【Method:詳細版(信頼性・妥当性の担保を含む)】
【Method:詳細版(信頼性・妥当性の担保を含む)】
2. 方法(Method)
2.1 研究デザイン
本研究は、学校教育における芸術表現活動を対象とした
質的記述研究(Qualitative Descriptive Study)
の枠組みで実施した。
アート作品・対話の逐語録・振り返り記述など、多様なデータを並置しながら
現象の意味構造を明らかにすることを目的とし、
再現性よりも**厚い記述(thick description)**による理解を重視した。
2.2 研究対象と場面
- 対象校: 公立小学校(都市部)
- 学年: ○年生 1 クラス(児童数:○名)
- 授業者: 担当教員 1 名(経験年数:○年)
- 研究者: 観察者 1 名(教育学専攻、質的研究経験あり)
2.3 授業で実施した活動の詳細
① 10分スケッチ(非言語的即興表現)
- 用紙と色鉛筆を用い、児童が「今日の気持ち」を線・形・色で表現
- 制作の目的は「上手に描くこと」ではなく、「気持ちの可視化」であることを事前に明示
② タイトル付け(意味生成プロセスの可視化)
- 作品に対してタイトルを付すことで、自己の表現意図をメタ認知的に捉える機会を提供
③ ペア対話/サークル対話(対話的意味構築)
- 児童同士が互いの作品について質問・感想・解釈を共有
- 対話のルール:相手の発言を否定しない/遮らない/相手の意図を確かめながら返す
④ 振り返り記述(reflective writing)
- 「気づいたこと」「感じたこと」「他者の言葉で変わったこと」などを記述
2.4 データ収集方法
収集したデータは以下の通りである。
データの種類内容目的
作品データ(n=○)
児童が制作したアート作品
内的経験の外在化を読み取る
逐語録(授業観察記録)
発話、行動、表情等
認知・情動プロセスの分析
児童の振り返りカード
気づき・解釈の変化
メタ認知的気づきの把握
対話の記録
ペア/サークル対話の発言
対話的認識生成の分析
教員インタビュー
授業意図・児童理解
解釈の三角測量に用いる
2.5 データ分析方法
(1)質的内容分析(Qualitative Content Analysis)
Berelson(1952)に基づき、意味単位(meaning unit)を抽出し、
次の 4 カテゴリにコーディングした。
- 内的経験の外在化(象徴表現・色/線の使用・情動の痕跡)
- メタ認知的言明(思考・情動の気づき、理由の説明、自己調整の記述)
- 対話による意味の再構築(他者の発言により解釈が変化した記述)
- 探究的態度の萌芽(問いの生成、再試行の意欲、意味の再構成)
(2)比較分析(Constant Comparative Method)
- コード間の差異・共通性を比較
- 児童による表現 → 対話 → 再解釈のプロセスを時系列で整理
- 授業者の語りと児童の行動を照合し、隠れた意味構造を抽出
(3)三角測量(Triangulation)
以下の 3 種のデータを相互照合し、解釈の信頼性を担保した。
- 観察データ
- 児童の言語データ
- 教員インタビュー
2.6 信頼性・妥当性の確保(Trustworthiness)
質的研究における信頼性確保の観点(Lincoln & Guba, 1985)を適用し、以下の支援策を講じた。
(1)Credibility(信頼性)
- 複数回の観察を行い、現象の自然な変動を把握
- 児童の発言と行動を逐語的に記録し、厚い記述(thick description)を確保
- 教員への member checking を実施し、解釈の妥当性を確認
(2)Transferability(移転可能性)
- 授業環境・活動内容・児童の特性を詳細に記述し、他校への適用可能性を示す
- 活動の目的・手順を明示し、再現可能な方法パートを構成
(3)Dependability(一貫性)
- コーディングプロセスを文書化し、外部査読者による audit trail を作成
- データ分析の判断基準を明示し、分析プロセスの透明性を担保
(4)Confirmability(中立性)
- 研究者の先入観を排除するため、研究者メモ(reflexive notes)を保持
- 児童の語りと作品を一次データとして重視し、解釈の偏りを避けたディスカッションを実施
2.7 倫理的配慮
- 本研究は、所属機関の倫理委員会による承認を得て実施
- 児童・保護者に対し、研究の目的・方法を説明し、同意(informed consent)を取得
- 個人情報は匿名化し、成果公表時には特定されないよう十分配慮
- 児童の表現内容において心理的負担が生じないよう、活動後のフォローアップを実施