「自走してください。」は、丸投げでは成り立ちません。
「自走できる組織になってほしい。」
経営者や管理職から、そんな言葉を聞くことがあります。
私自身も、自走できる組織は強いと思っています。
一人ひとりが自ら考え、判断し、行動できる。
担当者が変わっても仕事が止まらない。
そんな組織を目指すことは、とても大切です。
しかし現場では、
「自走してください。」
という言葉だけが先に伝わり、結果として現場が混乱してしまうケースも少なくありません。
私は、自走と丸投げはまったく別のものだと考えています。
任せることと、丸投げすることは違います
仕事をお願いするとき、
「これ、お願い。」
「あとは任せます。」
という場面があります。
もちろん、相手を信頼して任せることは大切です。
しかし、
目的。
優先順位。
判断基準。
相談先。
ここが共有されないまま仕事だけ渡されると、人は何を基準に判断すればいいのか分かりません。
その結果、
「これで合っていますか。」
「どこまで進めていいですか。」
と何度も確認する人もいれば、
自分の判断だけで進めてしまう人もいます。
どちらも本人の能力ではなく、判断基準が共有されていないことが原因です。
人は止まるか、暴走するか
判断基準がない状態で、
「自由にやってください。」
と言われると、人は大きく二つの行動を取ります。
一つは、止まること。
判断を間違えたくない。
怒られたくない。
だから何度も確認するようになります。
もう一つは、暴走すること。
「たぶんこうだろう。」
と自分なりの解釈で進めてしまいます。
後になって、
「そこまでやるとは思わなかった。」
「勝手に判断しないで。」
と言われてしまうこともあります。
つまり、丸投げは自走ではありません。
人を止めるか、暴走させるかのどちらかになってしまうのです。
自走には、判断基準が必要です
自走できる人は、
何でも自由に判断しているわけではありません。
例えば、
・どこまで自分で判断していいのか。
・どこから承認が必要なのか。
・どこから決裁が必要なのか。
・困ったら誰へ相談するのか。
・優先順位は何を基準に決めるのか。
こうした基準が共有されているから、自信を持って動くことができます。
以前、「報告・承認・判断・決裁の違い」という記事を書きました。
これも同じ考え方です。
自走とは、自由に動くことではなく、
判断基準を共有した上で、自ら考えて動ける状態なのです。
管理者の役割は、答えを出すことではありません
自走する組織を作るために必要なのは、
管理者がすべて答えを出すことではありません。
管理者の役割は、
判断基準を整えることです。
迷いやすいポイントはどこか。
現場が困っていることは何か。
ルールは分かりやすいか。
相談しやすい環境になっているか。
そうした運用を見直し、必要に応じて改善していく。
これまで書いてきた管理ツールや引継ぎも同じです。
仕組みだけ作って、
「あとは現場で。」
では運用は定着しません。
運用を支え続けることも、管理者の大切な仕事です。
自走は、一人で頑張ることではありません
自走という言葉を聞くと、
「全部一人でやらなければいけない。」
そんな印象を持つ人もいます。
しかし、本当の自走は違います。
必要な時に相談する。
周りと連携する。
状況を報告する。
そうした行動も、自走の一つです。
一人で抱え込むことでも、
好き勝手に進めることでもありません。
組織のルールや目的を理解した上で、自分で考えて動けること。
それが、本当の自走だと私は考えています。
自走は、報連相の積み重ねで育ちます
自走というと、
「一人で考えて動くこと。」
というイメージを持たれることがあります。
しかし私は、そうは考えていません。
自走とは、
最初から一人で何でもできることではありません。
報告する。
相談する。
確認する。
認識を擦り合わせる。
その積み重ねによって、
「この判断で大丈夫。」
という共通認識が少しずつ育っていきます。
その結果、
以前は確認していたことも、自分で判断できるようになります。
つまり、
報連相が減るのは、
報連相をしなくなったからではありません。
報連相を積み重ねた結果、お互いの判断基準が揃ってきたからです。
だから私は、
自走とは、
報連相がいらない状態ではなく、
必要な報連相を重ねた先に生まれる状態だと考えています。
私が構造を見る理由
私は、自走を否定したいわけではありません。
むしろ、担当者一人ひとりが安心して判断できる組織を作りたいと思っています。
だからこそ、
「任せる。」
という言葉だけで終わらせるのではなく、
判断基準。
役割。
相談先。
承認フロー。
優先順位。
ここまで設計することを大切にしています。
丸投げは、信頼ではありません。
信頼は、
何度も認識を擦り合わせ、
報連相を積み重ねることで育ちます。
そして、
信頼関係ができるからこそ、確認は少しずつ減り、自分で判断できる場面が増えていきます。
自走とは、
最初から一人でできることではありません。
信頼関係の中で、少しずつ育っていくものなのです。
私は、人ではなく構造を見ること。
そして、担当者が安心して考え、判断し、行動できる仕組みを設計すること。
それが、長く続く組織づくりにつながると考えています。