パワハラを自覚をさせることは不可能である理由。
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パワハラ上司にどうやって自覚させようか…
職場でのパワハラは、全労働者にとって深刻な問題です。
しかし、加害者本人が自覚していないケースが非常に多いことをご存知でしょうか。
この疑問に対して私は、津野香奈美氏の著書『パワハラ上司を科学する』を読んで、自分なりに原因を考え出しました。
結論、パワハラを自覚させることは不可能です。
- そもそも罪悪感がない
- 他人を利用することをためらわない
- 相手の感情を読み取ることができない
そもそも、加害者には「パワハラをしてはいけない」という思考回路がありません。
ではどうすればいいのでしょうか?
私は最終的には転職しかないと思っています。
というのも、私がパワハラ上司2人に対処しようと思いましたが、個人レベルでは全く効果がなかったからです。
パワハラ上司よりさらに上の上司が動かなければ、組織内の改善は見込めません。
本記事では、『パワハラ上司を科学する』から得られた知見をもとに、パワハラ加害者がなぜ自覚しないのかついて詳しく解説します。
「パワハラ上司が改心しない」という前提を知ること、次に起こすべき行動が明確になるはずです。
目次
新書『パワハラ上司を科学する』を読んで
パワハラを自覚させることが不可能である理由3選
そもそも加害者は罪悪感を感じていない
加害者は高い社内評価を受けている
他人を利用することを躊躇しない
パワハラ気質の人の特徴
前提として「加害者は無自覚」である
部下に自分と同じ水準を要求する
自尊心が不安定(実は自信がない)
感情知能が低い
パワハラが起こりやすい構造的要因
「同質性」が非常に高い職場
「つながり」と「組織へのコミットメント」
結果として起こるパワハラ
業務範囲を超えた要求をする
メンバーの自由を制約する
優秀な部下を引きずり下ろす
集団から排除する
ではどう対処すればいい?
まず上司の上司に現状を相談
異動願を出す
最後の手段は転職
まとめ:パワハラ上司を自覚させることは考えてはダメ
新書『パワハラ上司を科学する』を読んで
『パワハラ上司を科学する』は、産業医である津野香奈美氏が執筆した、パワハラのメカニズムを科学的に解明した書籍です。
この本では、心理学や社会学の研究成果をベースに、なぜパワハラが起こるのか、加害者がなぜ無自覚なのかが詳細に説明されています。
この書籍は、一言でいうと「パワハラ研究の決定版」です。
特にパワハラがどうにかならないか…と考え詰めている人にとってオススメ。
すべての疑問やモヤモヤを解消して、次に起こすべき行動を明確にしてくれます。
- なぜパワハラは発生するのか
- パワハラしやすい人はどういう性格なのか
- パワハラ気質な人の特徴
本書を読むことで、感情的な対応ではなく、論理的かつ効果的なパワハラ対策を考えられるようになります。
パワハラを自覚させることが不可能である理由3選
被害者側が「上司に気づいてもらおう」と努力しても、状況が改善しないのには明確な理由があります。
ここでは、加害者が自覚しない理由を解説します。
そもそも加害者は罪悪感を感じていない
パワハラ加害者の多くは、自分の行動を「指導」や「教育」だと認識しており、罪悪感を全く感じていません。
むしろ、「部下のために厳しく接している」と考えているケースが大半です。
心理学的には、このような認識のズレを「認知的不協和」と呼ぶそうです。
自分の行動と実際の結果が矛盾していても、脳が自動的に都合の良い解釈をしてしまうのです。
罪悪感がない以上、加害者が自ら行動を改めることは期待できないでしょう。
加害者は高い社内評価を受けている
パワハラ上司の多くは、「会社から高い評価」を受けている場合が少なくありません。
というのも、パワハラに長けている人は2つの特性を兼ね備えているからです。
- 行動力・実行力がある
- 自分を良く魅せる能力に長けている
そのため、部下がパワハラを訴えても「あの人がそんなことをするはずがない」と信じてもらえないのです。
