経験はある、だから大丈夫だと思っていた
私はこれまで
板金設計、そして樹脂設計に携わってきました。
設計の仕事をしていれば、
「図面を読む力」
「CADを扱うスキル」
「形状検討する力」
といった経験やスキルは
設計分野が変わっても一定程度は
活かすことができる。
以前は、そんなふうに考えていました。
ところが、
実際に違うフィールドに入ってみると
そう簡単ではありませんでした。
専門分野が変わると「当たり前」が変わる
樹脂設計を経験してきた私が、
別の設計、金型の世界に入ったとき、
それまで身につけてきた知識が
思ったように使えない場面がありました。
CADは使える。
図面も読める。
設計の経験もある。
それなのに、
「自分は何を見ればいいのだろう?」
という感覚が出てくる。
これは、
単純に知識が足りないという話では
ありませんでした。
問題は「知らないこと」だけではなかった
新しい分野に入ると
当然、知らない専門用語があります。
でも、
本当に困ったのはそこだけではありません。
それまで自分が「設計では当然」
と思っていた考え方そのものが、
別の分野では違っていたのです。
具体例
・設計図面の中身よりも部品再現性確保の
ための金型工程に意識が向きやすい
・業務改善への関心は高い一方で標準化には
あまり力が注がれない。
・担当者ごとの我流の業務プロセスが
定着している
・蓄積した知見は個人の財産とされ
共有が進みにくい
・社風に馴染むまでは新しい意見や
提案が受け入れられにくい
つまり、
知識がないというより
「何を基準に考えればいいのか」
が分からない。
これが大きかったのだと思います。
立ち位置の入れ替え
ふと逆の立場を考えるようになりました。
もし、
板金設計の経験を持った人が
樹脂設計に移ったらどうだろう?
CADは使える。
図面も読める。
機械設計の基本も分かっている。
だからこそ、
設計経験があるんだから
樹脂設計もできるだろう、
と考えてしまうかもしれません。
ところが、実際には
「何を見ればいいのか分からない」
という壁にぶつかる可能性があります。
板金と樹脂は何が違うのか
例えば、
板金では材料を曲げたり
切ったり、つないだりする。
一方、射出成形では
材料 → 金型 → 成形 → 冷却 → 収縮 → 離型
という別の世界観があります。
だから、
同じ「形を作る設計」でも
設計者が考えるポイントが変わります。
この形はCADで作れるか?
だけではなく、
・この形は金型から抜けるのか?
・肉厚はどうなるのか?
・ヒケや変形はどうなるのか?
・成形した後、どんな状態になるのか?
という視点が必要になります。
だから、板金の経験を捨てる必要はない
ただし、ここで誤解してほしくありません。
板金設計の経験が樹脂設計では役に立たない、
という話ではありません。
図面を読む力。
CADで形状を考える力。
公差を考える力。
部品同士の関係を見る力。
加工や組立を意識する力。
これまで培ってきた設計経験には
活かせるものがあります。
問題は、
「何を捨てるか」ではなく
「何を持ったまま、何を新しく学ぶか」
なのだと思います。
異なる世界に入って気付くこと
私自身、
異なる設計分野に入った経験があるからこそ、
「経験があるのに、なぜ分からないんだろう」
という感覚が分かります。
そして今振り返ると、
必要だったのは
知識を片っ端から覚えることではなく、
「その分野では何を基準に設計を見るのか」
を最初に知ることだったのでは
ないかと思います。
経験を残すことを考えるようになる
もう一つ、
50代になって考えるように
なったことがあります。
これまでの経験を
ただ自分の頭の中に置いて
おくだけでいいのだろうか。
経験は
その人にしか分からないままだと
別の人には伝わりません。
だから、
自分が苦労したところを
次に同じことで悩む人が
少しでも早く越えられるようにする、
ということに意味があるのではないか。
そう考えるようになりました。
だから、板金→樹脂で悩む人に伝えたい
もし今、板金設計の経験を持っていて
樹脂設計に転職することになった。
CADは使える、
でも樹脂設計になると
何を考えればいいのか分からない。
本やネットで調べても
専門用語ばかりで頭に入ってこない、
という状態なら、
それは、
あなたに設計経験が
ないからではないのかもしれません。
これまで身につけてきた「設計を見る視点」と、
樹脂設計で必要になる
「見る視点」が
まだつながっていないだけかもしれません。
では、
板金設計の経験を持ったまま樹脂設計に
入るとしたら最初に何を
見ればいいのでしょうか?
私自身の経験を整理すると、
「樹脂の専門用語を大量に覚えること」
から始める必要はないと考えています。
まずは、
「樹脂部品は、なぜこの形になっているのか?」
というところから見ていく。
材料、金型、成形、離型。
そして、
肉厚、R、抜き勾配、リブ、ボスなど。
それぞれの形状には
「そうなっている理由」があります。
そこが分かってくると
これまでの設計経験と樹脂設計が
少しずつ繋がってきます。
もし今、あなたが
「板金設計から樹脂設計に移るとしたら……」
一番不安なことは何でしょうか?
・樹脂の材料が分からない
・肉厚やリブ、ボスが分からない
・抜き勾配がなぜ必要なのか分からない
・金型のことが分からない
・CADでは形を作れるけれど
何を確認すればいいか分からない
・そもそも、どこから勉強すれば
いいのか分からない
あなたなら
何を質問しますか?
そして、
よければ、コメントで教えてください。
いただいた質問をもとに、
板金設計経験者が樹脂設計へ移るとき、
最初に知っておきたいことを
一つずつ整理して共有につなげます。