新卒一括採用への違和感から、AIベンチャーでの挑戦まで
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新卒一括採用に感じた違和感
大学一年生のころ、コロナ禍真っただ中でオンライン授業ばかりという状況も相まって、「日本の就職って、大学四年になったタイミングで受ける新卒一括採用で人生が決まるのっておかしくない?」と強く感じていました。一回きりの勝負で“いい会社”を引き当てるってリスキーすぎる——そんな不安が根底にあったんです。そこで思いついたのが、フリーランス的な働き方でした。これなら大学を卒業してからも、自分のスキル次第でどこででも生きていけるんじゃないか、と。ちょうど大学の学科でPythonを使ったデータ分析を学べることもあり、「じゃあ、プログラミングをやってみよう」という発想で動き始めました。
目的を見失ったプログラミング学習
ただ、始めたはいいものの、はっきりとしたゴールがないまま走り出すと、なかなか続かないんですよね。計画性もなく、「まずはやってみよう!」の勢いだけ。今振り返ると、大学一年生の後半から二年生にかけては、ただただ「スキルを身につけないとヤバい」という焦りだけが先行していました。
そんな中でも、小さなきっかけになったのはクラウドソーシングでのデータ入力の受注でした。単なるバイト感覚で始めたんですが、「納期に間に合わせなきゃ」「クライアントに迷惑をかけちゃいけない」と思うと、アルバイトとは違う責任感が生まれました。実はそのデータ入力を、Pythonのスクリプトである程度自動化しちゃったりもして、「あ、こうやって効率化できるなら、自分にはまだ可能性があるかも」と思えたんです。
もどかしかったプログラミングスクール
大学二年の夏ごろ、「ポートフォリオを作らないと」という危機感が高まり、プログラミングスクールにも通いました。Vue.jsというフロントエンドのフレームワークを使い、ほかの大学生と**“全国のアイスクリームを探すサイト”**を作ったのですが、正直言ってモチベーションが上がらなかった。自分が本当に作りたいものでもないし、何のためにこれを作っているんだろう? と途中から気持ちが乗らなくなってしまったんです。結果として、クオリティもいまいちで、ポートフォリオには程遠いものに。そこでまた「やっぱり自分には才能がないのかな……」と挫折感を味わいました。
AI・データサイエンス系ベンチャーへの参加
そんなとき、知人経由で「AIやデータサイエンス系を扱うベンチャー企業の立ち上げがある」という話を耳にしました。別に“ここだ!”と大きなチャンスを感じたわけじゃなくて、「なんか面白そうだし、とりあえず本気でやってみよう」という気持ちで参加を決意。この選択が、結果的に大きなターニングポイントになりました。
最初にやったのは、自社システムとしてのチャットボット開発です。ちょうど生成AIが盛り上がり始めた時期で、情報も豊富。技術をキャッチアップして実装→すぐに動く、という成功体験を得られたのが大きかった。「あ、自分でも形にできるんだ!」という嬉しさを強く覚えています。
同時に、受託での開発案件も始まりました。ですが、PM(プロジェクトマネージャー)が先方企業にいて、仕様があいまいなままウォーターフォール型で進めるものだから、途中でどんどん要件が変わってスケジュールはグダグダ。でもその分、プロジェクト管理の大変さを肌で感じ、進め方の重要性を学ぶいい機会でもありました。
カフェ経営支援とPDCAの壁
一方で、北海道帯広のカフェ経営支援に携わったことも、大きな学びの一つ。スタッフさんとのコミュニケーションを取りながらPDCAを回すのですが、そもそもPDCAという概念が浸透していない。施策を提案しても「何でそれをやるの?」とピンとこない方もいる。そういうところをイチから説明して実践してもらうのは、想像以上に時間がかかりました。けれど、最終的に売上が2倍近く伸びたときには「テクノロジーって、現場の人とちゃんと向き合うことで結果を出せるんだな」と実感。開発だけじゃなく、人や組織を巻き込む面白さを知ることができました。
休学という決断、そして三年間のコミット
大学四年に上がるタイミングで休学を決めたのは、ただ忙しさに追われていたからではなく、「ちょうど成果が出始めるこの段階で離れるのはもったいない」と感じたからです。もともと新卒で別の企業に行く気持ちはあったのですが、創業してすぐの会社だからこそ、もう少し腰を据えて結果を出してからでも遅くないだろうと考えました。
コロナ禍でオンライン授業が中心だったこともあり、意外と大学の単位を取りつつベンチャーでの開発も両立できていたんですよね。気づけば二年があっという間に過ぎ、**「とにかくがむしゃらにやっていたらここまできた」**という感じです。
政治家の声を再現するチャットボット
そして、特に印象深かったのは政治家の声質を再現するAIチャットボットの開発です。正直「本当にそんなの作れるのか?」と半信半疑でしたが、商用利用可能なオープンソースを探し回り、学習用の音声データをもらってモデルをファインチューニングしました。何十時間も政治家の声を聞き続けるのは頭が痛くなりましたけど、まともに動くものが完成したときは最高に達成感がありましたね。
一番大変だったのは音声データのクリーニング作業で、ノイズをどれだけ取り除けるかが品質を左右するんです。そんな細かい作業の積み重ねがあったからこそ、「AIって意外と自分たちでも作れるんだ」という自信がついていきました。
プロジェクト終了と寂しさ
ところが、クライアント企業の予算都合で開発が終了してしまったときは、少し寂しかったですね。もっと「こんなのもできますよ」といろんな提案をして、クライアントに喜んでもらいたかった。でも、一緒に走ってきたからこそ得られた関係性は大きな財産ですし、また別の形で何か面白いことをやれたらいいな、という思いが残りました。
これからの展望
振り返ってみると、大学一年生の頃に持っていた“新卒一括採用への違和感”から始まり、プログラミングの挫折やベンチャーへの参画を通じて、自分が本当に興味を持っているものが少しずつクリアになってきた気がします。
今は、技術開発よりもマネジメントやセールス、事業開発、それこそ海外進出にも興味があるんです。AIの進化で、サービスの立ち上げからスケールまでのスピードはますます速くなるでしょう。その一方で、長く使われるサービスをどのように設計し、どうやってユーザーを巻き込んでいくかが大事。つまり、プロジェクト設計からセールス戦略までを繋げられる立場にこそ、新しい価値が生まれると思っています。
これまでの経験を糧に、次はより大きな視点でサービスや事業を動かしていきたい。最初は「セーフティーネットを作らなきゃ」という保守的な気持ちだったのが、いつの間にか「技術を使って、いろんな人と一緒に何か新しいものを作り上げたい」という攻めの姿勢になってきたのかもしれません。
技術的に手を動かす楽しさも捨てきれませんが、今はいろんな立場の人を巻き込みながらサービスを育てるほうがワクワクします。ベンチャーという環境がくれた学びを活かして、次はマネジメント・セールス・海外展開などにも本腰を入れていきたい——そう考えています。