私はエンジニア??:肩書きのその先にある価値
私のプロフィールやこれまでのキャリアストーリーをご覧くださり、ありがとうございます。有難いことに、私の価値観や仕事への姿勢に共感いただき、転職や副業に関するお問い合わせをいただく機会が増えました。その中で、私自身のポジションに対する考えを、正直にお話ししたいと思います。
これまでのキャリアから、データサイエンティストやデータアナリストのポジションをご提案いただくことが多く、転職エージェントやキャリアコンサルタントからも同様のアドバイスを受けます。専門家としてのアドバイスであり、転職そのものがゴールであれば、それは正しい方向性だと理解できます。
しかし、違和感があるのです。
その理由は「転職することがゴールではない」からです。
むしろこのモヤモヤを抱き、この路線に乗っかり、私も「やりたいこと」よりも「義務感」を優先してしまった結果が今に至ります。ここから脱却し、真に私が求める役割を見つけたいという強い思いがあります。
これまでの転職ではキャリアの方向に関する仮説と検証を繰り返してきました。しかしその仮説の前提となる「エンジニアとしてビジョンの実現を推進する」ことに違和感を抱いていたのかもしれないと気付きました。
最初のメーカーでの現場でのことです。当時の製造現場では、長年の慣習や職人の経験と勘に頼るばかりで、本質的な問題は解消されず、コストや時間をかけた対処療法が繰り返されていました。誰もが問題だと感じながらも、真の原因に気づけず、結果として現場メンバーには「付け焼刃な業務」が押し付けられ、疲弊していく状況を、入社半年で目の当たりにしました。
数億円する結晶育成炉が所狭しと並び、1回の製造に1か月近くを要するプロセス。この育成結果が事業部門に甚大な影響を与える中で、担当メンバーは育成条件と計測データを睨みながら、見守ることしかできません。これだけの作業と想いを込めて現場が取り組んでいるからこそ、私はより本質的な問題と課題の設定が必要だと強く感じたのです。
私は結晶育成の下流工程、基板や素子の加工開発を担当していましたが、担当部門が違えど、結晶の品質が自部門に直接影響します。だからこそ、シミュレーションやマテリアルズインフォマティクスによる育成条件最適化など、データサイエンスや数理最適化技術の導入を強く訴え、その新しいアプローチで担当事業部門を助けたいと願いました。研究時代は実験にやりがいを感じ、計算技術は未経験だった私が、それでも導入推進を提案したのです。しかし、様々な理由からそのビジョンは受け入れられず、私は転職を決意しました。
その後のキャリアでも、常に「現場はどうあるべきか」というビジョンを掲げ、その実現に向けて有識者と議論を重ねてきました。しかし、「ビジョン実現のためには、データサイエンスとして主体的に進めるしかない」という義務感が、次第に私を縛るようになっていたのです。
問題を抱える現場に寄り添い、どのように解決していくのかに熱くなれる私です。データサイエンティストやアナリストといった高度専門職に全く興味がないわけではありません。しかし、自らの手で高度専門技術を磨き続けることよりも、「現場に必要なことを常に思考し、最適な手段で本質的な価値を提供したい」と考えています。
だからこそ、私の興味あるポジションは、単に「データサイエンティストやアナリスト」という軸足に限定されるものではありません。これまでのキャリアで、現場の問題解決を模索する中でデータ活用が有効だと考え、その実現のために学び、適用してきました。しかし、その根底にあったのは、「本質を思考するプロセス」そのものであり、データ活用はあくまでそのための強力な「手段」の一つでしかなかったのです。
近年注目されている戦略人事は、企業の経営戦略の実現を目的として人材マネジメントを通じて企業の競争力強化に貢献するものです。「何のためにやるのか」、その理由を明確にする重要性が改めて問われる時代になってきました。
「努力は夢中に勝てない」と言われるように、ヒトの強みや特徴を活かせるポジションに配置することが本人だけでなく企業としても効果を最大化することになります。肩書やポジション名では適切に強みや特徴を結び付けるのは難しいと思います。
このプロフィールとストーリーを通じて、私の核となる価値観と、それが貴社(あるいは、応募先企業)のどのような貢献に繋がるのか、少しでもご理解いただければ幸いです。