だと粉と水を混ぜて作らないと食べられないですよね。それって大人から見れば面倒なのですが、そこがまさにお子さんにとっては楽しいポイントなんです。家に帰らないと作ったり食べたりできないから、道中わくわくしながら持って帰ってくる。そして自分で作ってお母さんに見せたりして楽しんでからようやく食べるわけなんです。

また、それぞれコンセプトも違います。『ねるねるねるね』は、2歳や3歳くらいからできるもので、『どうして色が変わるんだろう? どうして膨らむんだろう!』という不思議さや、自分ひとりで簡単に作れることに焦点を当てています。

こちらのポッピンクッキンシリーズやハッピーキッチンシリーズは、少し難易度が上がって、たとえばさきほどの『おえかきグミランド』であれば、自由に色を選んだり混ぜたり着色したりという過程で、『もっといろいろ作りたい』という創造力を育てます」

「こちらの『つくろう! おべんとう!』では、お弁当作りの気分が味わえるというところから、“まるで大人になった気分” を楽しめる点に魅力があります。徐々にステップアップできるようにシリーズ展開しているので対象年齢は幅広く設定されていますが、子どもというのは『これをやったら次はもっといろんなものを作りたい!』と思ってくれるものなので多少の背伸びがあっても次々挑戦してくれる子が多いんです。子どもの楽しいごっこ遊びはうちで全部埋め尽くすぞという気持ちでどんどん商品数を増やしています」

−本当にお菓子というより、遊んで学べる教材のようです。

「そうですね。なので、競合は普通のお菓子メーカーだけとは考えていません。『(お腹を満たす)お菓子』としてのジャンルではなくて、『遊びにまつわること』全てがライバルだと思っています。お子さんが学校から帰ってきて遊べる時間は限られているので、そこでどうやって知育菓子を選んでもらうかというのを常に考えているんです」

コミュニケーションの一助に

知育菓子の特徴は考える力を育て、知的好奇心を刺激し、楽しみながら成長できるという点。そして同時に、親子のコミュニケーションを促進するものでもあります。

−2011年に大震災がありましたね。子どもたちが家で過ごす時間も増えた時期でしたが知育菓子には何か変化がありましたか?

「震災後は、お子さんが家にいるというだけでなく家族の絆を重視する人が増えたことから、知育菓子も“家の中で遊べるお菓子”としてしばしばメディアに取り上げられました。

知育菓子というのは、お子さんの年齢によっては大人の助けが必要となるときもあるのですが、親御さんからしたらそれが手間に感じることもあるんです。ですが、震災後は『“手伝わなくてはいけないもの”という印象から“一緒に楽しむもの”というふうに捉え方が変わった』と言ってくださる方が多くて。その頃ボードゲームのブームも復活したと聞いていますが、知育菓子も『家の中でできるコミュニケーションツール』のひとつとして伸びたのだと思います」

−それから5年経ちましたが、その後商品傾向に変化はありましたか?

「これまでは『ひとりで作って食べて、楽しかった!』と完結する商品が多かったのですが、コミュニケーションを重視するようになって、誰かと作ることを前提とした商品が増えました。今売り出している『ミックスピザ』や『くるくるたこやき』は電子レンジを使うので大人の助けが必要ですし、今年の11月には大勢で作れる、パーティ向けの商品も発売する予定です。

また、直接的に一緒に作るわけではなくても、ソーシャルネットを通じて盛り上がるという例もあります。たとえば『ねりきゃんランド』という商品はソフトキャンディを成型して好きなものを作れるというものなのですが、親御さんってお子さんの頑張る姿を写真に収めたいし、お子さん自身も自分の作品を撮りたいじゃないですか。それを発表する場を設けようということで『ねりきゃんランドコンテスト』というのを開催したところ反響が大きくて。クリエイティビティが見せられるものなので、お子さんだけでなく大人の方もそれこそ“大人買い”してハイクオリティなものを応募してくださったりと盛り上がりを見せています(笑)」

いろいろなお菓子のあり方を提案するクラシエの知育菓子は、その特殊性からか外国人からの人気も高く、おみやげとしても需要を伸ばしています。

−海外への展開についても、教えてください。

「まず、インバウンド需要が爆発的に増えていて、お土産として大量に買って帰ってくださる方がとても多くいらっしゃいます。テレビ東京の番組『YOUは何しに日本へ?』で『ねるねるねるねを買いにきた』と答えた方がいて、番組で紹介されました。輸出に関しては、中国にむけての輸出をスタートしたところです」

−海外の方に人気の理由はなんでしょうか?

「YouTubeで『知育菓子を作ってみた』という趣旨の動画が上がったのが火付け役となったようです。動画で見ると日本語がわからなくても作り方がわかりますし。特に『たのしいおすしやさん』は外国の方に人気でSNSでシェアしてくださる方も多いので、また次の観光客が買ってくれて…といったふうに評判が広がっているようです」

粉末と水だけでさまざまな造形のお菓子が作れる…しかもそれが日本の伝統食である「おすし」を模したものとあれば外国の方に大人気になるのもうなずけます。

さて、前半では知育菓子の人気の秘密を紐解いてきました。後半では初めて知育菓子を担当することになったときの津田さんの戸惑いから、仕事の楽しみ方、今後のビジョンまでお話していただきます。

後編▶知育菓子はついに教育現場へ。ロングセラー商品「ねるねるねるね」の可能性と未来

Interviewee Profiles

クラシエフーズ株式会社 マーケティング室 菓子グループ課長 津田未典
大学卒業後、化粧品会社にてプランナーとして、新ブランド立ち上げや商品企画開発に従事。 2006年カネボウフーズ株式会社(現クラシエフーズ株式会社)に入社。 マーケティング室にて菓子の企画開発・デザインディレクションなどを担当。 2010年より子ども菓子担当となり、ねるねるねるねブランドリニューアルや知育菓子®ブランドコンテンツ“ねるねとみんなのわくわくタウン”を立ち上げ。http://www.nerune.jp/ 現在の主な担当ブランドは、ねるねるねるね、ぷちっとシリーズなど。 マガジンハウスWEBマガジン“Hanakoママ”にて「育て!クリエイティビティ!」連載中。http://hanakomama.jp/keywords/creativity/

NEXT