コールサイン「単独行動」が、単独じゃなくなるまで ── 6,000時間の孤独をMODにした話
Arma 3を6,000時間プレイしました。作ったミッションの名前は「LONE_ACTUAL」──「単独行動中」を意味するコールサインです。ダメと言われたAIを工夫で使いこなすのがあの時代の楽しみで、気づけば人生で一番長く遊んだゲームになっていました。
後継のArma Reforgerに移って、最初にぶつかったのが「孤独」でした。勧誘できるAIは4人だけ。死んだらそれっきり。広大な戦場にぽつんと一人。「初心者がこれで楽しいわけがない」──自分が6,000時間かけて身につけた「AIと付き合う技術」を、MOD一本に込めて次のプレイヤーに渡そうと決めました。
作ったのは、デプロイした瞬間に9人の分隊が集結するMODです。機関銃手が火線を張り、衛生兵が倒れた仲間に走り、給弾兵が皆の弾倉を満たす。戦死者には同じ兵科の補充兵が来る。そして一度セーブした装備は「正式装備」になり、リスポーンでも新規キャンペーンでも自動で身についてくる──装備そのものが従軍記録として育っていきます。名前は LONE ACTUAL: No Longer Alone ──あの孤独なコールサインが、もう単独じゃない。
正直に書くと、一度は完全に頓挫しかけました。開発ツールは初見殺し、プロジェクトは間違った場所に生成され、テスト環境はクラッシュ。「もういいわ、そこまでこのゲーム好きじゃないし」と口に出して、実際に店じまいした夜があります。翌朝それでも再開できたのは、「ツールと戦う」のをやめて「ダブルクリックで起動→ログを読んで直す」という自分に合う開発ループに作り替えたから。挫折の原因は情熱の不足ではなく、工程が自分に合っていないだけ──そう分かってからは、一晩で分隊が動くところまで進みました。
一番苦労したのは「なぜ勧誘した兵士だけが命令を聞くのか」の解明でした。ゲームの内部では、分隊が「プレイヤーの部屋」と「AI専用の部屋」の二層になっていて、正規の入隊手続きを踏まないと指揮システムに認識されない。公開APIだけでは埒が明かず、最後はゲーム本体のスクリプト5,778ファイルをPAC1コンテナから自作ツールで抽出して精読し、vanillaの勧誘関数をそのまま呼ぶことで解決しました。「本体と同じ作法で書けば、本体のUIがそのまま働く」──リバースエンジニアリングというより、原典への敬意です。
もう一つ、このプロジェクトで学んだのは「引き算の勇気」でした。開発中は分隊専用のトラックやヘリまで支給していたのですが、実プレイのデータを取ると、トラブルの大半が車両起因──スポーン事故、乗車拒否、破壊時のクラッシュ。思い切って車両支給を丸ごと廃止し、「分隊は徒歩で戦う。車両は戦場で現地調達」というドクトリンに切り替えたところ、MODは一気に安定し、体験の芯も太くなりました。機能を足すことより、正しく引くこと。
忘れられない瞬間があります。リリース当日のテストプレイで、敵の飛行場基地を攻めました。司令部のテントに踏み込むと、画面には「SEIZE AIRPORT BASE — completed」。振り返ると、テントの中と入口に、部下8人全員の名前が並んでいました。一人も欠けていない。素のReforgerでは単独で拠点を落とすことなど自殺行為です。それが、できた。「これはもう完成している」と思いました。
このMODは『バンド・オブ・ブラザース』が描いた兵士たちの絆へのリスペクトを込めて作っています。献辞はこうです。「Arma 3を6,000時間プレイし、問題の多いAIの挙動も知り尽くした人間がReforgerプレイヤーに捧げるコンパニオンMOD。これでもう一人じゃない、一緒に進もう。」そしてページの最後には、第二次世界大戦への追悼と平和への祈りを7つの言語で刻みました。戦場を遊ぶものだからこそ、です。
THINK DESIGN では「自分が欲しかった道具を、ちゃんと作る」を続けています。今回はChrome拡張でもWebサービスでもなく、ゲームMODでした。対象が変わっても、やることは同じ──当たり前を疑って、原因を根っこまで掘って、丁寧に作る。同じ姿勢の方と繋がれたら嬉しいです。
📻 https://mod.thinkdsgn.com/