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ノルウェー留学日記

私は2018年の秋から1年間ノルウェーの南の人口約8000人の小さいな町にある、アグダー大学に交換留学プログラムを通して行きました。留学を決めた理由としては、1つ目に、自分がマイノリティになる環境でチャレンジしたかったからです。私が通っている立命館アジア太平大学(以下APU)は、国際生が半分で90か国以上から学生が集まっていて多文化環境ではりますが、日本にある大学であり、日本人がマジョリティです。そのような環境に物足りなさを感じた私は、見ず知らずの地で自分がアジア人として、日本人としてマイノリティになる環境に飛び込みたいと思ったため留学を決めました。2つ目は、自分の知らない世界を知りたかったからです。APUに1年ほど通い、山の上のAPUという環境が魅力的でありながら、とても狭く感じるようになりました。APUという文化の中でどこか同じような価値観を持ち、学生も少ないため学内でも学外でも関わる人たちは大体がどこかでつながる。そんな自分のコンフォートゾーンを抜け出して全く知らない新しい世界に飛び込みたかったからです、3つ目は、APUには教育学部がなかったのですが、私は教育について深く学びたかったため、留学のチャンスを使って実際に教育最先端の国である北欧のノルウェーに留学を決めました。スウェーデンとノルウェーの教育学部のある大学で迷ったのですが、最終的には日本人のいない環境があるノルウェーの大学を選びました。アグダー大学には日本人がおらず、一緒にいったもう一人の唯一の日本人とも英語で話そうというルールを作っていました。APUと同じ環境にならないようにアジアから来た学生とはあまり話さないようにして、自分を厳しい環境に置くことができました。おかげで様々なヨーロッパの国々の友達ができ、英語のみの生活であったため、日本に帰った来た際は日本語より英語の方が使いやすいレベルにまで英語を上達させることができました。


私の弱点である、やるべきことをぎりぎりまで後回しにしてしまった結果準備が不十分で、寮やクラスの申請がうまくいかず、始まりはごたごたでした....(汗)ドキドキしながらオスロ空港に到着し、学校ではBUDDYが迎えいれてくれました。最初は英語に慣れること、ヨーロッパ文化に慣れることに必死で辛い時期もありました。やはりアジア人ということでどこか差別的な、見下された目で見られることもあり、これが現実かと実感したのを鮮明に思えています。しかしそんな辛さや悔しさを体験しに来ている、新しい世界に自分は足を踏み入れたんだと思うとなんだか楽しくなり、ノルウェーという国を思いっきり楽しむようになりました。ノルウェーは北の国なので冬は寒く、マイナス40度を体験したこともありました。冬の夜はとても長く、物価は日本の約2倍するため外食や外に出歩くことが少ないです。そのため皆で机を囲んでホームパーティーをすることが多かったです。とてもCOZYな、北欧的な雰囲気の中でのんびりとスローライフを送ることができました。


ノルウェーは人口が500万人しかいないにも関わらず、国土の大きさは日本と同じです。そのため東京の約半分の人口が日本と同じ面積の国に住んでいることになり、そのかわり自然がとても豊かな国です。個人的に自然やアウトドアが大好きな私はノルウェーの自然も魅力の一つでした。ノルウェー人は自然を大切にする文化があり、週末や夕方など時間があれば自然の中で過ごします。学校終わりは大学の裏にある森と池を散歩やランニングをし、夜はキャンプファイアーを囲みながら語る。週末はハイキング、スキー、キャンプ、バーベキューなどを楽しみます。私も毎週末ノルウェーの中で有名はハイキングスポットに行っていました。往復10時間のハイキングでとても大変でしたが、ノルウェーの自然、フィヨルドは言葉では表せないほど美しく、自然の偉大さ、自分の小ささを改めて感じさせられました。ノルウェーに行ったからには北のトロムソという町まで行き、オーロラと犬ぞりなども体験しノルウェーらしい日々を送ることができました。


