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Wantedly Journal | 仕事でココロオドルってなんだろう?

Company

日々の仕事のなかに自分の物語をつくる。仕事とは“ネバーエンディングストーリー”である。

書店員歴30年、読書量は年間700冊。名物コンシェルジュが紡いできたストーリーとは。

2016/04/18

代官山 蔦屋書店で文学コンシェルジュとして働く間室道子さん。

前編▶入社のきっかけは”本の神様”?! 代官山 蔦屋書店の名物コンシェルジュが語る、リアル書店の存在意義

書店に共通する品出しやレジ打ちといった店舗業務に加え、人気作家とイベントを開催し、書評や解説も数多く手掛けてきました。そんな間室さんは、元祖カリスマ書店員と形容されることもしばしば。

ファンはお店につくのではなく、そこで働く人につくもの

間室さんのインタビューを拝見すると、プロフィールに「元祖カリスマ書店員」という記述があるのですが、いつ頃からそう呼ばれるようになったんですか?

「最初は、吉田篤弘さんの『つむじ風食堂の夜』のPOPを書いたときですかね。POPを書いて立てていたら、版元の編集者の方から『ここ、うちの帯に使わせてください』って言われて、私の言葉が帯巻出庫されて全国の書店に流れたんですね。のちに映画にもなりましたけど、現在18万部のヒット文庫になっています。

篤弘さんといえば、奥様の浩美さんとの装幀ユニット『クラフト・エヴィング商會』として、曲を流しながらトークをする『クラフト・エヴィング・ラジオ』というイベントをこれまでに8回開催してきました。岸本佐知子さんの『佐知子の部屋』、柴田元幸さんの『柴田君がやってくる!ヤアヤアヤア』、2月の下旬には堀江敏幸さんの『文学柔夜話』(ぶんがくやわやわ)、野崎歓さんの『フランス文学夜話』……。前に勤めていた書店で開催していたイベントを、今は全部ここでできているんです。

働く人たちに言いたいことは、(世間では)お店のファンという言い方をするけれど、そうじゃないんですよね。実はお客さんって働いている人のファンなんですよね。ホステスさんとか、美容師さんとか、お店が変わると新しいお店にお客さんが移ることってよくあるじゃないですか。それはもっともだと思うんです。そういう環境を作っていくにはその人に魅力がないとダメ。(自分自身が)魅力的な人間かどうかはわからないですけど。

書店員は、品出しができて、きれいに角を揃えて詰めて、レジを打って、お掃除して……ということができればいいけれど、コンシェルジュと名乗っているからには、人間関係を作っていく魅力を培えないと。もちろん私も至らないところはいろいろあって、まずパソコンができない。入社したときは『テンキーってなんですか?セルってなんですか?』という感じでした。今は大分できるようになったんですけど。私はコンシェルジュだから、レジを間違えてもいいんだ、パソコンがまるでできなくてもいいんだということじゃなくて、課せられた実務は若い人と一緒に覚えてできるようにしています」

毎日が苦労と感激の繰り返し

帯文や解説の執筆、さらには書評の連載もされていますが、そこまで信頼を寄せられている理由をご自身でどう分析されていますか?

「えーっとね、それはたくさん本を読んできたから。うち、実家が書店なんですよね、岩手の。小さな頃から本が周りにあって、学校から帰ってくると読むのが当たり前。今も1日1冊、休日は5冊、月に60冊、1年で720冊が目標なんです。でも、最近はなかなか。連載が5本、3月はイベントが7本も。からだもこんなふうに小さくて、体力の限界もあるので『それは無理!』ということもあるにはあるんですけど、今月はイベントがあるから棚の仕事ができていないとか、連載の他にイレギュラーな原稿仕事があるから講演会を断るとかね、何があるから何はやらないっていうことはしないようにしています。会社からも『メディアにできるだけ出ていいから、棚ありきの仕事をしてね』って言われているんです。

昨年の10月まで、日本テレビの『ZIP!』という番組で本を紹介する仕事をしていたんですけど、番組を見た人が『間室さんってどんな人だろう?』と思ってお店にきてみたら、棚がボロボロでした、ではテレビに出る意味がないですし、棚だけ完璧に作っても宣伝をしないとお客さんはきてくれないし、雑誌でイベントを知ってきてくださったのに、そのイベントが失敗したら『なぁんだ』ってことになりますよね。全部が連動しているんです」

その圧倒的な読書量が示す本への愛や熱量と真摯な仕事ぶりから、間室さんは、顧客や同業者のみならず、数多くの作家からも一目置かれる存在です。前編の冒頭でも話に挙げた、湊かなえ氏の『母性』の解説を担当できたことについては特に感激をしたと話してくれました。

「毎日苦労しているんですけど、毎日感激もしてるんです。近々でいうと『母性』が57万部売れていることは感激かな。湊さんって、イヤミス(読んだ後に嫌な気分になるミステリー)の作家と言われているじゃないですか。『母性』も、母と娘が恐ろしいほどうまくいかなくて傷付けあうというストーリーだから、たしかにちょっと嫌なミステリーだなとは思うんですけど、『解説を読んだら納得できました』という感想があって、あぁ、よかったなぁと。他にも、山田詠美さんからお声掛けいただいて『タイニーストーリーズ』の解説を書いて、詠美さんに『ありがとう』って言っていただけたり。

