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知育菓子はついに教育現場へ。ロングセラー商品「ねるねるねるね」の可能性と未来

クラシエフーズ津田未典さんが暗中模索の末に掴んだビジョン

2017/01/27

国内外に広くファンを持つクラシエの「知育菓子®」。その企画・プロモーションを担当する津田 未典(つだ みのり)さんにお話を伺っています。

前編▶“食べる”お菓子の枠を超え、“コミュニケーションを生み出す”お菓子をつくる

さて、7年前に産休明けで職場復帰した津田さんは、人事異動で初めて子ども菓子の部署へ配属されました。後編では、そこから現在にいたるまでに津田さんがどのような道を歩んできたのかに迫ります。

初めての子ども向け商材への戸惑い

津田さんは前職で化粧品の開発、クラシエフーズへ転職した後は大人向けキャンディの開発に関わった後、子ども菓子の部署へと移ってきました。これまでは大人の女性をターゲットとした商材だったため、子ども菓子の担当になった直後は戸惑うことも多かったと言います。

「まったく未知の世界だったので…たとえば『子ども向けのお菓子がぶどう味のものばかりなのはどうして?』など新鮮なことばかりでした」

−そういえばぶどう味多いですね! なぜなのでしょう?

「なぜと言われると一言で説明できないんですが、幼い頃からぶどう味の商品に触れて育つのでぶどうが好きというよりぶどう味が好きという状態になっていると思うんですよね。味でいうと、甘さと酸っぱさが両方ある点が人気で、ソーダ味のお菓子も多いです。ただソーダ味は未就学児だと苦手という子もいるので、年齢によって嗜好がちょっとずつ変わってきます。

人気のフレーバーに共通する特徴に『食べ慣れているんだけれど家ではなかなか出てこないもの』というのがあるような気がします。たとえば柑橘系も、みかん味よりはオレンジ味が好まれます。最近はマンゴー味のものもよく見かけますが、昔はマンゴーのスイーツやデザートって全然なかったんですよね。5年くらいのスパンで見返してみると、肌感覚ではありますが、味の幅が増えてきたなあというふうに感じています」

−興味深いです。味以外にも子ども商材独特の要素はありますか?

「パッケージデザインが独特だなと。昔はイラスト中心のデザインでしたが、最近の子はお父さんお母さんがスマホで撮った写真を見せてもらったりしているせいか写真や動画をすごく見慣れていて。だからイラストよりもリアルに物を見せてネタバラシする写真のパッケージの方が反応がいいんですよ。『この写真のが作りたい!』となるわけなんです。

それから、コピーですね。ボキャブラリーの少ない子どもに興味を持ってもらうために、『おいしい』以外の文言でどうやって商品の魅力を表現できるか考えるんです。たとえば『ねるねるねるね』のコピーの中に“ふわふわおかし”という言葉があります。聞くとものすごく単純な言葉なんですが、ここに至るまでにいろいろな調査・検討を経ています。“ねって” がいいのか “まぜて” がいいのか、“おいしい” が適切なのか、“ふわふわ” が中身に合っているのか…それらをひとつひとつ子どもたちに聞いて検証していき、最終的に『ねっておいしいふわふわおかし』というコピーができました。長らく商品開発をしてきましたが、ここまで制約のある中で魅力的なコピーをひねり出すというのは初めての経験だったので逆に燃えましたね(笑)」

仕事とプライベートに垣根はない

新たな挑戦ジャンルだからこそ燃える…そんなアグレッシブさを持つ津田さんは、プライベートの時間も仕事と切り離して考えることはないそうです。

「年に100回ほど子ども向けのワークショップに足を運んでいます。たとえば紙コップを一万個使ってからだの何かを作ろうとか、忍者体験とか…(笑)いろいろなものがあるんですよ。

あとは、今子育て中でもあるので、子どもが集まる場所へよく行くようになりましたし、テレビや本を見ているときも子どもに関することには自然と関心を寄せるようになりました。それから、先ほどのコピーの話と通じるのですが、自分の子どもに絵本を読むときに、子どもがおもしろがる音やオノマトペにはどういう特徴があるのかなどもインプットしています。弊社はお菓子を作っている会社ですが、お菓子だけでなく『子ども』という大きい括りで物事を観察するようになったので、見ている世界が広がったと感じますね」

