鞆まちづくり会社の主な事業は、鞆の浦にある古民家を修復して一棟貸しの宿として活用する宿事業です。貴重な古民家を修復・活用することで、鞆の浦の歴史的町並みの風景保全に貢献し、時を重ねた日本建築や町並みの美しさを次の世代に伝えていたいと考えています。そして、これらの宿事業によって、街並みが永続的に、自助努力によって資金循環するような仕組みをつくることによって、鞆の浦の持続的な(消費型ではない)まちづくりに(微力ながら)貢献したいと考えています。
イタリアには、まち全体を一つの宿として見立て、旅する人たちに楽しんでもらいながら、地域事業として収益性を確保することで、まちの維持保全を図っていく「アルベルゴディフーゾ」という事業スキームがあります。私たちは一つの方向性として、地域の人たちによって運営される地域事業が自律的に町を運営し、その資金循環によって町が永続的に活動し続けていく、この仕組みに着目しています。
「観光」という言葉はいろんな意味をはらんでいます。
京都やニセコなどでは、観光公害(オーバーツーリズム)が大きな問題になっています。一部の観光客が地域の住環境を破壊し、異常な物価高騰によって地域住民が住み続けることが困難になっていく、そんな悲しい観光地ができつつあるのも現実です。
私たちは、観光に訪れるお客様から頂戴する宿代によって、会社を運営し、そのなかで建物改修を含む新たな施設投資を行っています。私たちの事業においては、観光客の一定程度の流入は必須です。しかし私たちが目指す観光は、「多くの観光客が訪れてくれたらよい」といった単純なものでは決してありません。
私たちが目指す観光、それは「”観光客に選ばれる”、ではなく、”私たちが観光客を選ぶ”、そんな観光地になる」というものです。
日帰り観光客があふれ、外部資本による地場の食材”ではない”食事が観光地価格で販売され、リピータしない観光客が”映え”だけのために購入し、そしてインスタグラム更新して終わり。そんな地域に将来はありません。そうあってはなりません。
私たちは、徹底的に鞆のモノ、鞆の資本、鞆の人たち、にこだわり、鞆を心底愛してくれる人たちだけに訴求する観光コンテンツの普及を実現します。そして、そのこだわりこそが、鞆の観光地としての価値を高質化させ、私たちが来てほしいと思うお客様をお迎えすることができる、そう考えているのです。
そして、私たちは「まちづくり会社」であることを自分たちの起源として重要にしています。宿泊事業者でもなく、観光業者でも、もちろん不動産会社でもない、私たちはまちづくり会社であり続けます。小さなまちづくり会社として、この鞆の”ありうべき未来”を常に考えていきます。
伝統文化を継承していくためには、人が住み続けられるためには、移住含めて興味関心を持ってくれる人を増やしていくためには、そして何より、この美しい風景が美しく”活き続けるためには”どうすればよいのか、事業を通じて答えを作っていきたい、そう考えています。
美しい廃墟は歴史の遺産にしかなりません、私たちは活き続ける町に価値があると考えています。その実現はとても複雑で、簡単に回答ができるものではありません。しかし、だからこそ、考え続けて試行錯誤し、時に失敗し、いろんな壁にぶつかりながらも、真摯にまちと相対していく、そんなフィールドがここにあります。
経験は求めません。実績も関係ありません。
必要なのは、町に対する思い、自分で何かを成し遂げたいという意思だと思っています。
現在、運営している一棟貸切お宿は以下の3棟です。
◉「鞆猫庵」
公式ウェブサイト:
https://www.tomo-nyahn.jp
....お宿の隣に保護猫シェルターがあり、猫たちがのんびり暮らしている風景を見られるので「鞆猫庵(ともにゃあん)」と名付けました。
◉「そわか楼」
公式ウェブサイト:
https://www.sowakarou.jp
....鞆まちづくり会社が最初に修復に関わった築150年の別荘住宅です。
◉「海月」
公式ウェブサイト:
https://tomo-umizuki.jp
....2024年に修復が完了したばかりの新しいお宿です。今後、どのように稼働率を上げていくかが課題となっています。