1
/
5

Draper University一番の目玉サバイバルウィーク体験談とシリコンバレーのスタートアップに思うこと

一番を目指すために仲間を見捨てていいわけじゃない

ドレイパー大学最大のイベントがこのサバイバルウィークです。これまでに日本人参加者はおそらく10人以下だと思われる上に、守秘義務を負っているので詳細は書けないのですが、一番の目玉だけあって一番思い出深いイベントであることに違いないです。

毎日、起業家や投資家、そしてスタートアップ界隈の専門家の講義を聞いたり、アントレプレナーとしてのマインドセットを鍛えるためのワークショップやピッチ練習をするのに少し飽きてきた頃に屋外で仲間とともに過ごす時間は本当に貴重です。

私のチームは私、アメリカ人の大学生、台湾人の起業家、アルメニア人の女性というメンバーで、それぞれ強い意見を押し通そうとするため、それが心配の種でもありました。案の定とある事件が発生し、そのときのリーダーの不満が爆発することがあり、そしてメンターにチーム全員で絞られました(笑)

しかし、その様子を見ていた起業家が、「なんと素晴らしいんだ、そう思うだろ?」と言ったのです。確かにそんなことでもなければそれぞれ勝手にやっていたことだと思います。しかし、その事件をきっかけとしてチームを見捨てないことを強く意識するようになったのです。

面白さ・楽しさ満点だが、もやしっ子には辛かった

私はそんなにコミュニケーション力が高い人間ではありません。そして、膝が弱いらしいのです。なのでサバイバルウィーク中は常に膝痛に悩まされていました。

しかし、他の仲間が手を貸してくれてなんとかやり過ごすことができました。チームだけではなく、他の参加者の人達も力を貸してくれました。その時、私は本当に心から感動しました。英語が不自由なのでそんなに面白いやつでもないのに話しかけてくれたり、助けてくれるというのは嬉しいことです。

正直、調子の悪さに一回帰ってやろうかと思いましたが(笑)結果的には思い出深く、そして楽しかったということができます。なお、女性も含めて参加者のほとんどは健康にちゃんとコンプリートしていますので安心してください。

ドレイパー氏がなぜこの学校を作ったのか分かってきた

ドレイパー大学はアクセラレータープログラムではありません。もっと手前のアイデアフェーズの人、アイデアすらない人のためのプログラムです。それでも最終的にはシリコンバレーの投資家にピッチできるくらいのアウトプットができるようになります。

私は最初、そこで資金調達の足がかりにしたいと考えていました。しかし、今となっては今回資金調達ができるかどうかは重要ではないと思うようになりました。むしろ今回はしないほうがいい。まだやっていないことがたくさんあると気付かされました。

起業するというのはとても大変なことしかありません。なので、「大きな市場」「破壊的アイデア」「指数関数的成長」が望めるビジネスとその逆のビジネスでは同じくらい大変だといえます。そうすればむしろ難しいとされている課題に取り組んだほうが、当たればリターンも大きいので望ましいと言えます。

じゃあどうしたらそういうビジネスを作れるのか。それは「ルールチェンジ」です。少しの創造性でルールを変えてより面白くする、より快適にすることができるのがビジネスです。

ドレイパー大学では大きな考え方をした上で既存のルールを角度を変えてみることで、新しいビジネスを作るための柔軟な考え方を身につけることを第一にしているように思います。だからこそ一見子供っぽいこともさせるのです。

元気な大学生や起業家を志す若者であればドレイパー大学の内容はすべて楽しめてしまうかもしれません。でも、おそらく大きく変わるのは、最初からすべて楽しめてしまうような人ではなく、自信はあまりないけど変えてみたいと思っている人だと思います。

こうしたシリコンバレー的な考え方を体感できるというのはとても貴重なのではないでしょうか。全身で自分の中の弱いところを乗り越えて、クレイジーなことに取り組むためのマインドを感じられます。

何でもスタートアップがいいわけじゃない

ここからは、これまでシリコンバレーに1ヶ月滞在して、起業家に必要な経験や知識を学び、そして自らのビジネスをブラッシュアップする中で感じた、スタートアップとその回りのエコシステムについて考えたことを書いてます。

いきなりですが、アメリカのビリオネア起業家のうち98%はVCからの調達をしていません。有名なビリオネア、例えばビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグ、ジャック・ドーシーなどはほぼ全員VCからの調達を実施している起業家です。これは何を示すのでしょうか。

VCはエグジットのために企業を成長させ、注目を集める必要があります。そのため、起業家を持ち上げるインセンティブが強く働きます。一方でVCを入れない非上場企業の場合は概してこうしたインセンティブが働きません。

時代の変化が早く、そして一度流行すれば爆発的に成長するIT系のベンチャー企業においてはまとまった資金力で、早めに市場における強いポジションを築く必要があります。すると企業側にとってもVCからの調達というのは合理性があるわけです。

一方でIT以外の場合は10億ドル企業になるまでに数十年以上の時間がかかります。そして、キャッシュも比較的回りやすいビジネスモデルであるため自己資本や借入だけで凌ぐこともできるでしょう。そのためVCはこうしたビジネスには投資しません。

起業家と一口に言っても何を実現したいのか、どんな課題を解決したいのかによって、その調達方法が良いのかどうかというのは大きく変わってくるのです。そのポイントがぶれてしまうと「自分はこういうことがやりたいのではなかった」と後悔することに繋がります。

シリコンバレーのスタートアップの中には、手早く時代に乗って資金調達をして会社を大きくしようということが一番最初に来ていて、それ以外の理由付けは後付けする人も多いように感じます。

本人がそれでやり抜くことができるのであれば別にいいと思うのですが、多くの場合失敗することを考えると自分の人生を、目前のお金やレピュテーションに使ってしまうというのは最終的に自分は幸せだったと言えるなのかなぁと思ったりします。

確かにドレイパー大学ではスタートアップを目指すための動機づけや訓練をつめます。卒業後はY Combinatorや500 Starupsに行く人もいます。ICOで何億ドル調達する人もいます。でもそうした「ザ・スタートアップ」を目指すだけでなくやり方はあります。

コンサルタントをしていた頃、売上10億ドルの非上場企業を担当したことがあります。創業者はまったく有名ではありませんが、高齢になった今でも経営に携わっていましたし、従業員から好かれていました。こういう企業も素敵だと思いませんか。

今はITの時代だからと言っても、人間が求めるモノってそこまで変わるでしょうか。資金を集めやすいこととユーザーから愛されることを同じように捉えてしまいがちな点が問題だと感じています。特に金余りの時代において日本でもVC投資が広がってきました。

その中で結局トレンドを追いかける運用方針しか持っていないようなファンドもたくさんあります。経済が「美人コンテスト」だと指摘したのはケインズですが、まさにシリコンバレーのマネをするくらいしか方針が見えません。

本気でクレイジーで新しいイノベーションを起こすベンチャーを応援するために、今はないバズワード作ってやるぞというくらいのスタートアップを応援するVCがあってしかるべき何ではないかなぁ。そしてなんなら自分でやろうかなとも考えるようになりました。

そのために、日本でも意見を言ってもいいんだというフラットでオープンな空気、そしてチャレンジすることをもっと楽しみ、失敗した人を応援できるような人にまず自分がなりたいと思います。