書籍【異能の掛け算~新規事業のサイエンス】読了
自分の会社員人生を思い返してみると、何か新しいことをやろうと足掻いていたことを思い出す。
前任者がやっていたことをそのまま引き継ぐのが、どうにも苦手らしい。
単なる我儘でしかないのだが、特にルーティーンワークとなると、途端に興味が薄れ、集中力の欠如からミスを連発してしまう。
根っから苦手意識を持っているから、「新しい仕事」を探しては、そこに逃げていたとも言える。
今改めて考えてみると、自分の小狡さに辟易としてしまう。
一方で、自分自身の性格を理解しているからこそ、「それもしょうがないか」なんて諦めの境地に至ったりもしている。
そんな事情で、「新規事業」と見ると俄然興味が湧いてしまうし、実際に携わった新しい仕事は、保守的な企業の会社員としては多い方だと思う。
クビにもならず、自ら去ることもせず、よくも続けているものだと思う。
大袈裟に語ってしまっているが、「新規事業」というほど大きな案件は、実は数える程度。
所詮サラリーマンなので、ほとんどの「新しい仕事」は、日々の小さな改善程度のことだ。
その部門で新しい仕事が見つかれば、何となく自分が積極的に関与していたという感じ。
「会社を辞めて、自分で事業を立ち上げる」となっていれば格好もいいのだが、所詮そんな根性もなく、失敗しても自分は損をしないという関わり方とだけ補足しておきたい。
そんな小さな経験でしかないが、本書の内容を反芻してみると、色々と納得できる部分も多い。
まずは、新しい事業を始めるのであれば、とにかく人選が大事。これは間違いない。
私が新事業に向いているかどうかは別としても、「やりたい」というモチベーションがなければ、そもそも上手くいくはずがない。
その上で、ビジネス(Biz)、技術(Tech)、クリエイティブ(Creative)と、役割を担える人材が揃っているのは、確かに理想かもしれない。
これは既存事業の話になるが、今私が勤務している会社が苦労している点は、ビジネス人材がテクノロジーを苦手とし、テック人材はビジネスの理解がない所だ。
この話は、新規ビジネスに限らないことだと思っている。
その間を取り持つのが、クリエイティブ人材なのかもしれないが、ここも「芸術家」的な人が入ってきてしまうと、更に複雑化して収拾がつかなくなる。
本書では「Creative」と表現しているが、実際には「コミュニケーション(Communication)」人材のことだろうと思う。
何だかよく仕組みを分かっていなくても、人から好かれて、不思議な魅力で間を取り持つ人は、少なからず存在する。
ビジネス人材とテック人材の間にも入るし、そのチームと外部のパートナー人材とを繋いだりもする。
当然、新規ビジネスを展開するにあたり、顧客との接点を構築するのも、コミュニケーション人材だ。
確かにこんな能力が揃ったチームであれば、面白くなりそうな気がする。
この感想文を書きながら、過去の新規事業を思い出しているのだが、確かに変なメンバー構成の方が、何となく面白い展開になって、成功していたような気がする。
そこに法則があったのかは謎であるが、とにかくよく話し合いをしていたことを思い出す。
今風に言えば、心理的安全性の高い組織ということになるが、「飲みにケーション」も含めて、よく議論していたのは間違いない。
逆に上手くいかなかった私が経験した過去のチームは、総じて議論が圧倒的に足りていない。
議論の総量が仕事を成功させる大きな要因であることは、実体験として確信している。
当時を思い出すと、よくホワイトボードもスマホもない状況で議論していたものである。
議論のためのノウハウもツール類も、大きく進化したということか。
闊達な議論を進めるための環境をどうやって整えるのかは、本当は大事なことだと思っている。
意外と軽視されがちであるが、異能のメンバー達がストレスなく仕事をするためには、環境を整えることが重要なのだ。
部屋の広さも大事だし、何ならイスの座りやすさ、テーブルの大きさも影響がある。
たまにはちょっとした飲食の機会があってもよいだろう。
最近は人間関係の構築のことを、チームビルディングと言ったりするが、要は今も昔も、人同士のコミュニケーションが大事だということだ。
社内では1on1を推奨したり、議論の質を向上するためのファシリテーション研修なども実施している。
小手先のことだけで成果を求めるのは難しいのかもしれないが、やらないよりは絶対にいい。
議論の質を高めて、チームの質を上げる。
ひとまずこのステップを踏んだ上で、次は実践のフェーズである。
結局は、いくら議論を繰り返しても実践しなければ意味がない訳で、いかに筋の良い行動をするかが大事な点となる。
このプロセスにも、異能同士が協力し合う必要がある。
本書で再三説いている、「0→1」「1→10」「10→100」と、各フェーズでの仕事の方法が全く異なるというのも非常に納得。
不確実性を下げるのか、確実性を上げるのか。
それに合わせて、異能たちをどうやって組み合わせていくのか。
今私は完全に人事の仕事になっているために、社員の適材適所について常日頃考える立場になった。
人間というのは不思議なもので、あるチームでは活躍できなかった人が、異動によって急に輝き出す人がいる。
もちろん、逆に異動によって輝きを失い、ミスマッチになってしまうケースもある。
それが、仕事内容が本人の適性に合ったのか、チームメンバーとの愛称が良かったのか、その兼ね合いが非常に難しい。
確かに、「0→1」が苦手でも、「10→100」が得意な人はいる。
一方で、安定企業というのは、「100→105」という、ほぼ横ばいを求められて、逆に数字を落とさないでキープすることを至上命題とされる。
これはこれで、会社経営の上では非常に重要なことで、それに長けた真面目で実直な、コツコツ型の人もいたりする。
色々な人がいて会社という組織が機能する訳であるが、それだけに「異能」を見つけ出して、さらに「掛け算」によって能力を拡張していくというのは、ことさら難しくもあり、挑戦的な取り組みである。
個人的には、今所属している会社で、より大きなイノベーションを起こしてみたいと、野心を持っている。
規模で言えば、今よりも2倍3倍になれるように。
そんな妄想を抱きながら、異能の掛け算になる人材の組合せを、日々考えている所である。
(2025/10/10金)