「マッサージがないと体が動かないんだ」
訪問マッサージの仕事を始めて間もない頃、ある患者様にそう言われたことがあります。
その方は脳梗塞の後遺症があり、体動や発語に困難を抱えながらも介護サービスや福祉器具を活用しながらお一人で生活を続けている方でした。
担当者の変更やお休みの連絡ミスなどのトラブルが重なり訪問ができなかったことがあり、新しい施術者の訪問に合わせて先輩社員と一緒に謝罪に伺いました。
その方は施術を受けながら謝罪する私たちに怒りをぶつけ、泣きながらこう言いました。
「手すりを掴もうとしても、力が入らなくて握れないんだ」
「お前たちにはこの不自由さはわからないだろう」
施術が進むにつれて、手を握ったり開いたりして少しずつ動きを取り戻していくご自身のお身体を確かめるようにしていたことが印象的でした。
お一人で生活をするその方にとって、手すりを握れないということはベッドから起き上がったり、歩行器を使ってトイレに立ったりすることも困難となり生活全般に影響がでる死活問題でした。発語が不明瞭で言葉を捉えることが難しい方でしたが、マッサージを受けることがどれほど重要か涙ながらに語るその姿から、そのお気持ちは不思議なほど伝わってきました。
自分の携わることになったサービスがこれほど人を支えることが出来るんだと感動したことを覚えています。同時に、たとえ「たった1回お休み」なだけでも、自分には想像もできないような不自由を感じる方を顧客としているサービスなんだと気持ちを引き締め、業務に向き合う姿勢を決定づける出来事となりました。
その後も様々な患者様やご家族、施設スタッフ、ケアマネージャーの方々と関わりながら、現場で多くのお話を伺ってきました。その中で感じるようになったのは、身体のケアや健康を支えるサービスは、単に施術や運動を提供するものではなく、その人の生活そのものを支える役割を持っているということでした。
身体の状態が少し良くなることで外に出る意欲が生まれたり、人と会う気持ちが前向きになったりする場面も多く見てきました。
健康に関わるサービスは、病気や不調への対応だけでなく、人の生活の質を支える大きな力を持っているのだと感じています。
現在、訪問サービスは医療や介護の分野で利用されることが多いですが、ヨガやピラティス、パーソナルトレーニングなどのウェルネス領域においても、自宅でサービスを受けられる訪問型の仕組みは今後さらに広がっていく可能性があると感じています。
これまで現場で利用者の声を聞きながら、施術者や医療機関と調整しサービスを届ける役割を担ってきました。
今後はこうした経験を活かしながら、健康や生活の質を支えるサービスの運営や改善に関わり、多くの人が「続けられる健康習慣」を持てる仕組みづくりに携わっていきたいと考えています。