枡井竜馬です。
はじめに
最近、海外のテックコミュニティやSNSを中心に「SaaS is dead(SaaSは終わった)」という言葉を目にすることが増えました。「生成AIの進化によって自社専用ツールを誰もが簡単に構築できるようになり、既成のSaaSは不要になる」「価格の高騰やベンダーロックインへの懸念からSaaS離れが進む」といった論調がその背景にあります。
しかし、日々現場でSaaSプロダクトの設計・開発に向き合っているエンジニアの立場から言わせていただくと、「SaaS is dead」という主張には違和感があります。SaaSは死んだのではなく、次のフェーズへ進化(再定義)している最中なのだと感じています。
なぜ「SaaS is dead」と言われるのか?
まず、なぜそのような論調が生まれたのかを整理してみます。
- AIによる「自作」のハードル低下 ClaudeやChatGPTをはじめとするAIツールの進化により、プログラミング知識が浅い人でも簡単な管理ツールや自動化スクリプトを短時間で作れるようになりました。「既存のSaaSに月額料金を払うくらいなら、自社専用のツールをAIで作ればいい」という発想が生まれるのは自然な流れです。
- SaaS疲弊(SaaS Fatigue) 企業が導入するSaaSの数が増え過ぎた結果、アカウント管理やコストの肥大化、ツール間のデータ分断といった課題が顕在化しました。
こうした背景から「従来の機能切り売り型SaaS」の価値が相対的に下がっているのは事実です。
それでもSaaSが無くならない3つの理由
しかし、ツールを単に「コードを書いて動かす」ことと、「ビジネスの基盤として運用し続ける」ことの間には巨大な壁が存在します。SaaSの本質的な価値は、単なる「機能の提供」だけではありません。
1. 運用・保守・セキュリティという見えない非機能要件
ツールを自作・内製化した場合、初期開発はAIで高速化できても、その後の運用保守は自社で行う必要があります。
- 24時間365日の稼働保証と監視
- セキュリティパッチの適用や脆弱性対応
- 法改正(インボイス制度や個人情報保護法など)への追従
- データベースのスケーラビリティ確保やバックアップ
これら「非機能要件」を維持し続けるコストとリスクは非常に膨大です。SaaSに支払う費用は、単にアプリを使う権利だけでなく、「運用の手間とリスクを外部の専門家にアウトソーシングしている対価」と言えます。
2. 「ドメイン知識」と「ベストプラクティス」の集約
優れたSaaSには、その業界や業務領域における膨大なノウハウ(ドメイン知識)と、洗練されたワークフローが凝縮されています。ゼロからツールを作ると、自社の現状の業務プロセスをそのままデジタル化するにとどまりがちですが、既存の優れたSaaSを導入することは「業界のベストプラクティスを取り入れる」ことと同義です。
3. AIをネイティブに組み込んだ「AI-Native SaaS」への進化
SaaSはAIに淘汰される側ではなく、むしろ「AIを最も効果的に活用できるプラットフォーム」へ変化しています。
蓄積された固有の顧客データ(マルチテナント環境で安全に管理されたデータ)と、AIモデルを組み合わせることで、従来のSaaSでは実現できなかった高度な予測や業務の自動化が可能になります。AIを組み込んで進化するSaaS(Vertical AI SaaSなど)は、今後さらに不可欠な存在になっていくはずです。
これからのSaaSとエンジニアの役割
これからの時代、「単にデータを保存してCRUD(作成・読み出し・更新・削除)ができるだけのシンプルなSaaS」は、AIによる内製化や無料ツールに置き換えられていくかもしれません。
しかし、以下のような価値を提供するSaaSは、今後も強い存在感を示し続けると考えます。
- データのハブとなり、高度な連携やワークフローを提供するもの
- 複雑なドメインロジックや法規制に完璧に対応しているもの
- AIを活用してユーザーの作業自体を劇的に削減(自動化)するもの
開発者である私たちエンジニアにとっても、「単に機能を実装する」だけではなく、「いかに顧客の運用負荷を減らし、AIを活用して本質的なビジネス価値を提供できるか」という視点がこれまで以上に求められています。
おわりに
「SaaS is dead」というフレーズはショッキングですが、それは「変化しない旧態依然としたSaaSの終わり」を意味しているに過ぎません。
変化の激しい時代だからこそ、より便利で、よりスマートにビジネスを支えるSaaSプロダクトをこれからも構築していきたいと考えています。
https://www.print-gakufu.com/search/result/score___keyword__%E6%9E%A1%E4%BA%95%E7%AB%9C%E9%A6%AC/
https://www.imkk.jp/?s=%E6%9E%A1%E4%BA%95%E7%AB%9C%E9%A6%AC
https://medicalnote.jp/diseases/search?value=%E6%9E%A1%E4%BA%95%E7%AB%9C%E9%A6%AC
https://www.hikaritv.net/search/all/%E6%9E%A1%E4%BA%95%E7%AB%9C%E9%A6%AC