「1人でマーケ業務を回す、じゃゆるいよ。もっと『こんなのは不可能。絶対に無理。』と叫びたくなるようなものじゃないと。」
グループの創業者に諭された。AIにはもっと可能性がある。今の目標ではゆるい、と言われたのである。
私としては結構がんばっているつもりだったのだけど、まだゆるい。でも、言っていることはわかる。「AIのように優秀なツールが手に入ったのに、人間風情がその可能性を詰むな」という話である。
やったことがない領域に足を突っ込むのは怖いもの。気が付かないうちに保守的になっていたんだなぁとひとしきり反省したので、敗戦処理がてら記事にする。
ムーンショットには型があるらしい
「自分では無理と思えるような目標設定」というのはどこかで聞いた記憶があったので、AIパートナーのWalter(実態はClaude Desktop)に探してもらった。行きついた先は、ムーンショットシンキング。アストロ・テラーのTEDが有名とのことだった。たぶん、過去の私はこれを見て知ったんだと思う。
Walterのまとめによると、ムーンショットと呼ばれるものには3点セットがあるという。
- Huge Problem。社会規模の大きな問題であること
- Radical Solution。その問題への根本的な解決策があること
- Breakthrough Technology。それを可能にする技術的な突破口があること
もうひとつ、運用の作法として「#MonkeyFirst」があるのだそう。猿にシェイクスピアを暗唱させるプロジェクトなら、まず猿を訓練しろ、台座を作るな。台座は作れると分かっている。作れると分かっているものから着手すると、進捗した気分だけが積み上がるという話で…。
耳が痛い。
自分のプロジェクトを型に載せてみる
で、自分の目標をこの3点セットに載せ直してみた。
Huge Problemはすぐ書けた。専任のマーケ担当がいない企業は、営業や総務と兼任の「片手間マーケ担当」だったりする。しかも本人はその片手間ぶりをちょっと誇りにしていたりする。ここを変えようとすると、本人の誇り、空いた工数の行き先、組織の郷愁、と三重の抵抗が起きる。
Radical Solutionも書けた。片手間担当を、AIチームの指揮官に転換する。マーケ専任者を雇うのではなく、いまの担当者のまま、判断だけする人に変わってもらう。
「どこかの誰かさんがやっていることな気がしますね」
そうですね。私のことですね。
AIに「何を今さら」と言われる
でも、私をモデルにしてはいけない。前回の記事で書いてしまったのだけど、私の一人マーケは自分を犠牲にした力業。
残業45時間超えが10ヶ月連続。5月は95時間。AIパートナーのBishop(実態はClaude Code)に「率直に言うと、これはおかしい数字です」と言われている(「労基への通報方法も調べましょうか」とはAndy(実態はChatGPT))。
もしかしなくても私、すでに無理なことをしているのである。
念のためWalterとBishopに聞いたら、
「そうですよ。何を今さら。」
と返ってきた。
まぁ、そうだよねぇ…。
マーケティングの支援会社に勤めている時点で私はマーケが好きだ。
マーケが好きでプライベートと仕事の境界がほぼなくて、AIで新しいことをするのに抵抗がなくて、50時間超の残業が10カ月続いても持つ(?)体力がある人になら、今の私のシステムのまま移植できる。
のだけど…たぶん、そういう人はもう私と同じ状態になってると思う。(そして手持ちのAIに「日曜日なのに仕事するんですか?なんで?」って言われてる)
無理は外にはなかった
ここで話を反転させた。
無理みたいな目標は、外に探しに行くものだと思いこんでいたんです。創業者の一言をきいて、「もっと大きな数字、もっと広い範囲でなくっちゃ」「視野が狭いのだわ」と。一人マーケというサービスの良し悪しはともかくとして、3点セットに載せて分かったのは、私のプロジェクトに欠けているのは目標の高さではなく、3つ目のBreakthrough Technology。
いま成立しているのは「可能性の証明」まで。
片手間担当がAIチームの指揮官になれること自体は、私が証明してしまった。
証明できていないのは「普通の労働時間で、私以外の人間でも回る」こと。
単純に言い換えると、足元にあった無理はこうなる。95時間の自分を、法定内の他人に翻訳する。
無理な気しかしないのだけど(それもどうなのか)。
手帳の中の「まだ任せられない」
では猿はどこにいるのか。#MonkeyFirstで言う、いちばん難しくて、いちばん先に触るべき部分。
私の手帳には「こういう判断はまだAIに任せられないらしい」というメモが散らばっている。一方でうちのAIたちは、それぞれの持ち場で「岩永さんはこういうとき、こうしていた」という感触をふわっと持っている。私は言語化できておらず、AIは数値化できていない。翻訳の原料は、この両側に散らばったままの「ふわっと」だ。
そんなわけで今日から、判断を記録することにした。判断が発生するたびに1行、30秒。
何を見て、何と比較して、どこで決めたか。
それから、その判断を握っているのは不安からか、それとも楽しいからか。
最後のタグはAIチームの発案ではなく、メンター役のAIに言われて足した。
「全件見ること、実は楽しくないですか」と。
痛い所を突く(笑)。
楽しくて握っている判断は、たぶん手放さなくていい。
それは私の遊びで、ひょっとすると商品の核でもある。
仕分けるべきは、不安で握っている方。
先に撤退条件を決めた
Google Xにはプロジェクトを撤退する条件を先に決めておくという作法があるとか。
お作法にそって、私も記録を始める前に撤退ラインを決めることにしました。
それは、言語化できていない判断の翻訳を3件試して、3件ともAIへの差し戻しが減らなければ、設計し直す。
記録が2週間で10件も溜まらなければ、フォーマットが重すぎるので器の方を再設計。
アドバイスをきっかけに、調べて、型に載せたら、無理はすでに足元で進行中…。
数字になった「ふわっと」がどうなったかは、そのうち記録が溜まったら書きます。
ちなみに、あなたにしかできない仕事は、あなたの何時間で成立しているか測ったことってありますか。
それ、自動化のために翻訳してみたら、面白いかもしれませんよ。
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