津田さんはスーパーマーケットに行くときでさえ、親子の様子に目がいくのだと続けます。

「たとえばお子さんがお母さんに『これを買ってほしい』とねだっているのを見かけたら、その理由が気になってしまって。それは『だってこれをやってみたいんだもん』だったり『これがついてるからほしい』だったりいろいろですが…そういう何気ない発言から、お子さんが何に興味を持っているのか知ることができるんです」

−日常と仕事が常にリンクしているんですね。リフレッシュはどのようにするのか伺いたいです。

「自分の仕事で関わっていることには自然と興味がわいてくるので、商品や子どもについて忘れたいと思ったことはないんです。ですが、保育園に息子を迎えに行ったあと働くお母さん仲間でうちに集まって、子どもたちには知育菓子で遊んででもらって(笑)、その間にちょっと飲んで解散! というような気晴らしはしています。とはいえその会話も、全部仕事にとって有意義なものなので仕事を完全にシャットアウトした時間というわけではないですが」

−どのような会話が参考になるのでしょう?

「自分の子育ての範囲だと我が子の年代のことしかわからないですが、お兄ちゃんやお姉ちゃんがいるご家庭のお母さんの話を聞くと、その年代ではこんなキャラクターがはやっている、とかこの絵本が読まれているなど知ることができます。

あとは『2、3歳からねるねるねるねをやらせて大丈夫かな?』と相談されたりすると、『どこが気になる?』とヒアリングできたり。『スプーンが小さくて持ちにくそうにしてる』とか『お水を上手に入れられなくて手伝わないといけない』という意見をもらって、なるほどとなったこともあります」

−やはり日常的に情報収集するのが津田さんの仕事術なのですね。大人向けの商材を作っていたときも同様だったのでしょうか。

「当時やっていたのは『女子合コン』です。これは、10人の仲間がひとりずつイケている女の子を連れてきて飲み会をするというものなのですが、ターゲットの女性がどんなものに関心があるのか、どんなことを考えているのかというのを知ることができるんです。

以前女子高生をターゲットとしたものを取り扱ったこともあるのですが、高校生となるとなかなか知り合いがいないので、読者モデルの子とつながりを持ったり109に通いつめたりと足を使いました。当時はガングロなどがはやった時期でしたが、どうして彼女たちが唇の色を肌色にして消したがるのかというのが理解できなくて…。直接聞いてみたところ、目を大きく見せたいから他は消したいのだということがわかりました(笑)」

津田さんの仕事の楽しみ方は、担当商材がなんであれ「自ら現場におもむき未知のことを知っていく」というところに一貫しているようです。

「目の前の仕事が楽しくなっちゃう方なので、きっと何を担当しても、自分が置かれている状況をおもしろがるというのは変わらないと思います。化粧品作っていたときも『こんなおもしろいことはない!』って思っていましたし、大人菓子をやっていたときも『なんておもしろいんだろう!』と思っていましたし、今は今で『今が一番楽しい』と思っていますから(笑)

ただ楽しいと思えることの軸として、『ものづくり』というものがあるのは確かです。お菓子って生活必需品ではないので、誰かにすごく感謝されたり誰かの命を助けるものではありません。自分の自由な時間を何に使おうというときに選択肢に出てくるところなので、そこで人を楽しませたい、喜ばせたいというモチベーションがあるんですよ」

知育菓子で得た仕事への手応え

仕事は楽しいと、生き生きと語る津田さん。ですが出産を経て職場に復帰した過程では、いろいろと苦労もあったのではないでしょうか。

「2009年に産休・育休をとるまでは、仕事にのめり込んで、時間をいくらでも使ってアタックして…という感じで夜中まで働いていました。しかもその後飲みに行って…(笑)出産後は当然そういったことができなくなり、時間の使い方を見直すようになりました。仕事と家のことを両立しようと思うなら、時間をコントロールするしかない。時間は使えば使うほど良いというフェーズではなくなったのだと」

−具体的にどのようにコントロールするようになったのでしょうか。

「以前は、『今日はこれをやりたい』『これをやらなきゃ』という内容だけ決めて納得いくまで取り掛かるというやり方でした。ですが今は、一時間単位でタスクを区切っていて、時間をオーバーしたら一度その作業は終わりにして、次の仕事に移るようにしています。仕事を積み上げていくのではなく、マルチタスクでやっていくということですね。はみ出た分はすこし朝早く来て済ませています」

