最近非公式のVTuberプロファイルサイトをつくっている。サイトの主人公「結萌ひまり」は、私が一番熱心に追いかけていたVTuberだった。
卒業発表から卒業までの期間は、思っていたよりもずっと短いものだった。彼女に関する情報の多くが、卒業と同時に非公開になると知って、ずっと引っかかっていたことがある。一般人のキャリアは履歴書という形で残せるのに、VTuberは卒業した瞬間、まるで存在ごと消えてしまう。それがどうしても受け入れられなかった。
だから、残せるうちに残そうと思った。そう考え、プロフィールや配信本数、総配信時間、コラボ対象などをまとめたWebサイトの制作を始めました。
ゴールデンウィークに台湾へ帰る飛行機の中で、ノートに手描きでページのラフを描いた。そのラフをもとに情報構造と画面構成を整理し、ReactとAIを使って実装を進めました。
AIに伝えるという、新しいコミュニケーション
そこから実装に進む中で、これまで経験したことのない壁にぶつかることになる。
React自体は2024年から交流会を通じて学んでいるが、本格的なプロジェクトとして開発したのは今回が初めてだった。
これまでのコミュニケーションは、相手も人間であることを前提にしていた。例えば設計書を書くときも、細部まで書き込まなくても相手が理解してくれるだろう、という期待があった。けれど、相手がAIになったとき、どこまで言葉を尽くすべきかは、今でも試行錯誤している。
開発を始めた頃は、「このような機能が欲しい」という曖昧な状態のままAIに指示を出すことが多く、意図しない機能ができてしまうことも多かった。結果として、完成にこぎつけるまでに、バグ修正だけでかなりの時間を費やすことになった。
けれど、直近のハッシュタグ機能を作ったときは、実装よりも先に、設計を固めるためにAIとの相談に多くの時間をかけた。その結果、AIに実装を依頼したら1〜2時間で仕上がった。
そう考えると、AIとのコミュニケーションも、言語化する力や物語る力が試される場なのかもしれない。それはどこか、コンテンツ産業の仕事にも近いものがあると言えるかもしれない。
AIに任せること、人が決めること
ただ、AIに任せてよい部分と、任せるべきではない部分の線引きも、同時に必要だった。
AIとは、アーキテクチャやコードについて一緒に議論しながら開発を進めているが、画面の見せ方だけは自分で決めている。しかし、「誰に、何を、どのような形で届けたいのか」という判断までAIに任せるべきではないと考えている。なので、細かいCSSはAIに任せている一方で、レイアウトはPowerPointやExcelを使って、自分で設計図を描いている。
この部分は、私自身が美術の専門教育を受けていなくても、AIに任せきるべきではないと感じている。完全にAIに任せてしまうと、どうしても似たようなデザインになりがちだ。むしろそこは、人間らしさを出すための余白だと思っている。
まだ十分に届いていない、という現実
このサイトはまだ制作中だが、すでに一部の内容をSNS上で公開している。求職サイトでは完成後の全体像を見てもらえるのに対し、SNSで公開しているのは、ほぼ確定した一部の内容のみだ。
しかし正直なところ、ファンからの反響はまだ少なく、その点は少し気がかりだ。そのため、当初決めていた実装の優先順位も、「どうすればファンがこのサイトに戻ってきたくなるか」という視点で、都度見直している。
そして、当初の構想は「どんなVTuberでも、バックエンドの情報を差し替えるだけで、そのVTuberの分析ページを作れる」というものだったが、現時点では市場のニーズがまだ明確に見えていない。だから、今のところは個人の興味として続けていくつもりでいる。
言葉にする力を、鍛え直す
このプロジェクトは、「好きなものを残したい」という個人的な思いから始まったものだ。
制作を進める中で、AIを使った開発では、単に指示を出すだけではないのだと気付いた。目的や条件を整理し、相手が判断できる形に変換する「言語化する力」や「物語る力」が必要だ。
そして、ただ「実装が完了した」だけでは、コンテンツが人に届いたことにはならない。誰に向けて、どのように見せ、どのような理由で再び訪れてもらうのかまで考える必要がある。
目的を整理し、必要な情報を構造化し、相手に届く形へ落とし込む。この工程は、システム開発だけでなく、コンテンツの企画や制作にも共通するものだと感じている。
これまでエンジニアとして培ってきた力を、今回は自分が好きなコンテンツのために使えるようにしている。
これからも技術とコンテンツの間に立ち、残したいものを誰かに届く形へ変えていきたいと考えている。