人間が抱える問題を解決するためにしてきたこと
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2008年、この年は、リーマンショックが起きた。
当時のわたしは、IT業界にいた。
IT技術者を派遣会社であり、リーマンショックの影響をダイレクトに受けていた。
わたしの目の前で、何年も共に働いてきたスタッフが、雇用の危機に瀕していた。
プロとして甘いのは重々承知している。
だが、その時のわたしは、「何とかできないか?」と考えていた。
そして、偶然に見つけたのが「キャリアコンサルタント」の資格だった。
正直なことを言えば、資格の内容は、よく分かっていなかった。
だけど、「スタッフたちを支援できるかもしれない!」という想いが、わたしを資格取得に向かわせた。
軽自動車が買えるくらいの費用を払って、スクーリングの受講を選択した。
通信でも受講できたし、通信の方がうんと安かったのだが、わたしの直感は「実務で使うなら、スクーリングしかない」と鳴り響いていた。
妻に頼み、受講料を工面してもらった。
1人目の子どもが生まれようとしていたときだった。
スクーリングは、週に2回、夜間に行われた。
リーマンショックの影響により残業が無かったことが追い風になった。
講師は、やさしくも厳しい人だった。
『理論、小テスト、ロールプレイ』をひたすらと繰り返し、わたしは鍛えられた。
キャリアコンサルタントの資格は、1発で合格できた。
鍛えて頂いた成果だった。
だが、すぐに問題が起きた。
キャリアコンサルタントを活かすステージがなかったのだ。
職場環境は大きく変わっていた。
スタッフへのキャリア支援をする余裕は、業界にも、社内にも、どこにもなかった。
わたしはキャリアコンサルタントの技能を活かし、研鑽するために、福祉の業界に身を置いた。
都内の自立支援の窓口に片っ端から連絡をして、面接を申し込んだ。
どれも断られた。
神奈川県の自立支援の窓口に片っ端から連絡して、面接を申し込んだ。
1社だけ、面接をしてくれる企業があった。
ありがたかった。
そして、採用された。
キャリアコンサルタントとしてのデビューだった。
わたしは講師から徹底的に鍛えて頂いた技能を活かして、早い段階から成果を出すことができていた。
それでも、最初は戸惑いの連続だった。
初期の頃に、特に驚いたのは、精神疾患、知的障害、発達障害等を抱えている方々の存在だった。
知識としては知っていたが、目の当たりにすると、まったく別のものだった。
わたしは悟った。
『対人支援をするうえで、病気や障害は、避けて通れない、、、』と。
わたしは徹底的に勉強した。
「うつ病」であれば、その症状だけではなく、病理や診断基準、治療方法、そして、人体の仕組みまで。
【人間は、五感で情報を感知し、情報は神経を伝達し、脳に入る前にフィルタリングがあり、フィルタを通過した情報は海馬に一時保存され、海馬に隣接した扁桃体から神経伝達物質が分泌され、神経伝達物質は情報に『評価』を行う。評価を受けた情報は、辺縁系でブーストされ、大脳で統合される。この際、側頭葉から『同等の評価を受けた情報』が呼び出され、大脳で一緒に統合される。統合された情報は「認識」となり現実として捉える。認識は側頭葉に記憶され、また同等の評価を受けた情報を統合する際に呼び出される】
このプロセスがあるから、うつ病を抱える人は、つらい情報を認識した際に、記憶から同等のつらい記憶が呼び出されてしまい、つらい過去に囚われていく。
だが、プロセスさえ理解してしまえば、うつ病の苦しみは回避できてしまう。
しっかりと治療を受けていただき、安全な支援のかかわりを提供し、楽に、負担なく、回復と自立の一歩を支援できるようになった。
ここからわたしの理論への傾倒は加速していく。
人間理解においては、人体の仕組み、認知プロセス、言語学、コーチング、等を学び、実践に投入した。
論理的思考においては、不完全性定理、フレームワーク、ロジカルシンキング、等を学び、無矛盾な実務を実現した。
チームビルドにおいては、集団心理を念頭に、認知プロセスの脆弱性をケアした業務フローを策定し、短期間で成果を出せるよう推進した。
人間理解と論理的思考をかけ合わせることで、低負担かつ高効率なトレーニングプログラムを創発した。
わたしを実践で育ててくれたのは、たくさんの相談者たちだった。
病気や障害、経済的困窮、人間関係、虐待やDV、その他あらゆる悩みを抱えた何千人もの人たちが、悩みを打ち明け、共に問題と向き合い、目標を定め、策を考え、取り組んでいくことにより、わたしは力を付けていった。
苦しく、つらく、泣きたくなるような想いが、わたしを通じて、更にたくさんの人たちを支えていた。
わたしの胸の中には、たくさんの人たちの苦しみの過去と、たくさんの人たちの達成の現在が、理路整然と並んでいる。
この想いは、当然に、社会に還元されるべきだと信じている。
現在は、生成AIの発展と普及に伴い、既存の理論体系の再構築をしている。
これまで「心理学」と呼ばれていた信仰を解体し、本当に「人間に対して効果のある理論」に再構築することで、社会はもっと豊かになれる。
わたしは新しいステージを探しています。
この想いを理論に変えて。