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入社のきっかけは「本の神様」?! 代官山 蔦屋書店コンシェルジュが語る、リアル書店の存在意義

書店員歴30年、読書量は年間700冊。名物コンシェルジュが紡いできたストーリーとは。

2016/03/02

「モットーは『次に繋がる仕事』」。

そう話すのは、代官山 蔦屋書店の文学コンシェルジュとして働く間室道子さん。書店員としてのキャリアは約30年。元祖カリスマ書店員と紹介されることもある、同店の顔的存在です。

昨年、新潮文庫から発売されたミステリー作家・湊かなえ氏の『母性』は、57万部超え、13刷りの大ヒットを記録しましたが、同書の解説は間室さんが手掛けているのです。きっかけは、読売新聞のミステリーブックフェアで湊かなえ氏と作家の今野敏氏と鼎談したことだったそう。

「次に繋がる仕事がしたい。湊さんと対談をした時に、私のことを気に入ってもらえたようで、次に出す文庫本の解説を書かないかという話になりました。書いたら大ヒット。今回書かせてもらった『母性』の解説を読んで、これは使えると思った編集者が『うちでも解説書かない?』って言ってくれないかなと待っているところなんです(笑)」

合うか合わないかはお客さま次第。

代官山 蔦屋書店は、1982年創業のカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下、CCC)が運営するプレミアエイジ(60代以上の団塊世代)をターゲットにした大型店舗。2011年の12月にオープンして以来、本だけにとどまらず、音楽や映画もラインアップし、カルチャーを通した生活の提案を掲げています。

「 CCCは企画会社なんです。私たちは企画を売っているんです。何千枚という企画書を出して、この書店のコンセプトをわかってもらうより、お店に連れてきて『さぁ、これが蔦屋書店です』と見てもらった方が伝わるじゃないですか。ここはお店であり、生きた企画書でもあるんですね。毎日手を入れて内容をブラッシュアップして、いつ来ていただいても居心地のいい空間を作る。棚が乱れていて汚かったり、旬の本が置いていなかったり、そんなことでは企画書としてダメなので、毎日心血注いでいます」

一般的に本屋で働くスタッフは書店員と呼ばれますが、蔦屋書店ではコンシェルジュという名称で統一されています。コンシェルジュの定義を教えてください。

「コンシェルジュという職業のもともとの意味は『門番』です。書店員の中には、『本のソムリエ』と名乗っている方もいますよね。フランスの宮廷時代からソムリエという職業はあって、料理にワインをあわせる、ワインに料理をあわせる。みなさんが今知っている意味のとおり、それがソムリエなんですね。本のソムリエがいるとすれば、お客さんのご要望に合わせておすすめすることだろうというのが私の解釈です。

間室道子さん

一方、私たちの会社はコンシェルジュと名乗っている。ホテルにはコンシェルジュがいますけど、お客様がゴルフ場を探していたら予約をして差し上げ、ミュージカルのチケットを取りたいと言われたら取って差し上げる。そのようにお客様のご要望に合わせることがコンシェルジュだと思いがちなんですけど、私たちはお店の門番であり、本の門番なんですね。蔦屋書店のドアを開けるとこんな世界が広がっています、本のページを開くとこんな世界が広がっていますと言えることがコンシェルジュだと考えています。ソムリエと違う点は、合うか合わないかはお客さま次第というところ。逃げの一手だと言われたらそれまでなんですけど(笑)。

私たちはお客様の思ってもみなかったものを紹介してもオーケー。たとえば、『間室さんに泣ける本が読みたいとリクエストをしたのに、推薦されたのは悲しい話でも、淋しい話でもなかった。ただ、ラストのあのシーンで確かに私は泣いた』というようなお客様、けっこういらっしゃいます。

『なんじゃこりゃ』と思って、二度と行かない雑貨屋さんやレストランがある一方で、『なんじゃこりゃ』と思って、足繁く通ってしまうお店ってありますよね。蔦屋書店は後者を目指している。1回おすすめしてもらい、確かにそうだったなと納得する、あるいは、これは思っていたのと違ったな、じゃあそれで終わりではなくて、足繁く通っていただくのが大事なんですね」

現在のお仕事内容を教えてください。

「基本的に書店員がやることはなんでもやるんですね。レジ、お掃除、迷子が出れば保護して、品出し、発注をやって、イベントをして。書評や解説を書いたり、学校や企業で講演をすることもあります。あ、『代官山の100冊』見ました?」

