生成AIを使えば、仕事の効率を上げられる。そんなイメージが広がっています。一方で、「AIを使いこなせるのは、もともと能力の高い人なのでは?」という疑問もあります。では、生成AIは人による能力差を広げるのでしょうか。それとも縮めるのでしょうか。今回は、約1,200人を対象に行われた実験を基にした論文を紹介します。
〇研究概要
2026年に発表されたNBERの研究では、25~45歳の成人約1,200人を対象に、仕事を想定したビジネス上の問題解決課題を実施しました。
参加者は、生成AIを利用できるグループと、利用できないグループに分けられました。
さらに、AIを使った課題の後には、AIを使わずに再び課題に取り組むテストも実施。
AIによってその場の成果が上がっただけなのか、それとも本人の能力向上につながったのかについても調べました。
〇主な結果
特に興味深かったのは、教育水準による能力差がAIによって大きく縮まったことです。AIを使わない場合、高学歴グループは低学歴グループを標準偏差0.548の差で上回りました。しかし、AIを利用できるようにすると、その差は0.139まで縮小。研究では、もともと存在していた差の約4分の3が埋まったとしています。
つまり、生成AIは「できる人がさらに強くなるための道具」というだけではなく、これまで苦手だった人の能力を補う役割も果たしていたことになります。
ただし、AIを使わなくなった後も能力差が完全になくなったわけではありません。AIによる効果の一部は残ったものの、教育水準による差は再び広がりました。
〇感想
生成AIが能力差を魔法のように消し去るわけではないものの、実務の成果物における「教育格差を約4分の3埋める架け橋」になることを実証した非常に興味深い研究です。個人的には、優秀な人がAIを使えば作業速度が跳ね上がり、生まれた余白で「同クオリティのマルチタスク」をいくつもこなすため、実用面では別の形で差が開くかなと感じています。とはいえ「単一タスクの成果物の底上げ」という意味で、AIは苦手な人の足枷を外し、実用レベルへ引き上げる強力なイコライザーとして大きな可能性を示しています。
〇参考文献
Guillermo Cruces, Diego Fernández Meijide, Sebastian Galiani, Ramiro H. Gálvez, María Lombardi, “Does Generative AI Narrow Education-Based Productivity Gaps? Evidence from a Randomized Experiment,” NBER Working Paper 34851, 2026.NBER
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