−知育菓子担当になってから、一番仕事への手応えを感じたタイミングがあれば教えていただきたいです。

「2011年にねるねるねるねのリニューアルをしたときですね。ねるねるねるねは2016年で30周年なんですが、25周年の頃合いに毎年ちょっとずつ売り上げが落ちていたんです。知育菓子というジャンルはいけいけどんどんで伸びていたんですが、ねるねるねるねだけ落ちていて…どうしてだろうと考えたのですが全然わからなかったので、1000人くらいの親子にインタビューを決行しました。ヒアリングして、いろいろな仮説を立てて、じゃあこうしたらいいんじゃないかという案を出してひとつずつ潰していったんです。そうしたら翌年から売り上げがV字回復して! 商品の内容自体は変わっていないのに、評価が変わったということが嬉しかったです」

−すごい! そこにはどんな戦略があったのでしょう。

「大きく分けて3つあって、ひとつはねるねるねるねの認知度を疑ったということ。ねるねるねるねを知っているかと聞くと、8割〜9割の人は『知っている』と答えてくださるのですが、その方たちの中で実際に食べたことがあるとかどんなお菓子か知ってくださっている方がどれだけいるのかと疑ってみたんです。実際問題、クラシエフーズの社員である私ですら、この部署へ来る前は名前を知ってるだけで具体的に混ぜるとどんな反応が起きているかというところまではパッとは説明できないような状態だったので…」

−個人的には、『ねるねるねるね』といえばいまだにあの魔女が出てくるCMのインパクトが強くて…。

「みなさんそうおっしゃるんですよね。あのCMは1986年の発売から5年くらい流していたものなんですが、いまだにそのときの印象が強いようです。あれから20年以上たっても『ねるねるねるねといえば魔女』と言われるのは財産なので、2011年から魔女のCMを復活させています。

ただ魔女というのも良し悪しで、ねるねるねるねの怪しいイメージを助長してしまうというデメリットもあって。先ほどの続きにつながるのですが、2つ目の戦略に『親御さんの認識を改める』ということがあったんです。CMのイメージもそうですが、色が変わったり泡のようにふくらんだり、ビジュアル的にちょっとあやしいと感じる親御さんが多く、お子さんに買い与えるのに抵抗があるということがわかって。そこで保存料・合成着色料がゼロであることや、どのような化学反応が起きているのかという説明書きをパッケージに追記したのです。

そして最後に、他の商品の売れ行きが好調だったためか、社内的にねるねるねるねの価値がやや軽視されているのではないかということに気がつきました。みんなが価値を再認識して、大事なブランドだと思ってくれるためにはどうしたらいいかということも対策しました」

見事V字回復を果たしたねるねるねるね。誰もが知っているお菓子としての地位を不動のものにしました。しかし逆転劇はそれだけに収まらず、今度は「家庭で食べるお菓子」という枠組みを飛び越えて次のステージへと歩を進めるのです。

教育と「ねるねるねるね」

次に津田さんたちが見出した可能性は、「教材としてのお菓子」というもの。リニューアルまでは、商品の不思議さを強調するためどのような化学反応が起きているのかを伏せていましたが、今度はそれを逆手にとって化学の教材として活用しようという考えです。

「全国のスーパーや小学校に行って、ねるねるねるねの色が変わったり膨らんだりする仕組みを知ってもらった上で、作って食べてもらうという体験型の『知育菓子教室®︎』というのを年間で300回ほどおこなっています。さまざまな規模感で実施しているのですが、イオンなどのショッピングモールでは100人以上もの人が集まるものも。時には私たちマーケティングチームが赴いてみんなで博士の格好をしたり、旗揚げゲームしてから実際に作って食べるなど工夫しているんです。どういうわけか『家で作って食べるより、今日作ったやつのほうがおいしい!』と言ってくれるお子さんもいるんですよ(笑)やっぱりみんなで一生懸命勉強して、ねって膨らむと感動してくれるようです。

さらに、『じっけんねるねる』は学校で理科の教材として使っていただいていたりもしますし、ご家庭でも夏休みなどの自由研究に使えるようにと、ホームページからは発表用のシートがダウンロードできるようになっています」