ヨーロッパに一度来たからにはヨーロッパの他の国々も自分の目で見てみたいと思い、授業の合間や休みを使って、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ドイツ、スペイン、イギリス、リトアニアに現地でできた友達たちと旅をしました。旅をするだけでも各国違い世界や出会いがあり、自分の世界が広がりました。


また、Save the Children というNGO団体のクリスチアンサン支部でボランティアも行いました。セーブ・ザ・チルドレンは、子ども支援活動を行う、民間・非営利の国際組織です。 すべての子どもにとって、生きる・育つ・守られる・参加する「子どもの権利」が 実現されている世界を目指しています。人口も少ない町なのでなかなかインターンシップなどの機会がない中、何か教育や子ども関係で活動をしたいと思った時にSave the Children を見つけ、自分からコンタクトを取り、ボランティアとして受け入れていただきました。ノルウェー語を話せないため子どもたちとの直接的な触れ合いはなかなか難しかったものの、団体の広報イベントやAgder 大学での広報イベントを企画運営しました。具体的にはクリスマスシーズンの家族ずれが多く町にいる時期に、道に広報スタンドを作り、お菓子やぬいぐるみなどで子供を引き付けながら、その家族などに広報、募金を行いました。オスロで行われた、ノルウェー全土のSave the children のボランティアや関係者が集まるセミナーにも泊りがけで参加させていただくことができ、ノルウェーのローカルな人とつながりながら考え方や暮らしを知ることができました。子供たちに日本やアジアについてプレゼンする機会もいただき、英語でプレゼンをすること、自分の母国である日本について全く違う文化の国の人にどのように伝えるかなどを考え、良い経験になりました。


また、2セメスター目ではBUDDYとなり、2セメスター目から大学に来る留学生のサポートをしました。そこでBuddy グループというのを形成し、私は一つのグループのリーダーとしてグループをまとめました。事前にグループを作った上で各留学生に連絡を取り、受け入れの流れなどの説明をしながら質問などにも答えてサポートをしました。どうしてもアジア人の英語がそこまでうまくない私がリーダーとなると少し見下されているように感じることもあり、くじけそうになりながらも皆が仲良くなれるイベントなどを企画しました。見ず知らずの地で自分も留学生でありながら、他の留学生のサポートをし、慣れない英語でグループをまとめ上げるというのは私にとっては大きな挑戦でしたが、温かい人に恵まれ良い経験になりました。


Buddy と並行して、ESN(Erasmas Student Network)という団体にも入り活動をしました。ESNはヨーロッパの留学生サポート団体で、ヨーロッパ各国、各地域に存在しています。私はノルウェーのAGDER支部の一員となり、自分も留学生でありながらBUDDYとは別で、留学生のサポートやイベント企画を行いました。例えばSUSHIイベントを企画し、巻きずし皆で作ってみたり、皆が参加できる様々なテーマパーティーを企画しました。他にも、ノルウェーの有名なハイキングスポットであるプレケストーレンという山へのハイキングトリップを企画から手伝い、当日の引率や運営も行いました。


~授業に関して~ 私はHumanities and Education という学部で、社会学系の授業と教育の授業を履修しました。教育の授業は、Comparative Educational Studies, Norway Society and Culture, Inclusive Education and Norwegian Education という授業を履修していました。同じ教室の中には、スペイン、オーストリア、スイス、アイルランド、ドイツ、フランス、日本から来た学生がおり、一つの教育についてのテーマでも、各国の事例や視点から議論されるため学びが多かったです。客観的に日本の教育を見ることができたり、日本の状況を他国の人とディスカッションすることで新たな視点や考え方を得ることができました。実際にノルウェーの教育の歴史、現状や制度や発展しているインクルーシブ教育についても学び、現地の小学校に1週間ほど視察に行く機会もありました。実際に自分の目で現場を見て、先生たち、子どもたちと話すことは、本や日本で話を聞くよりもはるかに学びが多く、実際に肌で感じることができました。

