最近、デザイナーの「個性」について考えることが増えました。
AIを使えば、これまで専門的な技術が必要だった画像や映像も、短い時間で形にできます。つくることの入口が広がる一方で、「では、デザイナーは何をする人なのか」「デザイナーの個性は、どこに残るのか」という問いも生まれています。
この記事のカバー画像は、僕がこの6か月でつくってきたPOPを並べたものです。実物は個別のポートフォリオでお見せしているため、ここではぼかしていますが、ぼかしたまま眺めていて、気づいたことがありました。
細部が見えなくても、1枚ずつ、全部違う。
この記事は、直近6か月・185案件のPOP制作に向き合いながら、「個性はどこに残るのか」という問いを僕なりに考えてきた記録です。
■ 大学で学びながら、実務2年目
僕がデザイナーとして実務を始めたのは、大学在学中の2024年7月です。現在も大学に通いながら、フリーランスとして制作を続けています。
もともとは工学・情報系から学び始め、そこからCGや映像、グラフィックデザインへ関心を広げてきました。一直線にデザインだけを学んできたわけではありませんが、情報を整理して考える習慣や、技術を理解しながら制作する姿勢は、今の仕事にそのまま生きています。
実務では、エンターテインメント業界の広告バナー、イベント告知、プロモーション映像、名刺などを制作してきました。表彰式イベントでは、背景映像やのぼりの制作に加えて、当日の進行にも関わりました。
現場で自分の制作物を見て、驚いたことがあります。パソコンの画面では十分に見えていた文字が、距離や照明によって、あっけなく弱くなるのです。どこで見られ、誰に何を伝え、どんな行動につなげるのか。広告は、画面の中できれいに完成させるだけでは機能しない——これは、教室ではなく現場で学んだことでした。
■ 6か月で185案件。毎回、正解は違った
2026年3月からは、複数のコンセプト型店舗やアイドル関連の案件で、POPを中心とした販促制作を継続しています。
この6か月で担当した案件は185件。納品した完成データは220点になりました。
内容は、誕生日イベント、季節企画、キャンペーン、求人、フード、カレンダー、海外店舗向けの告知までさまざま。求められる雰囲気も、かわいい、上品、和風、ダーク、ポップ、ラグジュアリーと、案件ごとに大きく変わります。
同じ「告知POP」でも、最初に見せるべきものは毎回違います。人物なのか、開催日なのか、価格なのか、特典なのか。制作前に情報の優先順位を整理し、それぞれの世界観に合わせて、配色、文字、写真、装飾の強さを組み替えていきました。
つくった数だけ、目的に合う見せ方を考えました。つくった数だけ、異なる世界観と向き合いました。そして、つくった数だけ、自分の中に「伝え方」の選択肢が増えていきました。
■ 個性は「見た目」ではなく、「選び方」に宿る
カバー画像がバラバラなのは、そういう理由です。一目で「同じ人がつくった」と分かるような、固定された作風は、あの一覧のどこにもありません。「作風がない」と言われれば、そうかもしれません。
しかし、仕事としてデザインする以上、自分の作風をすべての案件に当てはめることが正解だとは考えていません。まず大切なのは、依頼する方が何を実現したいのか、誰に何を届けたいのかを理解すること。異なる世界観を受け止め、相談や修正を重ねながら、その案件に合う形を一緒に探していくことです。
それでも、185案件を振り返ると、見た目は毎回違うのに、どの1枚でも繰り返してきた「選び方」があることに気づきました。
最初に見せるものを、1つに決めること。どれだけ華やかでも、日付が数秒で見つかるかを確かめること。「何を足すか」と同じくらい、「何を目立たせ、何を引くか」を考えること。世界観を壊さずに、必要な情報へ視線を運ぶこと。修正の意図をその場限りにせず、次の制作に生かすこと。
見た目はバラバラでも、選び方は一貫している。だから今の僕は、個性とは作風のような「見た目」ではなく、この「選び方」——判断の癖のようなもの——に宿ると考えています。それは自分を見せるためのものではなく、相手の目的に応える選択を重ねた先に、結果としてにじむものです。
■ AIは選択肢を増やす。デザイナーは選び、決める
AIは、制作の速度を上げ、短時間でたくさんの案を見せてくれます。僕自身も、アイデアの整理や検証、実装の補助にAIを活用しています。
ただ、100案あっても、店頭に貼れるのは1枚です。
誰に向けたものなのか。何を最初に見せるのか。どの案を選び、どこを直し、何を残すのか。そして、その判断は依頼する方の目的に合っているのか。
AIが選択肢を「増やす」ほど、デザイナーの仕事は、相手の話を聞き、現場の条件を理解し、目的に合う1つへ「減らして、決める」ことに寄っていきます。つくる技術だけでなく、問いを立て、選び、その選択に責任を持つ力が、これまで以上に求められるのだと思います。
AIによって個性がなくなるのではなく、「相手のために何を選ぶ人なのか」が、むしろはっきり表れるようになる。185案件を積み重ねてきた今は、そう考えています。
■ つくった数だけ、伝え方が増えた
冒頭の問いに戻ります。デザイナーの個性は、どこに残るのか。
カバー画像に、僕の作風は写っていません。写っているのは、依頼のたびに相手の目的を考え、伝え方を選び直してきた、185回ぶんの判断です。個性は最初から完成しているものではなく、その積み重ねから少しずつ生まれてくるものでした。
まだ大学生で、学ぶことばかりの毎日です。それでも、この6か月で確かに増えた「伝え方の選択肢」を手に、これからもAIを含む新しい技術を柔軟に取り入れながら、依頼する方との対話と、見る人への伝わり方を大切にしていきたいと思います。
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