NVIDIA は7月22日、医療ロボットを訓練するための物理シミュレーションの仕組みを、オープンソースで公開しました(Isaac for Healthcare)。実機で試す前に、コンピュータの中で臓器と器具のやり取りを再現して学ばせるものです。同社の計測では、8,192個の訓練環境を並列で回し、訓練にかかる時間を5時間超から2分未満に縮めたとしています。使い手にジョンソン・エンド・ジョンソンやメドトロニックなどが挙がっています。
同じ週、Google(DeepMind)は7月23日、米政府の「Genesis Mission」——AIで米国の科学の進歩を10年で倍速にする国家プロジェクト、主管はエネルギー省(DOE)——に、4,000万ドル分のAI利用枠とクラウド利用枠を提供すると発表しました。DOEの全17国立研究所に、AlphaFold 3 や AlphaGenome といった「科学のためのAI」と、行政向けGeminiを配る、という中身です。対象は核融合プラズマの模擬、材料探索、タンパク質構造、ゲノム、気象など。
そして NVIDIA と Hugging Face は7月21日、「物理AIのためのシミュレーションの現状」という解説を出し、こう書いています。ロボットのようなAIは、インターネットの文章からは学べない——現実に触れた結果を学ぶ必要があり、そのデータを実世界で集めるのは高くつく。だから、物理的に正しい世界をシミュレーションで作って学ばせることが、いま中核の土台になっている、と。使われる基盤の一つ Newton は、NVIDIA・Google DeepMind・Disney が共同で作っています。
三者を並べると、同じ向きが見えます。言葉のAI(大規模言語モデル)の学習データが「インターネットのテキスト」だったのに対し、次に来る物理や科学のAIの学習データは、「シミュレーションで作った現実」に寄りつつある、ということです。医療ロボの訓練時間が桁で縮み、国家の科学基盤にAIの科学ツールが差し込まれ、その土台となるシミュレーション基盤は競合どうしが共同で作る。データの出どころが、拾ってくるものから、作り出すものへ移ろうとしています。この3本だけで業界全体を語ることはできませんが、少なくとも三者が、同じ週に、同じ方を向いていました。
参照した記事:
・Google Cloud「Genesis Mission への4,000万ドルの拠出」(金額・DOE・提供ツールはGoogle公表値)
https://cloud.google.com/blog/topics/public-sector/accelerating-frontiers-of-scientific-discovery-40-million-dollar-commitment-genesis-mission
・NVIDIA Blog「医療物理シミュレーションのオープンソース公開」(並列数・訓練時間はNVIDIA自社計測)
https://blogs.nvidia.com/blog/medical-physics-simulation-open-source/
・Hugging Face / NVIDIA「The State of Simulation for Physical AI」
https://huggingface.co/blog/nvidia/state-of-simulation-for-physical-ai
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