そうそうそう。3月に開催した東京国際文芸フェスティバルでは、当店に大御所ミステリー作家の島田荘司さんが来てくださったんですけど、ちょくちょく親交がある人気作家・伊坂幸太郎さんが島田さんのことが大好きなので、伊坂さんに『島田さんがお店に来てくれるんです。いいでしょう!』と自慢するお手紙を出したら、わざわざ『代官山の文芸フェスティバルに島田荘司が登場する意味』という書き下ろしの原稿を書いてくれて。それは当店でフェス期間中に配布する小冊子と蔦屋通信でも掲載されています。そういう感じでいろんなところで恩を売ったり、売られたり(笑)。人間関係ってそうですよね。私からのコールがあって、レスポンスがあって、むこうからのコールがあって、レスポンスしてあげてっていう」

理由が無くない本も、理由が無くある本もない棚を作る

今までお仕事されてきて最も苦労したことを教えてください。

「建物は建ててしまうと終わりです。でも、本屋には終わりがないんですよね。中身をどうしていくかがコンシェルジュの仕事だから。毎日が本当に切磋琢磨ですよ。初代店長で、今はT-SITE全体の館長をしている田島という人間がいるんですけど、『この店には理由が無く無い本はありません。理由が無くある本もありません。そういう書店を作ってください』と言われたんですよ。まぁ、なんていう宿題をこの人は私に課したのだろうかと思っているんですけど。地下2階から7階までビル一棟まるまる本屋という形態だと、無い本が無いことを売りにしていたりするじゃないですか。でもうちには無い本があるんですよ。コミック売り場もタレント本売り場もないですから。なぜ置いていないのか、言える仕事をしないといけない。普通の書店だと、『この本、こんなに積むか?』という本を一番目立つところに一生懸命に置く。その理由を説明できる仕事をする。それは自分やお客様への問いかけであり、田島への答えであり。それを毎日やっていかないといけないのは楽しいですけど大変です」

仕事とはネバーエンディングストーリーである。

最後に教えてください。間室さんにとって“仕事”とは?

「仕事とはネバーエンディングストーリーじゃないですかね。ネバーエンディング苦労とかね、ネバーエンディングお金稼ぎだと辛くなっていくんでしょうけど。自分が日々やっていることに物語を作っていけることはすばらしい。私の職場が書店だから物語ということではなく、お花屋さんでも、建築会社で事務をやっている人でも。リタイアした人の中にも日々やっていることがあって、仕事と呼べるものがあって、物語を作っていけるかどうかは、その人の思いひとつ。

そして、働くということは自分の自信になる。ボランティアもとてもすばらしいけれど、ボランティアと仕事の違いは、お金がもらえるかもらえないか。村上龍さんが言っていたんですけど、仕事がなぜいいものかといえば、お金がもらえるから。お金がもらえるのがなぜいいかといえば自信になるからだと。ボランティアをして自信がついたという人もいるとは思うんですけど、自分がやったことがお金というものになって還ってくることは自信に繋がることだと思うんですよね。やっぱり自信をもって働いていることがよくて、それが楽しみに繋がる。日々出会いがあって、お金がもらえて、何か続けてやっていることがあって、それが自信になっていくという、自分のなかで物語が作れるかどうか。仕事とはネバーエンディングストーリー。今、ふと思いついたんですけど」

間室さんはどうしてそんなにパワフルなんですか?秘訣があればぜひ知りたいです。

「本を読むと感動しますよね、本がエネルギーになっていますかね」

お仕事が終わると、疲れたなと思ったりするのでしょうか?

「もちろんぐったりですよ。でも、これも自慢なんですけど、入社以来、無遅刻無欠席なんです。私だけじゃないかな?丈夫に産んでくれた両親に感謝ですよね。あとはいっぱい寝ること。

スタッフからは『間室さんは動いたっきり老人になる』と言われています。本当にね、本当にひどい(笑)。防犯カメラの映像を見ると、間室さんだけ3倍速だって。仕事はスピードと勘なんですよ」

何気ない気持ちで手に取っていた本1冊1冊は、膨大な書籍の中から選ばれた理由のある1冊ということ。どんなものにも誰かの想いが込められている。そんなことを再確認するインタビューとなりました。代官山 蔦屋書店では、一緒に働くコンシェルジュを募集しているとのこと。興味のある方は、ぜひお店に問い合わせてみてください。

Interviewee Profiles

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間室道子
代官山 蔦屋書店文学コンシェルジュ
岩手県出身。実家が書店だったため、幼い頃から本を読んで過ごす。六本木の書店を経て、2011年にカルチュア・コンビニエンス・クラブ入社。現在、『プレシャス』や『婦人画報』など4本の連載を抱える。
  • Written by

    梶山ひろみ

  • Photo by

    岩本良介

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