劣化ChatGPTにならないために考えたこと
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前回は、生徒に使ってもらうためには、極限まで不要な摩擦を小さくすることが重要だという話を書きました。
生徒は、わざわざページを開いて、ログインして、学習コンテンツを選んではくれません。
であれば、毎日確実に開くであろうLINEを起点にすればよいのではないか。
そう考えて、LINEから質問対応ができる機能を追加しました。
また、能動的な働きかけの手段として、決まった曜日・決まった時間に学習を促すリマインダーも、LINE経由で送れるようにしました。
今回は、その先の話です。
LINEを起点にすることで、学習への入口はかなり近くなりました。
しかし、それだけで生徒が継続的に学習ページへアクセスしてくれるわけではありません。
では、どうすれば一人でも多くの生徒に学習ページを使ってもらえるのか。
今回は、その問いに対して教材テーマを設計した話を書きます。
1. 「ChatGPTでよくないですか?」を超えるために
質問対応を作ったことで、一部の生徒は特に指示をしなくても、コンスタントに利用してくれるようになりました。
これは大きな進歩でした。
ただ、このままだと、どこまでいっても「ChatGPTでよくないですか?」を超えられません。
もちろん、プロンプトである程度細かく指示することはできます。
しかし、質問対応そのものの質は、基本的にはChatGPTとそのAPIに依存します。
つまり、ただ質問に答えるだけであれば、本家のChatGPTを使えばいい。
自分が作るサービスとして継続的に使ってもらうには、質問対応だけでは弱いと感じました。
そこで考えたのが、質問をその場限りで終わらせないことです。
生徒が送った質問をデータベースに蓄積し、その内容を要約して、担当講師が確認できるようにしました。
たとえば、ある生徒が数の計算や符号について何度も質問している場合、講師側には次のような形で表示されます。
「この生徒は、正負の数の計算についての質問が多いようです。特に、カッコがついた計算について繰り返し質問しています。類似の問題を渡すことで、より理解を深めることができるでしょう。」
このように、質問対応を単なるチャットで終わらせず、塾での指導に活用できる形に変えました。
これにより、個別指導の精度を上げられるのではないか。
講師が生徒のつまずきを把握しやすくなるのではないか。
そう考えて実装しました。
2. 体感できる利益がなければ、使われない
ただ、要約機能は悪くないものの、サービスの主軸に据えるには少し弱いと感じました。
会話履歴をもとに苦手分野を分析すること自体は、ChatGPTでもできてしまいます。
もちろん、講師が確認できることや、塾の指導に接続できることには意味があります。
しかし、それはどちらかといえば講師側の価値です。
生徒本人が「これは使う意味がある」と感じられる利益としては、まだ弱い。
そこで、一周回ってというか、やはりというべきか、生徒本人が使う理由を感じられる教材が必要だと考えました。
ただし、ここで以前と同じ作り方をしていては、また同じ失敗をします。
繰り返し学習が必要なことと、繰り返し学習できるコンテンツがあれば生徒が使ってくれることは、まったく別の話です。
以前の私は、ここを少し楽観的に考えていました。
良い教材があれば使われる。
必要な機能があれば使われる。
そう考えていました。
しかし実際には、そうではありませんでした。
生徒が行動するかどうかは、「役に立つかどうか」だけでは決まりません。
その利益を、生徒本人がどれだけ具体的に感じられるか。
そして、その利益が、使い始める面倒さを上回るか。
ここを考える必要がありました。
3. 学校の英単語テストに寄せる
そこで注目したのが、学校の英単語テストです。
前回、学校には塾とは違って強い強制力があるという話をしました。
その代表例の一つが、英単語テストです。
学校によって頻度は違いますが、授業ごと、あるいは週に一回などのペースで実施されます。
