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ほめることについて

私がITベンチャー界隈で働くようになって十数年、この格言の中でも特に「ほめ」が苦手な方が多いように感じます。
塾屋時代に上司に徹底して教えられた「ほめ」について、少し書いてみようと思います。

大日本帝国海軍軍人で、太平洋戦争開戦時の際の連合艦隊司令長官を務めた山本五十六によると
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」
人材育成の基礎が凝縮された格言かと思います。

博報堂生活総研「生活定点」調査によると
「しかると成長 vs ほめると成長」という質問に「ほめると成長」と答えた人の割合は前回からほぼ変化がなく、2022年は91.0%となりました。男女差については、女性の方が約7ポイント高い結果となりました。地域差はほとんどなく、2022年もほぼ同率になりました。

とのこと
これは過去最高の割合で、ほめの重要性をみんな感じているのかなと思います。

実際に
ピグマリオン効果
好意の返報性などをみても、でもほめることは有効かなと思いますし、
ほめられたときに反応する脳の部位と現金をもらったときに反応する脳の部位はほぼ同じ」なんて話も聞いたことがあります。

褒めない文化!?

それなのに、なかなか褒めることに対してなかなかハードルを感じている方も多いように思います。

江戸時代の儒学者である貝原益軒によって書かれた教育論『和俗童子訓』には、
「人に三愚あり。我をほめ、子をほめ、妻をほむる、皆是愛におぼるる也」
と書かれています。
日本で最初の体系的な教育書といわれている同著には、褒めると人は高慢になってしまうので褒めるとことは愚かなことだと書かれています。
江戸時代には褒めない教育が施されていたようです。

そんな前提の中でも、管理職や経営陣と人材の話をしていると
ほめの重要性はわかってる!でも
どうやってほめるかわからない
ハラスメントにならないか心配
などなど
よく聞こえてくる意見です。

ほめるまえに

私が塾屋を始めた15年くらい前はまだまだハラスメントという言葉は今ほど巷にあふれてはいませんでした。
ただ、当時の上司にはむやみやたらにほめるのは相手を不快にさせたり、人間関係を悪化させる!前提条件としてほめるための準備をしろと言われていました。
個人的にはハラスメントのほとんどは次の前提条件をクリアできていれば解決するのかなと思っています。

相手をよく観察する
相手ことを知らずにほめるのはNGです。これをやってしまうとほめたのに一気に信頼を失ってしまいます。
ほめる相手の普段の行動や思考などをよく観察するからこそ、ほめの効果が高まります。
相手のよいところを10個あげてみましょう。
その観察のクオリティがほめのクオリティにつながります。

成果や能力ではなく、努力や姿勢を褒める
これもほめの重要な要素です。
褒められて能力に自信がつくと、挑戦を避ける傾向が生まれてしまいます。
しかも、結果が悪くてもそれを受け入れられず、エスカレートするとうそをつくようになってしまいます。
塾屋ではこの理由から点数をほめるのはNGでした。結果ではなく、その結果に至るプロセスをほめるように徹底されました。
「あそこであと5分頑張ったのがよかった!その姿勢が結果につながったね」
「前回も満点だったのに、慢心せずに基本をもう一度みなおしたのは素晴らしい!」
とかとか
余談ですが、悪いほめ方をしているのを上司に聞かれると呼び出されてめちゃくちゃ怒られていました。
お前は子どもをダメ人間にするつもりか!と・・・
大事なのは単発の結果ではなく、結果を出し続けることなので、そのための姿勢(結果の再現可能性に近いと思います)が大事だということです。

どうやってほめるの?

塾屋では「ほめ方にはレベルがある」と教えられてました。
集団塾の生徒向けではありますが、ビジネスに転用できるところも多いので、そのまま書きます。

レベル1:機関銃型
とにかくみんなに対して多くのほめの言葉を投げかけます。
みんなに対して褒める。
一人ひとりをほめる。
集団に対して褒める。
などなど
これを実践するために、ほめ言葉のバリエーションを10個以上いつもストックしていました。
前提条件をクリアしたうえで、これを実践すると、周囲の雰囲気を明るくできる副次効果もあったなと感じています。
ただ、むやみに多用しずぎるとほめ言葉が軽く聞こえてしまい、効果が薄れてきます。(観察をちゃんと続けていればこれも防げたりはしますが、結構な高等技術・・・)

レベル2:狙撃型
特定の相手を狙ってほめます。
みんなの前で一人を褒める。
その場のヒーローを作る。
など
「私もほめられたい!」と他の生徒に活を入れる効果もあります。
そのときにプロセスが一番よかった人をほめたいことろですが、毎回同じ人をほめてはいけません。
毎回同じ人をほめたり、前提の観察ができていないと、ずれたほめ方になって贔屓に見えてしまいます。

レベル3:間接型
個人的にはこれが一番お世話になりました。
新しい人間関係や、相手との距離感が遠いときにも有効です。
生徒との関係がいまいちのときや、転職して最初の人事面談などでもよく使ています。うまくいけばほめたこちらの評価も上がってしまうおいしい副次効果あり。
褒める相手との距離が近い相手や、自分よりも立場が上なひとの名前を使って褒めるだけ。
例えば、
「●●先生がキミの宿題のやり方を絶賛してたよ!」
「部長があなたの丁寧なメモには何度も助けられたって言ってましたよ」
などなど
仕事帰りの飲み会で上司の愚痴を言うのの3倍は上司の名前を使ってほめるようにしています。
そのために、上司から周りの人間のほめ言葉を引き出したりするのもセットでよくやっています。