「代官山の100冊」とは、取材当日に1号館1階の文学フロアで行われていたフェアのこと。各館のコンシェルジュを巻き込み、10名のコンシェルジュに10冊ずつ、テーマに沿った選書をしてもらうというもので、スタッフ間のコミュニケーションとしても機能しているそう。この春の回は現在終了しており、次回は夏開催の予定だとか。

文学コーナーには、間室さんの手書きPOPが並びます。

「4ヵ月に1回、年に3回。各館のコンシェルジュが選ぶおすすめ本のフェアをやっているんです。音楽のコンシェルジュだから音楽の本を、建築のコンシェルジュだから建築の本をというのではなく、『春をイメージする本』『出発』『夏休みの宿題』とか、テーマを決めてそれにあわせて選んでもらう。お客様がコンシェルジュに何を求めているかというと、この人のことを知りたいというのが多いんですね。こういう文学を読む人が音楽コーナーを作っているのか、とより深くその人のことを知ることができる。『このスタッフがまさかこんな選書をする人間だったとは!』というふうに、私自身がコンシェルジュを知るためでもあります」

『本の神様』が導いてくれた蔦屋書店への入社

間室さんが蔦屋書店で働きはじめたのは5年前。オープン時から働く初期メンバーのひとりです。

「みんな、私がヘッドハンティングされたと思っているみたいですけど違うんですよ。入社するまで、長いこと六本木の書店で働いていたんですけど、2011年の8月に辞めることになり、さぁどうしたものかと思っていたときに、周りが心配してくれて。『間室さん、今朝の新聞見た?すごく大きな書店の求人広告が載っていたから応募してみなよ』って、作家、編集者、前の書店のお客様から手紙やメールをいただいたんです。うちは新聞をとっていなかったので求人のことは教えてもらうまで知らなかったんですけど、『あ、あそこじゃん!』って。私は、ここのものすごい近所に住んでいで、オープン前からここで何かをやっているというのは知っていたんですね。その後、9月に説明会があって、10月に入社しました。トントン拍子、これこそ運命ですよね。いつも言うんですけど、本の神様っているんだなと思うんですよ。私、30年くらい本屋で働いているんですけど、『ここで書店員を辞めて、全く別のことをさせるには惜しいやつだ』って神様が思ってくれて、トントントンといったんじゃないかなって」

他にも「本の神様」の存在を感じる瞬間はあるんですか?

「原稿書きがそうだわね。たえず本のことを考えているからだと思うんですけど、原稿を書いたり、選書をしたりするのが本当に早いんですよ。選書だとメールがきて30分以内で返したりして。たえず受信して、発信している感じ。受信するから発信する、コール&レスポンスが自分のなかで起こっていて、生な感じですよね。

ネットはお家にいながらにして世界のどこまででもつながることができますけど、人と人が会って話すダイナミズムは、ネットで完結している人にはなかなか……。ネットのなかで意外な出会いってあんまりないんですよね、そこを見ている人たちだけになって。だから実際に会って喋ってみると思わぬ発見があったり、次に繋がったり。そこが人間関係のおもしろさじゃないですかね」

それはネット書店ではなく、リアル書店だからこそできることにも繋がっていきそうですね。

「本を介して人と繋がっていく、本を通じて人と人とを繋げている。机の上にいながらにしてポチッとすればいくらでも買えるなか、本屋さんでのイベントに来てもらうとなると、電車賃をかけて、お時間をかけて、足を運んでいただくということですよね。そこで作家とファンを繋ぐ、ファンと書店を繋ぐ、書店員と作家が繋がる。広報からもよく言われているんですけど、これだけの建物を建てて、コンシェルジュを雇ったからにはリアル書店でしかできないことをどんどん追求してと。うちはネットでの販売もしていますけど、お客様に足を運んでもらう意味は日々追求しています」

挨拶を済ませ、ソファに腰かけるやいなや、コンシェルジュや本屋の在り方についてものすごい熱量でお話をしてくださった間室さん。そのパワーと想いはインタビューが終わり、撮影をする間も途切れることなく、圧倒されるほどでした。そんな間室さんを本の神様が放っておくわけありませんよね。後編では、書店での大事な仕事である棚作りの指針や仕事をしてきたなかで印象に残っているエピソードなどをお話してもらいます。

後編▶日々の仕事のなかに自分の物語をつくる。仕事とは“ネバーエンディングストーリー”である。

Interviewee Profiles

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間室道子
代官山 蔦屋書店文学コンシェルジュ
岩手県出身。実家が書店だったため、幼い頃から本を読んで過ごす。六本木の書店を経て、2011年にカルチュア・コンビニエンス・クラブ入社。現在、『プレシャス』や『婦人画報』などで4本の連載を抱える。

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