インクルーシブ教育という面でノルウェーは最先端を走っていると思います。特別支援学校を作ってはいけないという法律があり、障がいのある子どもも家から近い地域の学校に行き、学校側もどんな子供でも受け入れる体制が整っています。人口が少なく、お金があるからこそできることではあると思いますが、生徒一人一人に合ったサポートが充実していました。障がいを持っている子への特別な教科書、タブレット、車椅子や専門職員などのサポート制度が常に用意されている状況があるため、どんな子も地域の学校で皆と一緒の学ぶことができます。クラスも約20人で、メインの先生に加えてサブの先生が2人から3人はいます。地域から専用の研修を受けた大人が教室に入ってサポートをする制度もあり地域にの開かれています。教室20人の生徒に対して4人は大人がいるという状況で、多くの多様な大人に見守られながら学ぶことができます。だからこそ子供一人一人の成長を見守ることができ、プラスのサポートが必要な子供にも目を向けることができます。担任の先生も4年ごとに変わるため、長期的に子供を見守ることができます。私が行った小学校は少し特殊で、特別支援学級があり、重度な障がいのある子供は必要に応じて特別支援学級に通っていました。しかし、特別支援学級と通常学級が隣同士同じ建物の中にあるため授業以外は特別支援学級の子も通常学級の子も混ざって遊びますし、レベルに応じて特別支援学級の子が通常学級のクラスに混ざるため、子供たちにとっては障がいを持った子も一緒に学ぶこと、一緒に生活をすることが当たり前になっていました。もちろん1年生などは差別や問題も起こることがあると言っていましたが、その都度先生や大人が関わることで少しづつ理解していき、高学年になると障がいという概念もなく、自然と助け合いながら生活できるようになると一人の先生が話していました。

上にある写真は、通常学級の子どもと特別支援学級の子どもが一緒に劇の練習をしているとことです。年に2回の発表の場に向けて1年間通して毎週金曜日は劇の練習日となっていました。学年も障がいの有無に関わらず一緒に一つのものを創り上げることを通して一人一人がそれぞれ学び、成長していくといいます。先生もなんで障がいのある子を分けるの?という質問をするほど障がいの子を「分ける」という価値観がなく、楽しそう子供たちと向き合っていました。

ノルウェーでは、中学校まで成績がありません。受験もなく、点数という単一的な評価軸でこどもの成長を評価することはせず、先生はこども一人一人と向き合います。アウトドアの授業が多く、雨でも、嵐でも、雪でもどんな天気でも先生は必ず子供たちと一緒に自然の中に出てアクティビティをします。”There is no bad weather, only bad clothes”とノルウェー人はよく言います。「悪い天気はない、服装が悪いだけだ。」、どんなに天気が悪くても服装をしっかりと着込んでいれば大丈夫という考え方です。自然、生き物と触れ合うことで人間として生きる本質的な力を身に着けていました。このような教育を受けた子供たちがノルウェー社会を創っていると考えると、福祉的に発展し、ジェンダー的も平等で、世界一幸せな国の一つといわれる意味がわかる気がしました。 

大学の授業も質が高いです。一クラス多くて20人の学生とインターラクティヴな授業であるため、先生も一人一人をしっかりと指導してくれます。日本のように200人の大講義はめったになく、先生を下の名前で呼ぶなど、生徒と先生の距離が近く、平等な関係になっています。授業自体は少ないものの、一回の授業が重く、自分で自主的に深堀して学ぶことも求められます。4時間のライティングのテストや5000ワードのレポートなどがあり、暗記や選択肢などではなく自分で考え、意見を述べることを求められます。すべて英語で大変ではありましたが、鍛えられました。


留学を通して、自分の世界や視野が広がり、自分、日本人としての自分、日本、APUを客観的に外から見ることができるようになりました。外に出たからこそ今までいた自分の世界が狭かったこと、自分がその中でどれだけ視野が狭かったかを再認識することができました。自分の知らない世界はもっとあり、それをもっと知りたい、自分の目で見たいという挑戦意欲もさらにわくようになりました。教育という面でも前よりも広い視野で考えることができるようになりました。

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