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トランスジェンダーに対する規制について

Photo by Alexander Grey on Unsplash

 私は「性同一性障害(性別違和)」と診断されており子供の頃から女性社会に馴染めず悩んでいました。
「LGBT」と言う言葉が知られてきたように思われますが、トランスジェンダーについては何となく誤解されているような印象があるため、一度当事者の私からも説明させていただけたらと思います。

性転換は「治療」です

 なぜか「性別適合治療」について、人生の付加価値的なものであると誤解されている方が多いように思います。
「手術しなくても、五体満足なのだから生きていける」と思われている方が多い印象ですが、これは大きな間違いです。

 これは我々当事者と病院の印象操作に原因があります。そもそも「トランスジェンダー」と「性同一性障害(性別違和)」は厳密に言うと違うらしく、トランスジェンダーとは性自認に違和感を持つ人を広義的に呼ぶそうで、それだけでは「治療」する事はできないのです。しかし巷の一部の病院では、自由診療として簡単に「性ホルモン投与」を行って性転換を行う事が可能な病院が数多くあり、お試しで性転換するトランスジェンダーの(或いはそうではない)人が多く、そういった人達を見た一般の方々が、「性転換は気軽に行えるもの」と勘違いしている傾向があります。もちろん自分の自由意思で性転換することは違法ではないのですが、そのために性同一性障害(性別違和)で苦しんでいる人までが軽はずみな印象を受けてしまっています。
 例えば、肩こりなどで悩んでいる方が整骨院に行かれて、「保険適用外の治療になります」と言われたことのある方もいらっしゃるのではないかと思います。本来整骨院で治療できるのは交通事故などの保険適応の対象になる方だけなのですが、そうではない方も気軽に整骨院に行く風潮があります。心療内科などでも、気軽に来れるような宣伝文句で高価な治療やカウンセリングを勧めて、診断書を書きたがらない精神科医というものがいます。そして挙句の果てには診断書を違法すれすれの方法で捏造する場合もあり、それが横行している現状があります。ただの「肩こり」なのに、保険適用で施術を受けた事のある方は、整骨院側で負傷の原因を捏造してもらっているのです。それでは一般の人の反感を買うのも当然でしょう。「甘え」と疑われても致し方ありません。

 では広義のトランスジェンダーと性同一性障害(性別違和)は何が違うのかと言うと、端的に言えば「苦しんでいるかどうか」と言う事です。よくトランスジェンダーは「異性になりたい人」と言われますが、誰だってわざわざお金を貯めて体にメスを入れたくはありません。「異性になりたい」ではなく、正確には「同性になれない人」「同性に合わせられない人」といったほうが正しいと思います。「同性(体の性別)のコミュニティに所属できない」という物理的な障害、或いはそのことから来る適応障害、さらに異性(自認する性)のコミュニティからの所属拒否による心理的ストレス、また、性自認と肉体の性別の倒錯による精神的錯乱といった症状も起こり、アイデンティティの形成やパーソナリティに問題を生じる場合が多くあります。
 多くの人が「性転換手術のない時代の性同一性障害者は、隠して生きていた」と言いますが、それは間違いです。我慢して生活するという事は不可能なほどの体の異常です。精神錯乱を起こしたり、どのコミュニティに所属する事も出来ず行き倒れたりして歴史に残っていないだけだと私は思います。「性自認」と言う人間の本能的な部分に異常がある人に出会った場合、通常の人々は生理的な気色悪さを感じ、こちらがどんなに隠していても言動から感じ取って排除しようとするでしょう。LGBTの合言葉は「自分らしく」ですが、性同一性障害の望みは「人間らしく」生きたいと言う事です。人間らしく、友達を作り、仕事がしたい。その望みすら叶えられない人達を「性同一性障害(性別違和)」と呼びます。また、必ずしも手術を希望している人達ばかりかと言うとそうではなく、適応障害のみ解決すれば良いといった場合は、周囲の配慮さえあれば未手術でも「人間らしく」生きられると感じられる人もいます。

「レズビアン」「ゲイ」「バイセクシャル」は、「障害」ではありませんが、トランスジェンダーは障害です。と言うのも、トランスジェンダーは完璧な「治療」を行う事が不可能なため、例え現代の最先端技術で性転換の治療を尽くしたとしても性器の欠損などの身体障害は継続している事になります。そのため一般の男女と比べてしまうと身体的なハンディキャップを抱えている事になります。ですので「普通の男性(女性)として接して欲しい」と言うのも間違っていて、やはり継続的な配慮が必要だと考えています。

 現在、性ホルモン投与の治療は性同一性障害(性別違和)の診断書が不要です。そのため、自由診療と言う事になっており、自費診療と保険診療を併用できず性腺摘出手術などの性転換手術が健康保険適用にならず高額になってしまうなどの問題が出ています。また、軽はずみにホルモン投与を行った事で後悔のあまり自殺される方もいらっしゃいます。それらを防ぐためには、診断書無しのホルモン投与について法律で取り締まる必要があるのではないかと思います。

 トランスジェンダーや性同一性障害への支援がもっと充実する事を願っています。