授業の冒頭で行われ、しっかり採点されることも多いです。
そして、この英単語テストは多くの場合、学校で使っている教科書をもとに出題されます。
「Sunshineの何ページから何ページまで」
「New Horizonの何章全部」
といった形です。
であれば、英単語学習コンテンツを徹底的に学校の教科書に寄せれば、生徒にとって使う理由が明確になります。
「英語力を上げるために勉強しよう」では弱い。
しかし、「明日の単語テストで点を取るために使える」なら、利益がかなり具体的になります。
そこで、英単語学習コンテンツのベースを学校の教科書準拠にしました。
出てくる英単語は教科書に合わせる。
章ごとに取り組めるようにする。
学校の進度に合わせて、必要な範囲を選べるようにする。
これにより、強制的に発生する英単語テストが、生徒が学習サイトにアクセスするきっかけになることを期待しました。
4. それでも、思ったほどアクセスは増えなかった
教科書準拠にしたことで、少なくとも「何の役に立つのか分からない教材」ではなくなりました。
英単語テストという明確な利用シーンもあります。
学校の成績や小テストの点数にもつながります。
生徒にとっての利益は、かなり見えやすくなったはずでした。
しかし、それでも期待していたほどアクセスは増えませんでした。
ここで改めて考えたのは、生徒が怠けているわけではないということです。
むしろ、生徒は生徒なりに合理的に判断していました。
英単語テストは、たしかに点数がつきます。
しかし、多くの生徒にとっては「直前に少し見れば何とかなるもの」でもあります。
つまり、利益はある。
でも、そこまで大きな利益ではない。
一方で、学習サイトを使うには、まだいくつかの手間が残っていました。
ページを開く。
ログインする。
教材を選ぶ。
教科書を選ぶ。
章を選ぶ。
問題を始める。
一つひとつは小さな手間です。
しかし、勉強に向かう前の生徒にとっては、この小さな手間が思った以上に大きい。
教材の内容を学校のテストに寄せることで、感じられる利益は増やせました。
しかし、使い始めるハードルはまだ高かったのです。
5. 「使う理由」だけでは足りなかった
この時点で、私の中でかなり重要な整理ができました。
生徒が行動するためには、ただ教材があるだけでは足りない。
ただ役に立つだけでも足りない。
「使う理由」と「使い始める簡単さ」の両方が必要でした。
英単語テストに寄せることで、「使う理由」は作れました。
しかし、それでもアクセスが増えないということは、まだ「使い始める簡単さ」が足りていなかったのだと思います。
前回の記事で、私は「摩擦を減らすことが重要だ」と書きました。
しかし、この時点でまだ摩擦を取り切れていませんでした。
LINEで通知する。
教科書準拠の教材を用意する。
それでも、生徒自身にログインして教材を選んでもらう必要がある。
ここに、まだ大きな壁が残っていました。
そこで次に考えたのは、「ログインしてもらう」のではなく、「ログイン済みの状態で教材に連れていく」ことでした。
6. ログインしてください、をやめる
次に取り組んだのが、LINEのリマインダーから直接学習ページへ遷移できる仕組みです。
決まった曜日・決まった時間にLINEで通知を送る。
その通知の中に、生徒ごとの専用リンクを含める。
リンクを押すと、そのまま対象の学習ページに入れる。
いわゆるマジックリンクに近い仕組みです。
これにより、生徒はログイン画面を経由せず、教材選択で迷うこともなく、その日の学習に入れるようになります。
重要なのは、これは単なる便利機能ではないということです。
目的は、認証体験を少しおしゃれにすることではありません。
生徒が学習を始めるまでの摩擦を、できるだけ小さくすることです。
教材を作るだけでは足りませんでした。
LINEで通知するだけでも足りませんでした。
学校の英単語テストに寄せて、使う理由を作っても、まだ足りませんでした。
生徒が実際に動くためには、利益を感じられることと、すぐに始められることの両方が必要でした。
次回は、この「ログインしてください」をやめるために実装した、マジックリンクの設計について書きます。