また、加害者自身も「会社に認められている」という自信があるため、自分の行動を疑うことがありません。
組織からの評価が、無自覚を強化してしまう悪循環が生まれているのです。
他人を利用することを躊躇しない
また、パワハラ気質の人は他人を利用することにためらいがない傾向があります。
以下、私の元上司に当てはまっていた行動です。
- 自分の評価を上げる目的で部下を助ける
- ウワサを意図的に流して自分の評判を上げる
- 逆にウワサを流して周囲の人間を下げる
被害者とは価値観が根本的に異なるので、加害者個人に働きかけても解決にはつながりません。
パワハラ気質の人の特徴
パワハラを起こしやすい人には、いくつかの共通した特徴があります。
『パワハラ上司を科学する』では、心理学的研究に基づいて、パワハラ気質の人の傾向が分析されています。
前提として「加害者は無自覚」である
パワハラ気質を持つ人の最大の特徴は、自分の行動が問題だと認識していない点です。
本人は「正しい指導をしている」「会社のためにやっている」と信じており、悪意がありません。
周囲から指摘されても、「誤解されている」「部下が弱すぎる」と考えてしまいます。
この無自覚さこそが、パワハラ問題を解決困難にしている最大の要因です。
部下に自分と同じ水準を要求する
パワハラ気質の人は、自分が過去に経験した働き方を絶対的な基準として、部下にも同じレベルを求める傾向があります。
「自分も若い頃は深夜まで働いた」
「休日返上で頑張った」
しかし、時代背景や個人の状況が異なることを理解できず、一律の基準を押し付けてしまいます。
この思考パターンは、世代間ギャップが大きい職場で特に顕著に現れがちです。
自尊心が不安定(実は自信がない)
パワハラ加害者の多くは、表面的には自信があるように見えます。
しかし、実は自信がありません。
自信がないからこそ、部下に威圧的な態度を取ることで優位性を確認しているのです。
本当に自信があれば、わざわざ自分の優位性を確かめる必要はありませんよね?
特に、自分より優秀な部下や、自分とは異なる働き方をする部下に対して攻撃的になる傾向があります。
自分の立場が脅かされるのではないかという恐怖が、パワハラ行動を引き起こす原因となっているのです。
感情知能が低い
感情知能とは、自分や他者の感情を認識し、適切にコントロールする能力のことです。
パワハラ気質の人は、特に怒りの感情をコントロールできず、衝動的に部下を叱責してしまいます。
また、相手の反応を感じ取る共感力が低いため、自分の言動が相手を傷つけていることに気づきません。
感情知能の低さは、幼少期の育ち方や過去の経験が影響している場合が多いとされています。
パワハラが起こりやすい構造的要因
パワハラは個人の問題だけでなく、組織や社会の構造が深く関わっています。
特に日本の企業文化には、パワハラを助長する要素が複数存在すると『パワハラ上司を科学する』では分析されています。
「同質性」が非常に高い職場
日本企業は、社員に対して高い同質性を求める傾向があります。
「みんなと同じように働く」「会社の価値観に合わせる」ことが暗黙のルールとなっている職場が多いのです。
同質性が高い環境では、異なる働き方や価値観を持つ人が排除されやすくなります。
- 体育会系の職場(過剰な悪ノリ)
- 男女比が極端に偏った職場(男95:女5など)
- 同年代で固められた職場(半数以上が50代など)
集団の属性から外れると、「協調性がない」「やる気がない」とレッテルを貼られることがあります。
それどころか、「気に入らない」という理由が正当化されてパワハラが発生することもあります。
「つながり」と「組織へのコミットメント」
日本企業では、プライベートも含めた濃密な人間関係が重視される傾向があります。
飲み会への参加や休日のイベントへの出席が、暗黙のうちに義務化されている職場も少なくありません。
また、組織への過度なコミットメントが求められ、個人の生活よりも会社を優先することが美徳とされます。
文化的な背景も備わって、個の侵害や過大な要求といったパワハラを正当化する土壌を作り出しているのです。