お菓子の存在って、お子さんにとっては大好きなものだけれど、親御さんからすると『ごはんを食べなくなる』とか『体によいものではない』というイメージがあり、あまり歓迎されるイメージがないんですよね。だからこそ学校現場に入れたのは進歩だなと感じています」

−おとな世代にも新たな形で評価され始めたんですね。

「はい。最近は50代、60代の方からのお問い合わせも増えています。家に知育菓子を置いておくとお孫さんが来てくれるとおっしゃって…家庭単位でも知育菓子の価値が再評価されているように感じます」

−津田さんのお子さんも、知育菓子で育っていらっしゃるんですよね?

「そうですね。6歳にして酸性・中性・アルカリ性を知っています(笑)というのも、私自身が家で『知育菓子教室』の先生役の練習をしているものですから…『赤色はなに〜?』と聞くと『酸性〜!』って。酸性の意味まではわかっていないと思うんですが、でもうちの子すごいなって思います(笑)

あとは、保育園でお絵描きをしたときに色水を使ったそうなんですが、あとで先生から『新しい色の作り方を率先してお友だちに教えていましたよ〜』と言われたことがあって…『おえかきグミランド』で色の三原色を覚えたからだ! と思いました」

−すごいですね! それにお子さんが小さい頃から、お母さんの仕事を間近で見て育っているというのもすばらしいことだと思います。

「確かにそうですね。会社単位では、2016年の2月にねるねるねるね30周年を記念して『子どもねるねる大使』というのをやりました。子どものいる社員が一人10個商品を持って帰って、それぞれの子どもに『あなたはねるねる大使に任命されました!』と宣言して渡すんです。そして、お父さん・お母さんでもお友だちでもいいんですが、『ねるねるねるねってこんなに楽しいんだよ、おいしいんだよ』ということを伝えて配ってもらう。仕事だというと子ども心に張り切るらしく、楽しんでやってくれたようだったのでよかったなと」

仕事を楽しむということ

仕事もプライベートもひと続きのものとして捉えて、全部まるごと楽しんでいるという印象の津田さん。モチベーションを保つものとは一体なんなのでしょうか。

「新しいことに挑戦することです。『商品を作る』という側面だけ見ればそれは『THE 仕事』という感じですが、それ以外に何か新しいことを始めて、始めたからには継続する方法を考えて、いろんな人に協力してもらって…というふうに、やりたいことで、かつ会社に良くて、続けられそうなことを見つけられることがやりがいにつながるかなと。

知育菓子教室を始めたのも、私ではないのですが、そのときの担当者が会社に掛け合って立ち上げたんですね。そしてそれを継続していける土壌を作ったわけです。今私はFacebookの『ねるね研究室』というのをやっているのですが、これを続けていくこともモチベーションのひとつになっています。会社にチャンスをもらってると思って、誤解を恐れずいうならば会社を“利用”して挑戦を続けるということですね」

穏やかな様子でお話されているのに、どこか確固とした意思を感じさせる津田さん。それは仕事を自然体で楽しんで、挑戦を続けている人が醸し出すものなのかもしれないと、お話を聞いて思いました。

少子化が進む現代で、単価160円や250円といった価値を提供し売り上げを伸ばし続ける知育菓子。世代を引き継ぎ愛されるこのお菓子が、今後どんなアイディアで私たちを驚かせてくれるのか楽しみでなりません。

Interviewee Profiles

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クラシエフーズ株式会社 マーケティング室 菓子グループ課長 津田未典
大学卒業後、化粧品会社にてプランナーとして、新ブランド立ち上げや商品企画開発に従事。 2006年カネボウフーズ株式会社(現クラシエフーズ株式会社)に入社。 マーケティング室にて菓子の企画開発・デザインディレクションなどを担当。 2010年より子ども菓子担当となり、ねるねるねるねブランドリニューアルや知育菓子®ブランドコンテンツ“ねるねとみんなのわくわくタウン”を立ち上げ。http://www.nerune.jp/ 現在の主な担当ブランドは、ねるねるねるね、ぷちっとシリーズなど。 マガジンハウスWEBマガジン“Hanakoママ”にて「育て!クリエイティビティ!」連載中。http://hanakomama.jp/keywords/creativity/

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