結果として起こるパワハラ
上記のような個人的要因と構造的要因が組み合わさることで、様々な形のパワハラが発生します。
ここでは、実際の職場で頻繁に見られるパワハラの具体例を紹介します。
業務範囲を超えた要求をする
休日や深夜に連絡を取ったり、プライベートな時間に業務を命じたりする行為が該当します。
組織の繋がりが強すぎて、個人と組織の境界線があいまいになることが原因です。
「いつでも連絡が取れる状態でいろ」という要求も、業務範囲を超えた過度な干渉です。
加害者は「緊急時のため」「仕事熱心だから」と正当化しますが、部下の私生活を侵害しています。
メンバーの自由を制約する
休暇の取得を妨害したり、定時で帰ることを許さなかったりする行為が該当します。
「みんな残っているのにお前だけ帰るのか?」
というプレッシャーをかけることも、自由の制約です。
組織全体で長時間労働が常態化している場合、このタイプのパワハラが蔓延しやすいでしょう。
優秀な部下を引きずり下ろす
同質性が強い組織だと、「飛び抜けて優秀な部下」を組織の水準に引きずり下ろすことがあります。
「同じでない」存在が非常に目立つからです。
たとえば、電卓でやっていた業務を、エクセルを使って自動化してしまったケースが想像しやすいと思います。
- 「やり方を変えるな」
- 「ミスしたら困るから電卓で計算しろ」
私の経験上、理由は建前であることがほとんどでした。
集団から排除する
特定の人物を意図的にチームの活動から外したり、孤立させたりする行為が該当します。
「同じでない」存在を仲間外れにする行為です。
- 仕事ができないから
- ちょっと変わっているから
- 外国人だから
- なんとなく気に入らないから
情報を共有しない、会議に呼ばない、他のメンバーにも接触を避けるよう指示するなどの行動です。
小学校レベルのいじめは、職場でも存在します。
ではどう対処すればいい?
パワハラ加害者を自覚させることは困難だと理解した上で、被害者がとるべき具体的な対処法を解説します。
重要なのは、パワハラ上司を変えようとしてはいけないことです。
まず上司の上司に現状を相談
最初のステップとして、パワハラ上司のさらに上の管理職に相談することをおすすめします。
パワハラ上司に言っても効果はないからです(悪いことの自覚がないので)。
具体的な事例を記録し、日時や発言内容を明確に伝えることが重要です。
感情的にならず、客観的な事実を淡々と説明することで、信頼性が高まります。
ただし、組織全体でパワハラが容認されている場合、この方法では解決しない可能性もあるでしょう。
異動願を出す
可能であれば、別の部署への異動を申し出ることも有効な対処法です。
人事部に相談する際は、異動理由を明確に伝え、パワハラの証拠があれば提示しましょう。
ただし、異動が実現するまでには時間がかかる場合が多いです。
その間も記録を取り続け、心身の健康を守ることを最優先に考えてください。
最後の手段は転職
組織全体でパワハラが容認されている場合は、状況の改善は見込めません。
『パワハラ上司を科学する』では、放任型リーダーのいる組織ではパワハラの発生率が4倍以上になると示されています。
実は、私はパワハラ上司に真っ向から対立したことがあります。
結果として、パワハラは一層ひどくなり疲弊しただけで終わりました。
最後の手段として、2回とも転職という選択肢を選びました。
自分の心身の健康を犠牲にしてまで、その会社に留まる必要はありません。
まとめ:パワハラ上司を自覚させることは考えてはダメ
- 罪悪感の欠如
- 高い社内評価
- 構造的な問題
パワハラ気質の人の特徴として、部下に自分と同じ水準を要求したり、自尊心が不安定だったり、感情知能が低かったりする点が挙げられます。
また、日本企業特有の同質性や過度なコミットメントを求める文化が、パワハラを助長している構造的要因となっています。
最も重要なのは、「加害者を変えようとしないこと」です。
自分自身を守る行動を取るしかありません。
サイコパス的な人にエネルギーを吸われるよりも、あなたの人生を良くするためにエネルギーを使いましょう。